作品タイトル不明
第521話 石を採りに行こう
今日はのんびりハクの上に乗りながら、敷石にできそうな石がないかと、うちの山の中を動き回っている。まだ雪が残っているところがあるけれど、ハクに任せているので滑ることはないようだ。
『大きな石だろう?』
「そう。岩でもいいんだけど」
『岩と石、何が違うんだ?』
「あ、えーと、大きさ、かな?」
ここ何日か、ホワイトウルフや精霊たちが手伝ってくれたおかげで、ログハウスのある山で地面に転がっていた目ぼしい大きな岩はいくつか『収納』した。
でも、たぶん、これじゃ全然足りない。
『ねーねー、あのやまのうえのは?』
ウノハナが尻尾を振りながら追いかけてきた。今回は三つ子たちだけでなく、他のホワイトウルフたちもついてきている。
今いるのは私の持ち山。エイデンの城がある山の北側にある山だ。
ウノハナが言っている山というのは東側の山で、私の持ち山ではない。木々の隙間から見える山頂付近には岩肌が現れている。確かにあそこなら、たくさん取れそうではある。
しかし、見るからに剥き出しで風も強そう。雪だって残っているように見える。
「いや、ちょっとあれは……」
『任せろっ!』
「うわっ!」
私がやめようと声を上げる前に、ハクが張り切って走り出した。
「ひゃぁぁぁ!?」
ビャクヤやシロタエは、私の乗り心地を気にしてくれて、あまり上下運動はないんだけど、ハクは走るのが楽しそうというか。
「ちょ、ちょっと、止めてぇぇぇぇ」
私の叫び声は届くことなく、隣の山の山頂近くの岩肌剥き出しの場所についていた。
あっという間ではあったものの、太ももはガチガチだし、手袋の中の指先の感覚はなんとかある。しかし、顔は寒さでピリピリしてるし、鼻水も垂れてる。
ビャクヤやシロタエだったら風の魔法で守ってくれただろうに、ハクにはそこまで考える頭はなかったらしい。
――私は頑丈な獣人たちとは違うんですけどっ!
「あー、もう、最悪だ(ズビッ)」
私は凍えた指で斜め掛けのバッグからポケットティッシュを取り出して鼻をかんだ。
『五月、大丈夫か?』
「だ、だいじょうぶじゃないよぉぉ」
『ハクにいちゃん、はりきりすぎだよ』
『さつき、だいじょうぶ?』
『……にいちゃん』
三つ子に呆れられてるけど、ハクは頭を傾げている。
「はぁ、とりあえず、ここね」
なんとかハクから降りて、周囲を見ようとすると、
「うわっ」
いきなり吹いてきた強い風に身体が煽られ、ハクの身体にしがみつく。
――ちょ、ちょっと、ここはヤバいんじゃ。
ハクの身体が大きいせいで、私が立っている場所はあまり余裕はない。そして上を見上げると、完全な絶壁。見上げても岩の天辺が見えない。
ちなみに、今立っているここは山頂ではないらしい。
「……さすがに、この岩はデカすぎだわ」
たぶん、この大きさであっても、今の『収納』ならできるだろう。でも、下手にこの岩を『収納』したら、土砂崩れでもおきそうだ。
――『収納』は無理かもしれないけど、『ヒロゲルクン』の『穴掘り』はどうだろう。
以前、ビャクヤたちの巣を拡張するときに使ったアレだ。あの時は、とんでもない石でも『穴掘り』できたんだし、この山の岩あたりだったら問題なくできるんじゃないだろうか。
私は斜め掛けバッグからタブレットを取り出すと、さっそく『ヒロゲルクン』を開いて『穴掘り』を選んで実行した。サイズはとりあえず5m✕5m✕5m。
「おお~」
さっくり真四角の穴が出来上がったので、せっかくなので階段のように段差をつけながら『穴掘り』を進めた。穴ができるたびに、皆が大人しくついてくる図が面白い。
『さつき、さつき』
『たいへん、たいへん~』
「うん?」
気持ちよく10回目の『穴掘り』を終えたところで、なぜか風の精霊たちが団体さんでやってきた。