作品タイトル不明
第357話 花見の宴と、再会と
ピンクの桜の花びらが、ひらりひらりと舞っている。
エイデンの姿を見た途端、精霊たちが桜を満開にしてしまったのだ。
もうこれは、花見の宴をするしかない、となるのは、必然。
あちこちで、肉や野菜が焼かれ、すっかりBBQの様相。
焼きそばのソースの焦げた匂いに、村人以外にも、エルフや護衛の人間たちまで興味津々に群がって、酒盛りが始まっている。
ここでは、種族は関係ない。
むしろ、それを言いだすような連中は、この場にいられないだろう。
「ぷはぁっ! いやぁ、旨い、旨いなぁ」
大きな木製のジョッキになみなみと入ったビールを飲み切ったヘンリックさんが、しみじみした声をあげる。
その目には、うっすらと涙が浮かんでいる。
それは、そうか。
目の前で仲間たちの家族が、笑顔で再会を果たしているのだから。
エイデンが運んできた家の中では、ハンネスさんたちの家族たちが……床で寝てました。
最初は幌馬車か荷馬車にでも乗って、それをエイデンが抱えて帰ってくるつもりだったそうなのだけれど、大きめな馬車でも無理っていう話になったらしい。
何せ、当初の予定よりも、連れ帰る人数が多くなってしまったのだ。
予定では、
ハンネスさんの妹
アルブレヒトさんの両親
ベルントさんの弟
アルバンさんの弟と妹
合計6人のはずだった。
しかし、いざ行ってみると、ハンネスさんの妹さんは未亡人になっていてお子さんが2人いる状態。
アルブレヒトさんの両親のところには、両親の友人のお孫さんというのがついてきた。
そして、ベルントさんとアルバンさんの弟妹は、孤児院で一緒だった子供ら3人を連れてきてしまった。
倍の人数になったうえに、ドワーフの特性なのか、やたらと荷物を持っていきたがったそうだ(特にアルブレヒトさんの両親)。
ネドリが持っているようなマジックバッグでもあればいいのだろうけれど、アレは相当値が張るものだそうで、当然、彼らが持っているはずもなく。
だったら、ということで、アルブレヒトさんのご両親の家ごと運ぶことにしたらしい。
ちなみに、この古びた感じのレンガ造りの平屋の家。
エイデンが降り立ったのは村から少し離れた所。そこに家を置きっぱなしにしてしまったので、さすがに、そのままにするわけにもいかず、慌ててタブレットでドワーフたちの山裾の家の前まで移動させた。
本来、ドワーフたちは山の中に家を持つのがステータスなんだとか。逆に、家を外に持っている方が見下されるらしい。私なんかは逆なイメージなんだけど。
でも、今回は家があって助かった、と言えるのかもしれない。
そして、なんで彼らが家の中で寝ているのかといえば、古龍の姿のエイデンを見ただけで、叫び声をあげて逃げまどうわ、気絶するわで、大騒ぎになってしまったそうだ。
あんまり煩いので、エイデンが魔法で寝かせてしまったらしい。
おかげで猛スピードで帰ってこれたのだとか。
ちなみに、ネドリたちはこの中に含まれていない。
ネドリたちだったら、背中に乗せて帰ってこれるだろうに、と思ったのだけれど、しばらくあちらの冒険者ギルドでの依頼をこなしてから帰ってくることにしたらしい。
こっちにはいない種類の魔物や、素材となる鉱物なんかがあるんだそうで、ある程度稼いだら帰ってくるんだとか。
……戻ってくるのは、だいぶ先になりそうだ。
いいのか、村長。
ハノエさんが、エイデンから話を聞いて、目が笑っていなかったぞ。