作品タイトル不明
第354話 魔道具職人見習い モリーナ
見たこともない新たな道具と情報との出会い。
それが、ギャジー翁の魔道具職人としての知識欲を刺激したようで、うちの村に出向きたい、と言いだしたそうだ。
さすがに魔道具職人の長に出ていかれるのは困るらしく、誰か代理に行かせることになったらしい。
しかし、今は空前の洗濯機ブームらしく、多くの魔道具職人たちは大忙し。それと、人族の住む国でエルフが無事でいられるか、という不安も大きかったらしい。
行商人たちは短期間であちこち移動しているので、バレにくいし、逃げることもできる。
しかし、獣人の村に住むとなると、いつ狙われるようになるか、という不安があったそうだ(そういう意味では、この村には許可なくは入り込めないので、村から出ない限り、安全ではある)。
そこで白羽の矢が立ったのが、魔道具職人の見習いのモリーナさん。
見習いといっても、今回のためにと、ギャジー翁が魔道具職人として使い物になるよー、という証書のような物を出すくらいには、優秀らしい。
「うちの祖父が言うには、サツキ様でしたら、私どもの知らない、色々な道具をお持ちなのではないか、と……」
「先ほどのポットですが、あれは魔道具ではございませんよね!? なのに、なんであんな熱々のっ……」
身を乗り出すモリーナさんの頭に、カスティロスさんの右手の拳が炸裂する。
「あ痛っ!」
「落ち着け、モリーナ!」
「はっ!」
……うん、夢中になると周りが見えなくなるタイプね。
「……この通り、好奇心旺盛でして……研究熱心なのは良いのですが」
カスティロスさんも、持て余し気味に見えるのは、気のせいではないはず……。
「ただ、ギャジー翁が期待をかけている者でもあります。できれば、こちらで魔道具の工房を持たせていただけないかと思いまして」
「さすがに洗濯機ほどの大物は作れませんが、簡単な魔道具と修繕くらいでしたら、できます!」
カスティロスさんが、若干申し訳なさそうなのに対して、モリーナさんは鼻息荒く、ヤル気満々。
修繕……そうか、メンテナンスか。
今、ここにあるものでメンテナンスが必要になっても、誰も直せる者はいないのが現状。もしかしたら、各家庭に埋もれてるようなのもあるかもしれない。
「ハノエさん、どうします?」
「五月様、よろしいですか」
ハノエさんの声に、小さく頷く。
「村長の夫のネドリが不在のため、代理をしておりますハノエと申します。カスティロス様、この村に住むのはモリーナさんお一人ですか? 言動からも、エルフにしては、大分、お若い方のようですが」
「ああ、はい。確かに、モリーナは我々の中でも最年少に近いですね。一応、ギャジー翁のところで住み込みで働いておりましたので、一通りのことは出来ます。しかし、さすがにモリーナ一人というのも危ういので、もう一人、世話人を置かせていただければと」
世話人は、さっきのアクセサリー屋のエルフらしい。
それを聞いて少しだけホッとする。
あのテンションのモリーナさんを、制御できる人がいてくれるなら安心だ。
「それと……どうもモリーナさんには、カスティロス様たちエルフとは違う匂いがするようですが……」
ハノエさんの言葉に首を傾げる。
一方のモリーナさんは、慌ててスンスンッと自分の体の匂いを嗅いでみたけれど、同じように首を傾げた。
「……さすがですね。獣人の嗅覚は侮れません」
「どういうこと?」
「五月様にはわからないかもしれませんが、カスティロス様とモリーナさんでは、種族の匂いが違うようでして」
パッと見ただけでは髪型くらいしか違いがわからない。
「もしや、モリーナさんはドワーフとの混血ですか?」
ハノエさんのビックリ発言に、私は固まった。