作品タイトル不明
第355話 エルフとドワーフ
私からしたら、髪型以外は、どう見ても普通にエルフっぽいんだけれど。
ハノエさんの指摘に、モリーナさんは少し困ったような顔をしている。
カスティロスさんが、大きくため息をついた。
「……モリーナの曾祖父がドワーフなのです」
エルフとドワーフ。
そういえば、某ファンタジー映画での悲恋のイメージがある。こっちの世界でも、そうだったりする?
「エルフは長命種のため、あまり多くの子供は生まれません。多くて2人、それもかなり年の離れたものとなります。しかし、彼らには立て続けに3人の子供が生まれました」
生まれにくいのは、近親婚とまではいかなくても、血が濃いのかもしれない。
そこは種族が違う相手だったからか、単に相性がよかったのか。
「二人の間に産まれた子供たちは、曾祖母のエルフの血が強くでまして、見た目は他のエルフと遜色なく、肉体的に強い者が産まれました。そのせいもあってか、3人のうち1人は、冒険者となり、今もうちの行商の護衛となっております」
カスティロスさんが、馬車のそばに立っている護衛の集団の方へと目を向ける。
……みんな似て見えるから、どのエルフがモリーナさんの親戚かわからんっ!
「まぁ、違いなどわかりませんし、他の者もさほど気にはしておりませんでしたが……モリーナにはドワーフの血が濃く出てしまったようで」
……どこが?
私には、せいぜい、モジャモジャの髪型くらいしか違いが見えない。
耳だってエルフ特有の尖った耳だけど……。
「髪型もそうですし、耳の形が少し違うのです。それに……彼女の魔力の総量が、通常のエルフの半分以下なのです」
耳? 耳なの?
カスティロスさんの耳と比べると……少し丸い? でも、わかんないって!
それと、魔力の総量が実生活で何かしら影響があるかと言われれば、あまりないらしい。
「ただ、それを厭う者がおりまして……」
なんと、モリーナさんの従姉が、問題なのだそうだ。
彼女はエルフの中でもかなりの美人さんだそうで、『緑の手』と言われるほど魔力の質も量も上等なのだとか。
その彼女が、自分の身内に明らかに(彼女にとって)劣るモリーナさんという存在が、気に入らないらしい。
今ではギャジー翁の元に身を寄せているモリーナさんだったけれど、従姉に毒された職人仲間も現れて、居づらくなってしまったらしい。
……どこにでもいるのねぇ。そういう面倒な人。
「ギャジー翁のお気に入りというのも、多少はあるんでしょう」
モリーナの曾祖母とギャジー翁が従姉弟同士の間柄だったのと、ドワーフの曾祖父とも職人仲間というので、良くしてもらっていたらしい。
ドワーフで職人と聞いて思い浮かべるのは、ヘンリックさんの顔。
「まさか、曾祖父のドワーフって」
「ヘンリックじゃないですよ」
フフフと笑うカスティロスさん。
年齢が全然違うし、すでに亡くなっているらしい(ちなみに、モリーナさんの曾祖父の存在があったので、エルフたちもヘンリックさんたちを受け入れやすかったようだ)。
「曾祖母の方は、まだしゃっきりしたもんですがね」
その曾祖母の後押しもあって、今回の話になっているそうだ。
だったら、その従姉っていうのを抑え込めばいいんじゃないの? って思ったんだけど、それはそれで、何やら色々な思惑が絡んでいるらしい。
やだよ、面倒ごとに巻き込まれるのは。
――はっ! だから、あの洗濯機なのかっ!?
もう洗濯機が迷惑料にしか見えなくなる。
「……村のことは、ネドリたちに任せてるんで。彼らがいいのなら、いいんじゃないかな」
「あ、ありがとうございますっ!」
脱力気味にそう言った私とは正反対に、モリーナさんの喜びの声があがった。
そこからは、ハノエさんがメインで、今後について話をし始めた。
ここに私がいる意味あるのかなぁ、と思いつつ、少し冷えた紅茶を飲んでいると。
「五月様~っ!桜、桜が咲いたよ!」
村の中心の方から、ガズゥの嬉しそうな声が聞こえてきた。