作品タイトル不明
第398話 梅の天日干しと、ブルーベリー
梅を漬け始めてそろそろ1か月。
ここしばらく好天に恵まれていることもあり、天日干しをすることにした。
ログハウスの前の日当たりのいいところに、大きめの折り畳みのテーブルを並べる。
これは、前に私のアルミの折り畳みテーブル(キャンプ用のミニサイズ)を見て刺激を受けたヘンリックさんが、作った物。私の腰くらいの高さのある、けっこう立派なサイズだ(ちなみに、このテーブルは村の焼肉パーティでも大活躍している)。
そこに梅干しのために用意したザルを置いて、心の中で『美味しくな~れ』と思いながら、一粒ずつ梅を並べていく。
天日干しは3日くらいと本には書いてあったので、もうちょっとしたら食べられるだろう。今から、白ご飯と一緒に食べるのを想像すると、口の中が唾液でいっぱいになる。
マリンはテーブルの上が気になるのか、前足をテーブルの端に引っ掛けて覗き込もうとしてるけど、ちょっと届かない。
ザルが乗っているのがわかっているのか、飛び乗るまではいかないようだ。
「さて、あとはブルーベリーと桑の実も収穫しに行くよ」
ログハウスの敷地から、果樹園へと道を下っていく。マリンも私の後をついてくる。
この道はホワイトウルフや牧場から牛乳を配達してくれるマカレナたちも通るせいか、すっかり踏み固められてる。
「すっかり育ち切ったって感じね」
去年の春に植えたとは思えないほど立派に育っている果樹たち。今年もたわわに実っている……というか去年以上に量が多い。
「……それに、粒も大きくない?」
一粒だけ採ってみる。今年採れたサクランボ並みにデカい。
ポイっと口の中に放り込む。噛んでみたら、じゅわっと果汁が溢れだした。
「んっ!? 甘っ!」
かなり熟しているのだろう。ジャム作るのにも、砂糖がいらなそうなくらい甘い。
「よし、さっさと摘んじゃわないとね」
去年は高い所の実はノワールが手伝ってくれたけれど、かなり身体が大きくなってしまって、ちょっと頼めない(下手をすると風圧で実が飛んじゃうんじゃ……)。
「またガズゥたちにお願いしなきゃいけないわね」
孤児院の子たちにもお願いした方がいいかもしれない。それくらい実が生っているのだ。
とりあえず私の手で届く範囲を採りながら、そういえば、去年の夏にガズゥたちに出会ったんだったよなぁ、などと思いかえす。
彼らと出会って、そろそろ1年になるんだ。
その1年で、ガズゥたちは背が伸びた。伸びたと言っても、まだ私よりは小さい。小さいんだけど……来年には12才になるガズゥは、私よりも大きくなりそうだ。
ネドリもハノエさんも身体が大きいから、当然かもしれない。
――そういえば、キャサリンとサリーは元気かなぁ。
父親と王都に戻ったはずだけれど、勝手に大丈夫だろうなって思ってるので、無事の確認まではしてない。あちらからも、その後については特に連絡もない。
王太子の婚約者候補って言ってたことだし、きっと色々と忙しくて、それどころではないんじゃないかと、勝手に想像する。
そもそも、ここが村になってることも、彼女たちは知らないだろう。手紙を出そうにも、送り先がわからなければ出しようもない。
「まあ、便りの無いのは良い便りって言うしね」
そうつぶやきながら、熟した実を、次々とジッパー付きのビニール袋に詰め込み続ける私なのであった。