作品タイトル不明
第531話 『召喚』の魔法陣
モリーナはニコニコと『魔王の卵』なるものを抱えている。なんでそんな物騒なものを嬉々として抱えているのか、理解できない。
そもそも、この世界に『魔王』なんているのか、と皆に聞いてみるが、ネドリは昔話として聞かされたことがある程度で、ドワーフのドレイクや他の獣人たちに至っては、そもそも『マオウ』とはなんぞや、という状況。
一応エルフの端くれのモリーナもネドリ同様に、昔話で知っていたそうだ。
そして、この場で一番知っていそうなエイデンに目を向けると左右に首を振った。
「この世界には『魔王』は存在しない。仮に『魔王』相当の存在とするなら、俺くらいしかいないだろう」
……さすがエイデン。さらりと言ってしまう。
確かに、古龍の姿は『魔王』っぽいかもしれない。
「おそらく、あの研究施設にあった魔法陣によって、別の世界から『召喚』されたモノだろう」
別の世界と言われると、魔法のない私の世界を思い浮かべたけど、そんな『魔王』なんていない。また違うところから、ということなんだろうけど、たかが人間がそんな大それたことをして大丈夫だったのだろうか。
いや、大丈夫じゃないから、あんな風に『瘴気』が溢れたのか。
「まぁ、『召喚』されたモノがなんであれ、ここにあるのだから『召喚』自体は成功したのだろう。肝心の召喚した者たちは誰も生きてはいなかったがな」
『瘴気』の原因は、この『魔王の卵』だったらしい。
魔法陣の骨の山の中に埋もれていたのをエイデンが見つけたらしい。見つけた当初は、まだ卵自体から『瘴気』が溢れていたそうだ。
たくさんの骨は、『召喚』のために多くの『瘴気』を集めるために、生贄となった魔物や奴隷(たぶん、高魔力を持った者たち)たちだろう、というのがエイデンの予想。
――魔物だけじゃなくて人もっ、て……結局、自分たちも取り込まれてるんじゃ、自業自得だわ。
「結局、生贄だけではく、『召喚』しようとした者たちも、『瘴気』に取り込まれて、より高濃度の『瘴気』に変わったんだと思うぞ」
エイデンでなくても、渋い顔にもなる。
しかし、桜とユグドラシルが成長したおかげで浄化のスピードがあがったのと、モリーナの魔道具で『瘴気』を魔石化しまくった結果、『魔王の卵』からの『瘴気』が出なくなったらしい。
「たくさん出来ちゃいましたよ、ほら、ドレイクさん、出して、出して」
悲壮な話をしているというのに、ホクホク顔のモリーナ。
彼女の横に立っていた死んだ目のドレイクは、大きくため息をつくと腰に下げていたウェストポーチ(から、魔石で膨らんだ大きな革袋(スーパーのビニール袋の大くらい)を2つほど取り出した。よっぽど重いのか、ズドンと地面に置いている。
開けてみると中に入っていたのは掌サイズの虹色に光る黒い魔石。
「随分と綺麗な魔石だね」
「……『魔王の卵』だけに、他の『瘴気』とは質が違うようだ」
他の魔石はただ真っ黒なのに、この魔石は見るからに輝きが違う。
「でも、そもそもなんでこれが『魔王の卵』ってわかったのよ」
「ああ、それなんだが」
『私が教えたのだ』
「へ!?」
いきなり聞こえたのは、お久しぶりのイグノス様の甲高い声だった。