作品タイトル不明
第509話 雨の大晦日の朝
無事に温室が出来た翌日の大晦日は、朝からしとしとと雨が降っていた。そのせいもあってか、窓の外は薄暗い。
今年の冬は暖冬なのか、まだ雪は降っていないけれど、それなりに寒い。
しかし。
「はー、モリーナのストーブのおかげで、温かいわー」
温室のために作ってもらった魔道具のストーブ。私の個人使用分としてもう1台作ってもらった。お値段は、そこそこしたけれど、快適な生活のほうが大事。
その魔道具のストーブはベッドのある部屋に置いてあり、朝起きる頃につくようにタイマーをセットしている。そのせいもあってか、いつもは私のベッドの上で寝ているマリンなのに、朝起きるとストーブの前で丸まって寝ているのだ。その姿は完全に黒猫だ。
私もこれのおかげで、朝起きる辛さが少しだけマシになっているのだから、仕方がない。
パジャマから、いつものネルシャツに大きめのパーカー、ジーンズに着替え、その上にお気に入りの半纏を羽織る。これで少しはマシになる。
着替え終えドアを開けると、ひんやりした空気が入ってくる。
「さ、寒いわね、やっぱり」
急いで1階のリビングへと階段を降りる。
暖炉に薪をくべて火を点ける。火の精霊たちが手伝ってくれるので、すぐに薪に火が点くのはありがたい。
「いつもありがとうね」
『えへへ』
私の言葉に照れる火の精霊たちが可愛い。
「しかし、この天気でケイドンの街に行くのかしら」
今日あたり、エイデンは冒険者ギルドに預けている魔物の清算金を受け取りに行くはずなのだ。
窓の外の雨はしとしとと降っている。土砂降りではないものの、こういう降り方の雨も鬱陶しく感じるものだ。
――古龍の姿になって雲の上を飛んでいけば、雨は関係ないのかも?
ちょっとだけ、その姿を想像してしまった。
たぶん、それだけではなく、結界とかを使って濡れることもないのかもしれない。
「あ、今日も牛乳届いてる」
東屋には大きな牛乳瓶が2本置かれている。こんな天気の日はわざわざ来なくてもいいと言ってあるのに、マカレナたちは律儀に届けてくれるのだ。
――びしょ濡れになってないといいんだけど。
私自身、雨の日はわざわざ村まで行かないし、彼らもここまで来ないので、村人たちが雨具を使っているのを見たことはない。
もしかしたら防水加工した物があったりするのかもしれないけれど、マカレナたちが使っているイメージがわかない。
獣人たちはタフだから、気にしないのかもしれないけれど、マカレナたちや、孤児院の子供たちのような人族の子たちは、心配だ。
――今度、レインコートとか長靴でもプレゼントしようかしら。
あちらに買いに行くとなると春まで待たないといけないけれど、ケイドンの街あたりで雨具とか売っていないのだろうか。それともグルターレ商会が来た時にでも聞いてみるのもいいかもしれない。
そんなことを考えながら、外に出て牛乳瓶を手にして、そそくさとログハウスの中へと戻った。