作品タイトル不明
第370話 苺の株分けと、水田
苺はガズゥたちのお気に入りの果物に加えられた模様。
ちなみに、バッチリ、癒し効果がついていた。
これ、ジャムとかに加工したら、どうなるんだろうなぁ(遠い目)。
ちなみに、一応、こちらにも野イチゴのような物はある。
前にガズゥたちが山で見つけてきたのを食べさせてもらったことがあるが、粒は小さいし、甘さよりも酸味の方が強い。見た目は、あちらで言うところの、ヘビイチゴみたいな物だろうか。
残念ながら、私は見つけたことがないけど、これを量を集めてジャムにするのは大変そうだとは思った(そもそも、そこまで集める気力は、獣人にはなさそうではある)。
よっぽど気に入ったのか、自分たちの家でも育てられないか、というので、株分けをしてあげることにした。
苺はランナーと呼ばれる細いひものような茎が伸びて、これに新芽が育つというので、さっそくそれらしい茎の部分それぞれに、大きめな鉢を置いてみた。数日様子を見ると、無事に根付いたのが確認出来たので、ランナーをカットして、ガズゥたちの家に持ち帰らせた。
ちびっ子たちの目がキラキラと期待に輝きながら、鉢を抱えている姿を見ると、ちゃんと育って欲しいと願ってしまう。
――でも、これから育てるんじゃ、苺が生るのは来年かな。
……なんて思ったけれど、ここは異世界。
精霊の気分次第では、すぐにでも花を咲かせそうな気がする。
今日はガズゥたち獣人の子供たちだけが、ログハウスの畑の方の面倒を見に来た。
大人たちと一緒にダンジョンに行く事の方が多いけれど、たまに、うちの手伝いにも来てくれるのだ。
その畑であるけれど、半分を水田に変えた。
稲荷さんから頂いた種籾から、無事に苗が育ったので、これは植えるしかない、と。
最初、 さすがに『ヒロゲルクン』には、田んぼを作るメニューはなかったので、池の近くを『整地』した後、自力で水を入れてみた(おかげで、今ではメニューに追加されている)。
テレビで見た、裸足で苗を植えていて楽しそうだったシーンが頭に残っていたので、真似てみた。ぬるりとした感触は、なんとも言えず。一瞬、泥パックみたい、と思った。
これで、足が綺麗になったらいいのに、と思ったのは内緒だ。
今では、膝くらいの高さまで育っている稲の苗。このままのペースで成長したら、秋になる前に、黄金色になりそうな気がする。
早めに、脱穀とかの準備をしておいた方がいいかもしれない。
* * * * *
息子のガズゥが、五月様から『イチゴ』という果実のなる苗を譲ってもらってきた。
五月様は、息子たちばかりではなく、我々獣人にも、何かと分け与えて下さる。
果実しかり、野菜しかり。
時には、エイデン様が獲ってきたという魔物の肉までも。
「この前頂いた『イチゴジャム』も美味しかったし……さすが五月様だわ」
五月様が自ら作り頂いた物は、美味しいだけではなく、ありがたい効果がついている。
ガラスに映る自分の姿に、思わず笑みを浮かべる。
獣王国の村にいた時よりも、肌や毛の艶の輝きが違うのだ。それは、自分だけではなく、村人の多くが感じているに違いない。
「私たちが育てた物では、こうはいかないのよね……」
五月様の土地で作った野菜たちは、すくすくと美味しく育つ。
しかし、特別な力などはない。
「それでも、飢えないだけ、ありがたいと思わなければ」
前の村での苦労に比べれば、この土地のなんとありがたいことか。
「ガズゥのためにも、美味しい『イチゴ』がなるといいんだけれど」
優しく水をやりながら、そう呟く、ハノエなのであった。