作品タイトル不明
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ケイドンの大商人ガリハゲーノは、最近手に入れた魔石を執務机に並べ、一つ一つ細い指でつまみながらチェックしていく。
――もうすぐマグノリアも、フェリシアも俺のモノだ。
マグノリア一家のことを考え、ニヤニヤと嗤うガリハゲーノ。
美しい母親とともに歩くマグノリアの姿は、当時から美少女として有名だった。
父親にマグノリアが欲しいと強請ったガリハゲーノだったが、厳格で真面目な父親は彼女が辺境伯家に連なる者である上に、面倒な柵があることを知っていたので、猛反対した。
それなら母親に、と話をすれば、マグノリアの母の美しさを妬んでいた母親は、貧乏平民の女など、と言って取り合ってもくれなかった。
自分でなんとかする根性があればよかったのだが、結局、ガリハゲーノが何もできないうちに、両親を流行病で失くした16歳のマグノリアを支えた、少し年上の冒険者の男と結婚してしまった。
しかし、マグノリアの夫はもういない。
冒険者ギルドに出したガリハゲーノの商会の護衛依頼の最中に、魔物に襲われて死んだことになっているが、実際は、同行していた護衛仲間が殺したのだ。
今度こそ、自分の手に落ちてくるかと思い、何くれとなく世話をしようとしたのに、母親になったマグノリアは強かった。
そして、そんな母親を支えるザックスは……冒険者だった父親そっくりだった。
――あの小僧も死んでしまえばよかったのに。
チッと舌打ちをするガリハゲーノ。
ザックスに関してはガリハゲーノが手を出したわけではなかった。しかし、ザックスの怪我がキッカケでガリハゲーノに借金をすることになった。
そろそろ、限界のはずだと思うと、ガリハゲーノは、嬉しくて仕方がない。
――マグノリアを妻にしたら、フェリシアはどこぞの変態親父にでも売り払ってしまえばいい。
たとえ、美しい娘であろうとも、自分の子供でなければ必要ない。それはザックスも同じこと。彼も母親に似て美しい顔立ちをしてはいる。その手の趣味のある貴族になら、売れるかもしれない。
そんな下種なことを考えていたガリハゲーノの部屋に、使用人の一人が駆け込んできた。
「だ、旦那様、あの、ピ、ピエランジェロ司祭様が」
「何?」
「その、司祭様が、旦那様に話があると、その、お店のほうにいらしてまして」
ピエランジェロ司祭はケイドンの街を出て、もっと田舎の地に飛ばされたと聞いていた。しかし、いまだに街の者たちからの人気は絶大で、下手な対応をするわけにもいかない。
「わかった。応接室のほうへご案内を」
「いえ、その、あまり時間がないので、店のほうで構わないそうで」
――いったい何だというのだ。
忌々しく思いながら店のほうへ向かう。そこにはピエランジェロ司祭だけではなく、黒髪黒目の少年が立っている。顔立ちからして他国の者だろう、と考えた。
店の中は、そこそこ客が入っていたので、声を抑えめにして、ピエランジェロ司祭へと挨拶をした。
「これはこれは、司祭様。ご無沙汰をしております」
「久しぶりですね。ガリハゲーノ」
「何やら、お急ぎの御用とかで」
「ええ、そうなんですよ」
そう言って隣に立っている少年へと目を向ける。
「あなたがガリハゲーノさんね」
声で、少年ではなく女性なのだとわかって驚くと、その女性はニヤリと笑った。