作品タイトル不明
第527話 待ち時間にすることは
エイデンたちが『瘴気』の中央に向かっていって1時間ほど経った。
その間、私たちが何をしていたかというと、夕食の準備だ。
「いやぁ、いいニオイですねぇ」
「やっぱり、キャンプで食べるカレーは格別だからね」
魔道コンロの上の鍋で、ぐつぐつと煮込まれるカレーのニオイをクンクンと嗅いでいるドレイク。村でも皆で集まって食事をする時などに差し入れたりしているので、ドレイクにも馴染みになっている。
「サツキ様のカレーを頂けるなんて、頑張ってここまで来た甲斐がありました」
神に祈るように両手を組んで私を見つめるドレイクの目がキラキラと光っている。
――そこまでのモノではないと思うんだけど。
あはは、と空笑いする私。
実際、材料となるものは、ワイルドコッコのお肉で、いわゆるチキンカレーだ。
一人だったら、レトルトのカレーで済ませてしまうのだが、モリーナたちもいるのを考えて、大きめの鍋で久しぶりにカレーを作っている。
――『収納』に材料が入っててよかった。
貯蔵庫に入りきらなかった野菜や、エイデンたちの貢物の肉、ストックしてた大量のカレールーなど、いつの間にか『収納』の中は凄いことになっていたりする。
自分一人では消費が追いつかないから、こういう時に使わないと、増える一方なのだ。
――土鍋で炊いた米もできあがってるし。
自分も久しぶりの炊き立てのご飯に、わくわくしている。
あとはエイデンたちが帰ってくるのを待つだけだ。
『瘴気』は目で確認できるくらい徐々に減っていっている。それでも、奥の方はまだ濃く、中の様子は窺えない。
さすがに先に食べる気にはならなかったので、出来上がったカレーと土鍋は再び『収納』へ。
仕方がないので木製の折り畳み椅子と折り畳みのテーブルを取り出して、ドレイクと一緒に温かいお茶を飲みながら待つことにした。ちなみに、折り畳み椅子もテーブルもドワーフ製だ。
待つ間の会話は主にドワーフたちの話だ。私自身はあまり交流はないので興味津々。
最近は、見習いのベルントと、同じ見習いのアルバンの妹が恋仲になったというのが、一番の話題らしい。
「……帰ってこないわね」
「……遅いですね」
私が1杯目のお茶を飲み干した頃、突然、ドンッと地面が揺れるような凄い音が響いた。
「な、何事!?」
音がしたほう、たぶん『瘴気』の中央に目を向ける。
遠くでもわもわと靄が大きく膨らんでいるのが見えたので、思わず立ち上がる。
「……だ、大丈夫かしら」
「エ、エイデン様ですから、きっと大丈夫ですっ」
「そ、そうかな」
『だいじょうぶよ』
私たちの会話に、土の精霊が割り込んできた。
『ほら、みてみて』
精霊の言葉に『瘴気』を見ると、凄い勢いで減っていっていく。まるで大型の掃除機で吸い上げられてるみたいだ。
「すごっ」
『エイデンもエルフも、こっちに戻ってきてるわ』
「え、本当?」
『ほら、よくみて』
「……あ、本当だ」
靄の中から出てきたエイデンとモリーナの姿が見えた。
私に気付いたエイデン。モリーナを置いて走り出した、と思ったら。
「戻ったぞ!」
「お、おお。お帰り」
超ご機嫌なエイデンが私の目の前に立っていた。