作品タイトル不明
第431話 ダンシング・バター
今年最初のうちの敷地のリンゴは、予想以上に蜜が入っていて美味しかった。
思わず、他にも生ってないかと、朝食後にマカレナたちと一緒に見に行ったけど、見つけられなかった。(精霊たち曰く、小さい実はあるらしい。育てるか、と聞かれたが、そのままでとお願いしている)
「さてと、今日はバターを作る約束だったよね」
「はいっ!」
マカレナとブルノは、期待の目がキラキラしている。
実は、つい先日、自作のバターに挑戦したのだ。その時は牛乳の量を少なめでの試作だったのだけれど、思ってたよりも美味しく出来てしまった。
ただ、量が少ないから、あっという間に無くなってしまった。
自分一人では、作れる量も限られてくるので、今回、マカレナとブルノにお手伝いをしてもらおうと思ったのだ。それに、作り方がわかれば、彼らだけでも作れるだろうし、それが牛乳以外の商品になったら、とも思ったのだ。
「さて、では、これ持って」
「……?」
私が取り出したのは、あちらでジャム用にと買ってきた、しっかり蓋がしまるタイプの瓶。私の右手で掴めるサイズだ。
それに八分目くらい牛乳を入れて。
「それを、こ・う・や・って、ふ・るっ」
思い切りシャカシャカシャカふる私を、マカレナたちはびっくりした顔で見ている。
シャカシャカシャカ
「はぁ、二の腕にくる~」
そう言いながら振り続けてるうちに、瓶の中身の感触が変わった。
「お、固まってきた?」
瓶の蓋を開けてみると、固形と液体に分離しているのがわかる。
「これ、この塊の部分がバターね」
「へぇ~!」
「よし、もうちょっと振ろうか」
「あ、ぼくもやる!」
「わ、私もっ!」
マカレナとブルノに牛乳を入れた瓶を渡すと、一心不乱に降り出した。
特に、ブルノは身体ごと振るものだから。
「ぶふっ」
ちょっと変なダンスを踊ってるみたいになって、笑ってしまった。
「さ、さつきさま、なんでわらうの~」
「ごめん、ごめん」
そんなダンシングブルノの姿を見た私は、ふと思いついて、家の中からスマホを持ってきた。
私のスマホの中には、気に入った音楽や動画がいくつかダウンロードしてあるのだ。特に、家で手作業してる時のBGMには欠かせない。
「……あった、あった。やっぱこれじゃない?」
探し出したのは、一昔前、いや、二昔も前のアイドルの曲だ。某高校生のダンス部の動画で再ブレイクしたヤツ。面白くって、ついついこの動画をダウンロードしてしまってたのだ。
「なーに、それ」
私の手元で音が鳴っているのが不思議なのか、瓶を振りながらテッテケとブルノがスマホをのぞきにきた。
「へあっ!? ようせいさん!?」
画面で踊り狂ってる女の子たちを見て、ブルノが驚きの声をあげた。それにつられたマカレナも画面を見て固まってる。
「い、いや、妖精じゃないよぉ~、ほら、この音楽に合わせてね」
チャッチャカチャチャ、チャチャチャ、チャッチャカチャチャ、チャチャチャ♪
シャカシャカシャシャ、シャシャシャ、シャカシャカシャシャ、シャシャシャ、
音楽に合わせて身体を揺らしながら瓶を振るせいで、ちょっと変な振り方になってるのは、ご愛敬。
私のダンスモドキを見て、復活したマカレナたちも笑いながら瓶を振りまくる。
ちなみに、マカレナたちには見えてないけど、精霊たちまで踊ってるもんだから、私の笑いはいつまでも止まらない。最後には、笑い過ぎて息切れしたせいで、しゃがみこんでしまった。
それでも、1曲終わるころには、無事にバターと水分に分離することができた。