軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第376話 黒猫とホワイトウルフ

黒猫の怪我は、見事に治った。

今日は朝から、私の目の前で、ウノハナたちホワイトウルフの三つ子とログハウスの前のところで走り回っている。ハッキリ言って、三つ子の方がデカいので、黒猫が襲われてる風にしか見えないけど、アレで楽しんでいるというのだから、わからない。

ノワールは黒猫が完治したのを確認してホッとしたのか、それでもまだ心配なのか、敷地の日当たりのいいところで、日向ぼっこ中。

あ、黒猫がノワールの腕の間に飛び込んだ。

『あー!』

『のわーるにいちゃんのとこは、だめだよー』

『……ずるい』

「みゃう~」

彼らの間では会話が成り立っているらしい。

楽しいんであれば、まぁ、いいか。

今日の私は、日向ぼっこしながら、黒猫用のクッションを作っている。

昨日は、バスタオルに包んであげていたけれど、彼女専用(そう、メスだったのだ)の寝床を用意してあげているのだ。

昨日、治療を終えた後、エイデンは再び、ジェアーノ王国の方に行くという話になった。

帝国によって焦土と化した土地は、まだ熱をもっていて誰も立ち入れない状態なのだとか。その隙に、帝国の人間が入り込めないように、何やらやるつもりらしい。

ジェアーノ王国との国境付近を封鎖してしまうと、流通とか大丈夫なのか心配なのだが、すでに戦争状態で流通も何もないと。そりゃそうか。

一応、ジェアーノ王国が帝国に対する盾のような存在になっているので、他国との関係は良好なのだとか(その国には、ドワーフたちの母国も含まれるのだそうだ)。

「この子、うちで預かってていいのかしら」

「頼む。さすがに、今は戻すに戻せない」

焼け野原らしいし、当然か。

苺牛乳を飲んでお腹いっぱいになったのか、くーすか、いびきをかきながら寝ている。

『治ってよかった』

「そうねぇ」

ノワールもホッとした顔で、ジッと黒猫を見つめている。

エイデンが何やらやった後に、彼女を戻してあげないと、その土地が瘴気で汚されるのだそうだ。

「こいつは小さくても聖獣だ。それなりに力はあるが、今の状態では、あの辺りに魔物たちが戻ってきたら、最下層になってしまうだろう」

お肉の美味しいフォグベアも、あの辺りに多く生息してたらしい(だから余計にエイデンが不機嫌なのかもしれない)。そのフォグベアの巨体は、私も知っている。あの大きな手で殴られたら、彼女など、簡単に肉片にされてしまいそう。

ということで、もう少し身体が大きくなるまで、我が家でしばらく預かることになったのだ。

ちなみに、この黒猫は、パスティーラという聖獣なのだそうだ。大人になるとハクやユキくらいの大きさになるらしい。大きな黒豹みたいな感じだろうか。

名前の響きはカッコいいんだけど、今はただの黒猫にしか見えない。だって、ゴロゴロいいながら、私の足元に身体をこすりつけに来る姿は、ほんと、ただの猫なのだ。

いつの間にか追いかけっこが終わったのか、三つ子を連れて、黒猫が私の足元にやってきていた。

『五月~』

『しんいりが、なまえがほしいってー』

『ってー』

ハッハッハッと息を荒げながら宣う三つ子たち。

「え、それって、名前つけたら、私の従魔になっちゃわない?」

ビャクヤたちやノワールは、たぶん、ずっと私の側にいてくれる気はするんだけど、彼女は戻るべき場所がある。今、ここで名前をつけたら、私に縛り付けることになったりしないだろうか。

「みゃう~」

ダメ? と言わんばかりに首を傾げて、アイスブルーの目で見上げてくる姿に、ずきゅんっと胸を撃たれる。

――ずるいぞ!

――あざといぞ!

むむむっと、堪えていると、三つ子まで同じように見上げてくる。

「あああ! わかった! わかったよぉ!」

そして、この子の名前を付けてしまう私。

「マリン、マリンでいいかな?」

アイスブルーの目が宝石のアクアマリンみたいだったので、単純につけてしまった。

名前をつけた途端、ピカ―ッと光った黒猫。

『ありがとう、さつき!』

彼女の可愛らしい声が聞こえてしまった ……ああ、従魔になっちゃったのね。

これでよかったのだろうかと、今更悩む、私なのであった。