作品タイトル不明
第503話 ヤル気のドワーフと獣人、そして氷室を作る
エイデンが乱暴に積み上げても割れないギヤンマの羽。強化ガラスみたいだ、と思ってしまった。これ、ちゃんと切れるんだろうか、と心配になってヨハンさんに確認する。
「大丈夫ですよ。任せてください」
なにやら、専用の道具があるそうで、自信満々に答えてくれた。それにお願いしてた分も、もう出来ているらしい。
あとはケイドンの街のガラス工房にお願いしている分だけれど、あちらはまだ出来てないだろう。
「ドワーフたちの羽からの切り出しと、ケイドンのガラス工房と、どっちが早いかな」
「うん?」
私の呟きにエイデンが反応する。
「いや、今年はまだ雪は降っていないけれど、早く出来るにこしたことはないかなって」
「なるほど。そうだなぁ……この土地で作業しているドワーフのほうが早かろう」
「なんで?」
「そりゃあ、精霊たちが手伝うからな」
「あ」
ハッとしてドワーフたちのほうを見ると、いるわ、いるわ、精霊たちが羽の周りを飛び回っている。
――うわ、怖っ。
どういった手伝い方をするのか、凄く不安ではあるものの、専門家であるドワーフたちに任せるしかない。
私は気持ちを切り替えると、獣人たちが群がる魔物の山へと目を向ける。
さすがに、これを全て解体するのは難しかろう。
獣人たちの中心にいて指揮をしていたネドリ。魔物を見る目が凄くキラキラしている。獣人たちもヤル気満々ではあるものの……。
「ネドリ、これ、今日全部は無理でしょ」
「あ、はい。そうですね」
一気にシュンとなる。よっぽど、珍しい魔物なんだろうか?
「よければ、私が一部、預かるよ?」
「ああ、助かります! 俺のマジックバッグに入れておくことも出来るんですが、さすがにこの量は……。本当は、大きな氷室でもあればいいんですが……」
私にはタブレットの『収納』があるし、少量であれば冷蔵庫だってある。
でも多くの獣人たちの家には、ネドリのところには魔道具の冷蔵庫(これだって小型だ)はあるようなのだけれど、一般的には簡単には買わないらしい。
だから、その日のうちに食べるか、保存食にしているようなのだ。
……そもそも、こんな大量に魔物が獲れることはない。
「氷室かぁ」
確かに、ずっと私が預かってるわけにもいかない。
ログハウスの裏手にある貯蔵庫みたいなモノを頭に浮かべる。あそこは一定気温を維持はするものの、ナマモノを長期保存するのには向いていない。
不意に浮かんだアイデア。
「地下に氷室とか?」
「はい?」
「うん、いいんじゃない?」
私はタブレットを取り出し、『タテルクン』のメニューで地下室っぽいモノを探す。
「……あった!」
小さいモノは物置に使うようなプレハブの倉庫くらいから、一番大きなモノで工場にありそうな冷凍庫みたいなモノまで。
材料(主に石)は作る物が大きければ大きいほど必要となる。
「今『収納』にある材料でできそうなのは……これだね」
私が選んだのは、うちのログハウスくらいの大きさ。これだったら、今ある魔物の……それでも三分の一くらいは入れられるはずだ。
場所はバカラモ等が保存されている倉庫の並びがいいだろう。
「では、ポチッとな」
スッと目の前に小さな小屋が現れた。ドアは普通のドアなので、魔物そのものを運び込むのは難しそうだ。これはマジックバッグで運ぶしかないだろう。
小屋のドアを開けると、地下に降りていく階段がある。さすがに灯りはないから真っ暗だ。
「え。どうしよう」
「灯りか? ほれ」
目の前に光の玉が浮かんだ。いつの間にか、私の背後に立っていたエイデン。
「あ、ありがとう」
ゆっくりと階段を降りていくと、ここにもドアがあったので、そのまま開けてみた。光の玉のおかげで、ぼんやりとだけど地下室全体が見える。
――悪くない。
あとは、この部屋を冷やすような氷があればいいはずだ。チラリと隣に立っているエイデンに目を向ける。灯りが出せたなら、氷も出せたり?
「ねぇ、エイデン。ここに大きな氷って出せたりする?」
「氷か? そんなモノが欲しいのか? ホレ」
ドドンっと、目の前に大きな氷の塊が現れた。
「ちょっと大きすぎ! 部屋の半分が埋まってる! ってか、寒っ!」
思わず怒鳴ってしまった私なのであった。