作品タイトル不明
第413話 再会と小さな嫉妬
「あ、あの……ガズゥたちは」
キャサリンが、おずおずといった感じで私に聞いてきた。
短期間とはいえ、一緒に生活してた仲間だったのだから、気になるのは当然だろう。
「いるわよ。ガズゥ! テオ! マル! キャサリンが来たわよ!」
「はーいっ!」
3人とも、家の影から様子を見てたようで、私の声にすぐに反応して飛び出してきた。その後ろにはハクとユキ、スノーまでついてきている。
「キャサリン!」
「サリー!」
嬉しそうに声をあげるのは、テオとマル。
ガズゥは、私たちの目の前で立ち止まって挨拶をしようとしたのに、テオとマルはそのままの勢いで彼女らに抱きつきそうになる。
「ダメだ!」
「ぐへっ」
「うー」
首根っこをガズゥに捕まえられて、変な声をあげて、ぶら下げられるテオとマル。
あの勢いでいったら、確実にタックル状態でキャサリンとサリー、二人ともが倒れてたわ。特に高位貴族のご令嬢にそれやったら、と想像したら血の気がひいた。
そんな私の心配をよそに、ハクたちは尻尾をふりふり、キャサリンたちの周りをウロウロ。サリーは嬉しそうにユキに抱きついて、顔をべろんべろん舐められてる……後で、洗わなくちゃね(遠い目)。
たった1年でかなり背が伸びたガズゥは、今では私と背丈は変わらないくらいになっている。獣人の成長速度、早っ。
その上、大人たちと一緒に狩りやダンジョンに行ってるせいか、体つきもしっかりしてきて、子供らしいぽっちゃりしていた頬が細くなって、シュッとした感じだ。子供っぽいテオとマルと比べてしまうせいか、だいぶ大人びて感じる。
その上、ネドリとハノエさんの息子だけに、美少年ぶりに磨きがかかっていて、何気に孤児院の女の子たちに大人気になっていたりする……。
「ガズゥ……?」
キャサリンが薄っすらと頬を染めている。
「はい。キャサリン様、お久しぶりでございます」
「おひさしぶりでございます」
「ますっ」
ちび2人の頭をつかんでお辞儀をさせながら、ガズゥも頭を下げる。ネドリにでも聞いたんだろう。ちゃんと『様』をつけて挨拶をしている。
その様子に、キャサリンは少し寂しそうだ。
「……頭をあげてください……皆、変わりはありませんか」
気持ちを切り替えたのか、優しい笑みを浮かべて声をかけるキャサリンに、ガズゥはにっこり笑い返す。
「はい。この通り、テオもマルも元気がありすぎまして」
「フフフ、でも、元気でよかった。ところで、私たちが去ってから何があって、こんな村になったのか、教えて……」
「キャサリン!」
少し離れたところでネドリ達と話していた王太子が、慌てたように走ってきた。
「アラン様」
「……その者は?」
「彼らは、一緒に五月様のところに保護されていた者たちでございます」
「何? ではネドリの息子か!」
驚いたような顔で言う王太子。簡単にネドリから説明があったのだろう。
こうして二人が並ぶと、少しだけ王太子の方が大きい感じだけれど、体つきはガズゥの方ががっしりしている感じだ。系統の違う美少年の二人。眼福、眼福、などと思っていた私。
「年はいくつだ」
「11歳になりました」
「キャサリンと同い年か……ふむ。キャサリンたちが世話になったそうだな。感謝する。さぁ、キャサリン、あちらで魔道具を見せてもらえるそうだ。一緒に行こう」
「え、は、はい」
キャサリンはまだ何か言いたげだったのに、王太子が彼女の腕を掴んで、離れていく。その後をサリーも慌てて追いかけていく。
「……俺、何かやった?」
去り際に王太子に睨まれた、という。
ガズゥ、イケメンだしね。恋のライバルって思われたのかな。ガズゥは何とも思っていないっぽいんだけど。
「小さな嫉妬は、恋のスパイスって言うしねぇ……」
「うん? 五月様、なんか言った?」
「なんでもないよ~」
首を傾げるガズゥの背中をポンポンッと軽く叩くと、私は王太子たちの後を追いかけた。