作品タイトル不明
第453話 ネドリからの救援要請
翌朝、久々に濃い霧が出た。
朝食を終えても、ログハウスの窓から眺めた外は、真っ白過ぎて何も見えない。こういう日は大人しく家の中で仕事をするのが一番だ。
秋もだいぶ深まってきたのもあり、そろそろ冬ごもりの準備をしないといけない。
私の足元にマリンがグルグル言いながら纏わりついている。
――うん、可愛い。
思わず抱き上げて、マリンの顔に頬ずりしつつ、窓の外へと目を向ける。
「買い出しにも行かないとねぇ」
『あっちにいくの?』
「うん、そうね。こっちで買えない物が多いからね」
一番は調味料関係。特に醤油や味噌は、グルターレ商会の品物の中にも見たことがない。
買い物リストを書き出さなきゃ、と思ってマリンを床に下ろした時。
ガリガリガリッ
ドアを引っ掻く音がした。
『さつき~!』
『さーつーきー!』
この声は、ウノハナとシンジュだ。
ドアを引っ掻くのは、元はハクがよくやっていたことだったけれど、今ではちびっ子3匹も真似するようになっている。
「はいはいはい、どうした?」
ドアを開けると、サーッと白い霧が家の中に流れ込む。どんだけ濃いのよ。
『さつきっ!』
すっかり毛並が戻ったウノハナが尻尾をブンブン振り回す。そのせいで白い霧までもが波打っている。
『さーつきー、ねどりが、よんでるー』
「ネドリ? どうしたの?」
ウノハナが言うには、ホワイトウルフたちからの伝令で、ネドリが私の助けを求めているらしい。
『なんか、いっしょにいるのが、しにかけてるみたいー?』
「しにかけてる……って死にかけてる!?」
いきなり物騒なことを言いだした。
「ちょ、ちょっと、のんびりしてる場合じゃないわっ」
私はタブレットを手にして、『収納』の中身を確認する。
あちらの常備薬的な物から、オババ特性のポーション関係、その他色々ヤバそうなの(梅酒とかブルーベリーのジャムとか。自家栽培したお米で作ったおにぎりとか他諸々)や、非常食をチェックする。
向かう場所を聞いてみたら、獣王国の魔の森の中だという。ホワイトウルフたちが同行してくれると言われても、さすがの私も一人で行く勇気はない。
「風の精霊さん、エイデンに声をかけてくれるかな」
『エイデン~? わかった。ここによべばいい?』
「うん、お願っ……うわっ、もう来たっ!」
バッサバッサという音が上空から聞こえて、あっという間に白い霧が吹き飛ぶ。
大きな真っ黒いドラゴンが現れたかと思ったら、瞬時に人の姿に変わって、地上に降り立った。
うーわー、凄く嬉しそうな顔で歩いてくる。どこのトップモデルだよっ。
「五月! 俺に用か?」
「あ、うん」
あまりにも嬉しそうなので、来るの早すぎ、という文句も言えない。
「ネドリが呼んでるらしいの」
「ネドリが? 何があった」
エイデンがウノハナたちに目を向ける。
一緒にいる者が死にかけているという話を聞いて、ふーん、という顔をする。
「ネドリが死にかけているわけではないだろう? なのに、何を心配している」
「いや、それはそうだけどさ。ネドリがホワイトウルフたちに助けを求めたんだよ?」
「……五月はそいつを助けたいと」
「助けられるかはわかんないけどさ、いつも世話になってるわけだし」
「(世話をしてるのは五月の方であろうに)……はぁ。わかった。じゃあ、行くか」
「いえ、ちょ、ちょっと待って!」
私は上着を羽織るべく、2階の部屋へと駆け上がった。