作品タイトル不明
第517話 敷地を整理する(2)
翌朝、かなり冷え込みが厳しくて外に出るのが辛かった。
「久々の青空~」
思わず声に出すくらいに青い空を見たら、昨日の続きをやらねば、と気合が入る。
ニット帽を深めにかぶり完全防寒していても、どうしたって、顔の部分は肌が出る。寒さで肌がピリピリする。防水加工してあるトレッキングブーツで霜柱をザクザクと踏みつぶしながら、私はまず桜並木の道の方へと向かう。
『さつき~、きょうはなにをするのだー?』
『するの~?』
昨日、ビャクヤへの連絡をお願いしたせいか、やたらと私の周りを飛び回る精霊たち。今日も、何かやることはないかと待ち構えてるようだ。
「今日は、新しい敷地を作るつもりなんだけど」
桜並木側の門を出て、右手に登る斜面を見上げる。マメに『伐採』してあるので、鬱蒼とはしていないものの、目的の場所はここからは確認できない。
それにしてもここは急な斜面。階段でも作らないと登るのは一苦労しそうだ。階段が出来たとしても、厳しそう。
「やっぱり、ログハウスの裏手から登る方が楽そうではあるわね」
タブレットがあればどこでも作業はできるのはわかっていても、やっぱり、自分の目で確かめたいのだ。
ログハウスの裏手の貯蔵庫の所に行く前に、厩舎を『収納』してしまう。
かなり大きかった厩舎だけに、なくなったらぽっかりと空地が出来た。妙に開けてしまって、少し寂しい感じがするが、離れを作ったらまた変わるだろう。
貯蔵庫の前まで行くと、左手のガーデンフェンスを1枚だけ外して『収納』する。ここから裏手の山へと入っていく。
――枯れ草が酷いわ。
夏場はしっかり草刈りをしているのだけれど、すぐに生えてくるのは、どこでも同じか。それでも桜並木側よりも緩やかな斜面なので、ここを登ることを考えると大分マシだろう。
タブレットで『ヒロゲルクン』を開いて、『伐採』と『草刈り』、『整地』をしていく。『整地』をしても水分を多く含んでいるせいか、ぐにゃりと足跡がついてしまう。天気がいい時だったら気にもしなかっただろう。
――ここにも敷石を並べたほうがいいかもしれない。
少し考えてから、ログハウスの敷地では使わなかったエイデンの石を使うことにする。ここなら人が一人通れるくらいの幅なので、十分足りるはずだ。
「よーし、ぽちっとな」
とととと-んと石が並べられていくのは、見ていて気持ちいい。
私は出来上がっていく敷石の上を、確認するように歩いていく。これくらいの傾斜だったら、気にならない。
「着いた」
フーッと息を吐きながら、背後の斜面を確認する。ブーツについた泥が途中まで敷石に残ってしまったけれど、ここまでくると残っていない。ログハウスは残念ながら木々に阻まれて確認は出来なかった。
「まぁ、いっか。問題はこっち」
目的の場所へと目を向ける。
ログハウスの敷地に比べたら、三分の一くらい。この広さであれば厩舎を引っ越しさせても大丈夫そうだ。
やや傾斜がついているけれど、ここは『ヒロゲルクン』でどうとでもなる。
そしてここでも『ヒロゲルクン』は大活躍。あっという間に敷地が整ったので、『収納』していた厩舎を取り出す。
「う、うん、まぁまぁでしょ」
『まぁまぁだね』
『だね』
土の精霊たちがクルリクルリと厩舎の周りを飛んでいる。キラキラと振りまく光は、鱗粉みたいだ。
斜面ギリギリのところに厩舎の出入り口があるけれど、ビャクヤたちだったら気にしないはずだ(たぶん)。
「さてと、次は離れを作らなきゃね」
私は精霊たちを引きつれて、ログハウスの敷地へと戻るのであった。