作品タイトル不明
第407話 王太子と、不愉快な仲間たち(2)
ピシ―ッと空気が固まるっていうのは、こういうのを言うんだろう。
この東屋の周辺には、王太子たちが連れてきた護衛やら、侍従や侍女みたいな人が立っていたけど、彼らも固まってる。
でも私は気にしない。子供相手に大人げないと言われようとも、不愉快な気分にさせられてるのは、私の方。
お茶を始める前にちゃんと自己紹介をしたのだ。
たとえ、こんな木造の建物ばっかりの辺鄙な村であっても、この土地は私の物であり、コントリア王国とはこの土地は関係ないということも話してる。
実際、今回の訪問だって、元をたどれば、月に1回の二人だけのお茶会の時に、キャサリンがこの土地と私との出会いを王太子に話したのがキッカケだとか。誘ったのは王太子だけだったのにと、キャサリンが最初に申し訳なさそうに話してくれたのだ。
なんだって、余計なお邪魔虫たちまで連れてきてるんだ。
「もう、お茶も飲み終わったようだし、甘い物も食べたし、十分、休めたでしょう? 村も外から見れましたよね。では、どうぞお帰り下さい……今から出れば、ケイドンの街なら、休まず走れば明日の昼頃には到着するでしょうから」
最初に反応したのは、ベタベタ女。
「な、なんて失礼なっ! こ、こんな非常識な人が、上に立っているなんて、貴方も大変ねぇ」
顔を引きつらせたベタベタ女が、いつの間にか私の背後に立っていたエイデンに声をかける(気配無しで立たないで!)。13歳にして猫なで声って、怖すぎるっ。
まさか、エイデンを護衛か何かと思ってるんだろうか。
そもそも、エイデンにそんなこと言ったら。
「……黙れ」
「なっ!? 上が上なら使用人もっ……うっ!?」
ベタベタ女は目を見開き、自分の喉元を押さえてる。
そのうち顔が赤くなってきてるんだけど……大丈夫なのよね!?
「五月を悪く言う声など、聞きたくもない(殺していいなら殺してやるんだが)」
「はぁ……エイデン、息もできない状態じゃないわよね」
「……ああ」
その間は何!?
「……さっさと、その女を連れて出ていけ。出ていくまで、女の声は戻らない」
「お、お前、ゴンフリー侯爵令嬢になんてことをっ!」
そう声をあげたのは、レミネン辺境伯令息。立ち上がって腰に手を持っていくけど、武器の類は事前に預けられてる。
彼女を守ろうっていう騎士道精神ってヤツなんだろうか。
そもそも、騎士道あるなら、王太子の婚約者であるキャサリン優先じゃないのかね? 今までの様子から見ても、ダメダメじゃんって思うんだけど。
「確か、魔術の得意な者が同行してなかったかっ」
慌てて護衛に声をかけているのは、マルムロス伯爵令息。馬車の方から三人、ローブを羽織った男女が走ってきたけれど……途中で、止まった。
「何をしている、早くっ」
「む、無理ですっ!」
先頭にいた中年男性が青い顔で立ち止まる。
「何だと」
「はっ、はっ、はっ、こ、これ以上先には」
中年男性の視線がエイデンに向けられ、ヒィッ、という叫び声をあげて腰を抜かしてしまった。
「ど、どういうことだ」
レミネン辺境伯令息とマルムロス伯爵令息は、真っ青になる。
「ほら、早く連れてけ」
エイデンの冷ややかな声。
しかし、そんな中、王太子は無反応。
……うん?
こっそりキャサリンの手を握ってないか?
ニギニギしてない?
何気にキャサリン、顔が赤いぞ……これはどういうこと?