作品タイトル不明
第516話 敷地を整理する(1)
綺麗な石畳が出来たことで気分がよくなった私。
「あとは離れを建てたいのよねぇ」
軽トラの運転席でタブレットを取り出し、『ヒロゲルクン』の地図を再び確認する。
――問題は敷地の方なのよね。
今の敷地には畑の他に、いくつかの建物が建っている。
〇私が住むログハウス、
〇軽トラと軽自動車を駐車しておく小屋
〇工具類や薪などを置いてある小屋
〇鶏小屋
〇ビャクヤたちが泊まりにくる厩舎
けっこう敷地はギュウギュウだ。
ここに新たに建物を建てるとなると、今の状態では畑の一部をつぶすしかない。でも、もしそこに離れを建てたら、鶏小屋が日陰になってしまう。
――新たに敷地を作って、建物のどれかを移動させるのが無難だよねぇ。
移動させるのなら、厩舎だろう。
小屋3軒にしろ、鶏小屋にしろ、私が使う物だけど、厩舎はホワイトウルフたちが使う場所。この敷地の中でなくても、問題はないはずだけど、あんまり離れたところだと、ちびっ子3匹が嫌がりそう。
一応、移動させていいか確認するために、厩舎のドアを開けて覗いてみるけど、今日は誰もいないようだ。
冬場は山の頂上の棲み処よりも、ログハウスの厩舎か、ドッグランの厩舎にいることが多いようなので、もしかしたらドッグランにいるかもしれない。
しかし、この雨の中、山裾のドッグランまでの小川沿いの小道を降りるのも危ない。
――あそこも、雨の日の対策が必要よね。
マカレナたちは天気が悪くても桜並木の大きい道よりも、こっちの道をよく使うのを最近知ったので、気にはなっていたのだ。
それよりも今気にするのは離れのほうだ。
「ビャクヤたちはドッグランかな」
『うん? 見てくるか?』
ぽそっと呟いた言葉に、風の精霊が反応する。
「あ、お願いできる?」
『あたりまえじゃーん。ぼくらをなんだとおもってるの?』
『おちゃらけやろー』
『ほうろうせいれー』
『なんだとー』
「ほらほら、煩いよ。見つけたらついでに、伝言もお願いできるかな」
『まかせろ~!』
風の精霊たちに、厩舎の引っ越しをしてもいいか伝えてほしいとお願いをすると、風の精霊だけでなく、水や火、光や土の精霊までわーっと飛び去っていく。
――そんなに大勢で行かなくても。
飛んでいく彼らを見送りつつ、そんなことを考える私。雨だろうが彼らには関係ないらしい。
「さて、移動させるとしたら、ここしかないよねぇ」
タブレットの画面の地図を見ながら、私は目星をつけていた場所を確認する。
そこはログハウスの敷地の少し斜め上、ここほどの広さはないものの、若干の傾斜を調整すれば平らになりそうな場所があるのだ。
ただ、その場所に行く道は当然ない。新たに道を作るなら、桜並木の道からまっすぐ登る脇道(ちょっと急な斜面)を作るか、貯蔵庫の入り口の脇から緩やかに登る道を作るか、どちらかになるだろう。
私が厩舎に行くことなどほとんどないだろうけど、道が繋がっていないのは、なんとなく不安だ。
しかし、雨は相変わらず止まない。これ以上、外で作業するのも辛いので、精霊たちは戻ってこないけど、ログハウスに戻ることにしてと軽トラに乗り込む。
何度も乗るようになったおかげか、バックでの運転も上手くなった気がする。
軽トラを小屋にいれて、ログハウスに入ろうとした時、風の精霊が一番乗りで戻ってきた。その後を次々に他の精霊たちも飛んでくる。
『さつき、さつき!』
「おかえり、ビャクヤはいた?」
『どっぐらんにはいなかった!』
「あら、じゃあ、確認できなかったか」
『ううん、ひっこししていいってさ』
「よかった。ところで、ビャクヤたちはどこにいるの?」
『きたのやまのほう!』
「え?」
『さつきのおやま、きたにもあるでしょ?』
精霊が言っているのは獣王国の近くの山のことだろうか。
そこから、もう戻ってきたのかと思うと、精霊たちのスピード、半端ない。
『あそこ、けっこうゆきがつもってて、そこでちびっこをあそばせてるんだって』
「あ、そう」
『ほら、ちびどもがここであばれてるのをしって、きになったみたいだよー』
……ビャクヤは気を遣えるホワイトウルフだった。