作品タイトル不明
第408話 王太子、(激しく)謝罪する
「はぁ……」
王太子は軽くため息をついた後、薄っすらと笑みを浮かべ、隣で苦しがっているベタベタ女へ視線を向ける。
「……ゴンフリー侯爵令嬢、無理はいけないよ。彼らと一緒にケイドンの街へ戻るがいい」
「殿下!?」
まさかの王太子発言に、驚いているのは、とりまき君たち(もう、まとめてもいいよね?)。
いや、私も驚いてるけどね。
「ここは辺境の地、そもそも、ゴンフリー侯爵令嬢が望むような環境でもないだろう。そういえば、ケイドンの街の高級宿を気に入っていたじゃないか」
「でしたら、殿下もご一緒にっ」
「ヘンリック、君は忘れているようだが、私は視察も兼ねてるんだ……君たちのように、のんびり遊びに来たわけではないんだよ」
あれぇ?
「君たちは、彼女に付いていってあげればいい。私にはディルクが付いている。それに、エクスデーロ公爵家からも、護衛がついてきているんだ。気にせず戻るがいい……ほら、早くしないと、ゴンフリー侯爵令嬢の顔色がどんどん悪くなってるよ?」
……たぶん、王太子の発言のせいじゃないかなぁ。
ディルクと言われたのは、王太子の背後に立っていた精悍な若者。王太子たちより、少し年上な感じだろう。私と目が合うと、軽く頭を下げてきた。
「しかしっ」
「大丈夫、君たちのことはきちんと伯爵たちには報告しておくから」
淡々と話す王太子の言葉に、渋々席を立ったとりまき君たち。ローブを羽織った男女とともに、ベタベタ女(真っ赤な顔で、こっちを睨んでる)をその場から連れ出した。
私の視界から彼らの姿が見えなくなった頃。
「……行ったか」
王太子は振り向きもせずに、ディルクと呼ばれた若者に問いかけた。
「……はい。もう建物の影に入りました」
「……はぁぁぁぁぁぁっ」
王太子、いきなり深いため息とともにテーブルに突っ伏したよ。
――うん? これはいったいどういう状況だろうね?
「あー、あの女、化粧臭いんだよっ! 暑苦しいし……最悪だ……キャサリン~」
キャサリンに抱きついている王太子に、目を丸くしながら唖然とする私。
13歳とはいえ、大人びている王太子が、まだ幼さの残るキャサリンに抱きついている図。犯罪臭がするんだけど。
「……殿下、モチヂュキ様の前です」
「はっ!」
ディルクの言葉に、すぐに身体を起こす王太子。
「そうでした! も、申し訳ございませんっ!」
先ほどまでの、張り付いたような笑顔とは違う、年相応の焦った表情に王太子。
「今回は急なことをお願いした上に、あのような者たちまで同行するはめになり、大変ご迷惑をおかけしました。本当に申し訳ございませんっ!」
勢いよく頭を下げて、テーブルに激突して、ゴチンッという音が聞こえた。
「うわっ、ちょ、ちょっと頭上げて!」
「いえ、本当に、本当に、申し訳ございませんっ!」
顔が上がったかと思ったら、おでこが真っ赤になった状態で、またゴチンッとか!
「うん、わかった、わかったから!」
「でもっ」
――もう、お付きの人たち、止めてよっ!
そう思って周りを見ると、首を振ってる。
誰も止められないの!?
「……アラン様、五月様がお困りです」
「キャサリン……」
キャサリンの言葉に、うるっとした目でやっと落ち着く王太子(ちなみにエイデンも、呆れすぎて何も出来なかった)。
「……とりあえず、なぜ、こういう状況になったのか、説明していただけます?」
美しい白い肌の王太子の額が赤いままなのが気になるところだけど、あの面倒な面々のことについてとか、色々聞いておきたい。
「当然ですね」
王太子は苦笑いを浮かべつつ、キャサリンへと目を向ける。
キャサリンも困った顔で頷いていた。