作品タイトル不明
第437話 異世界キノコと椿の実
美味しい火酒造りをする人をスカウトしてきて欲しいといったら、一も二もなく飛んでいきそうになったエイデン。どこの誰、と教える前に飛んでいこうとするので、止めるほうが大変だった。
ドワーフも大酒飲みだけど、エイデンも凄く飲む。その上、酔ったところを見たことがない。せいぜい、いつもよりは機嫌が良さそう、と感じる程度だ。
古龍にお酒、といったら(東洋と西洋の違いはあるけど)、ヤマタノオロチを連想してしまったけど、酔わないんだったら、エイデンの方が酒が強いってことだよな、と、チラリと思う。
飛んでいきそうになったエイデンだけでは心もとなかったので、お目付け役にネドリと、ドワーフ関係者もいたほうがいいだろうということで、ドレイクが同行することになった。
ネドリも『ドワーフの火酒』と聞いて、目の色が変わっていたのが、少し心配ではあるが、いい返事を貰ってきてくれることを願う。
そうこうしているうちに、山は徐々に秋が深まってきている。
うちの果樹園や村の畑に限らず、山の恵みも豊作なようで、村から何かしらの差し入れがよく届くようになった。
今日はカラフルなキノコをザルいっぱいに載せて、ガズゥ、テオ、マルのいつもの三人がやってきた。
私が知っているキノコなんて、せいぜい、シイタケ、しめじ、エノキ、松茸くらい。茶系の地味な色のものしか知らないから、赤やら青やらとカラフルなモノを見ると、毒々しいイメージがわく。
「これが、アカキノコでぇ、これがアオキノコ」
「やくとうまいんだ」
そのまんまやんっ! と内心ツッコみをいれつつ、ふんふんと聞く私。
せっかく採ってきてもらったものなので、ありがたく受け取る。申し訳ないけど、後で『鑑定』だけはしっかりしておこう。
「そうだ、五月様」
「うん?」
凄い柄だなぁ、と赤とオレンジのマーブル模様のキノコを手にしていると、ガズゥが何か思い出したのか、声をあげた。
「春先に赤い花を咲かせてた木、あれに実がなってたんだけど」
「赤い花?」
「うん、村の端から山裾をぐるーっと植わってるヤツ」
何か植えてたっけ……と考えて思い出す。
「ああ、椿か!」
蜂がいつの時期でも蜜を集められるようにと、植えた植物たちの中の一つだったはず。
「あれって、食べられるの?」
「いや、実そのものは食べないと思うけど……あれから油が採れるのよ」
「油!」
ガズゥの驚きの声に、そういえば、油って高級品だったっけ、と思い出す。
グルターレ商会が持ってくる商品の中でもお高くて、村人たちも少しずつしか買ってなかった記憶がある。
「……椿油か」
確か椿油も食用に出来ると書いてあった記憶が。
かなり種を集めないとダメだった気がする。
「ふむ。作ってみる?」
「作れるなら、やる!」
量が取れなくて食用には無理でも、髪に使ったり、マッサージに使ったりもできるだろう。
「まずは、実を集めなきゃね」
「はいっ!」
キノコを『収納』した後、私はガズゥたちとともに椿の木が生えている場所へと向かうことにした。