作品タイトル不明
第536話 守り石
精霊たちの言葉通りに、ガズゥ、テオ、マルの三人がレインコートを着てやってきた。
テオとマルには大きめだったものが今ではピッタリのサイズ。
一方のガズゥは、もう小さくなってしまっているようで、前のボタンがとめられないのか、開いたまま。まったくレインコートの役目を果たせていない。
足元は案の定、泥だらけ。こんな天気だからか素足の上に、思いっきり走ってきたのか、ズボンの裾にも泥が跳ねている。
――雨具一式、買ってきたほうがいいかもしれないわね。
どうせなら色んなサイズや色のを買いこんで、村人と物々交換なり、こちらのお金で買ってもらうなりするのもいいかもしれない。
そんなことを考えながら、レインコートを脱がせて濡れているガズゥたちを大きなタオルで拭いていると。
「サツキ様、これ、これに加護をお願いします!」
ガズゥが必死な顔で私に差し出した物は、ブレスレット、だろうか。
太めの白い糸(たぶん、ホワイトウルフの毛糸)で編みこんでいて大きな水晶が中央に配置されている。あまり出来はよくないけれど、もしかして。
「ガズゥが作ったの?」
「うんっ!」
「お、おれもっ」
「もっ!」
元気に返事をするガズゥ。それに、なんとテオとマルも似たようなブレスレットを見せてくれた。それぞれに頑張って作ったのがうかがえる。
「おねがい」
「いもうとにやるんだ!」
マルはすでに生まれてくる子が妹だと思っているらしい。
ガズゥに聞くと、この水晶だと思っていた物がクリスタルリザードの魔石なのだそうだ。ネドリたち父親たちが、獲ってきた魔石を小さく削って首から下げられるように作っていたらしい。それを見て、自分たちも何か作りたいと行って、ブレスレットの作り方をハノエさんたちママ軍団に教えてもらったのだとか。
その心意気はよいと思うのだが。
――加護って言われてもなぁ。
私個人にそんな『加護』なんて与えられるとは思えないんだけれど。そもそも、どうやったらいいものなのかすら分からない。
とりあえず、ずぶ濡れ状態の彼らを乾かすのが先だ。
足元もきれいにしてからログハウスにあげて、暖炉のところで待つようにいうと、大人しく温まりにいくガズゥたち。
温めてあったホットミルク(ハチミツ入り)の入ったマグカップをトレーにのせて持っていくと、三人は嬉しそうに受け取った。
加護、加護、加護……と悩んでいると。
『さつき』
マリンが『魔王の卵』を抱えたまま、顔をあげて声をかけてきた。
「なに?」
『その石、もっとあるのかしら』
「え、どうだろう。ネドリに聞かないとわかんないわ」
『もし、あったら、この子にも何か作ってあげてほしいの』
ペロリと『魔王の卵』を舐めるマリン。
「な、なるほど?」
『それと加護だけど、さつきだったら魔石に指をあてて願いを言葉にしてみて』
「は?」
『それだけで十分なはずよ』
そんな簡単なことで? と思いつつ、どうせやり方がわからないんだから、言われたとおりにしても、困りはしないか。
ふとガズゥたち三人の視線を感じて目を向けると、キラキラと期待した目で私を見ている。
――この子たち、マリンの言葉はわからないはずなんだけど。
私はにっこりと笑みを浮かべると、まずはガズゥが作ったというブレスレットを手に取る。
「……『無病息災』」
思いつく言葉はこれしかなかった。
神社のお札かよ、と内心、一人突っ込みをしたんだけれど。
「うわっ!?」
いきなり魔石がピカ―ッと真っ白に光った。