作品タイトル不明
第351話 最新式洗濯機
牛関係の話は、飼う方向でカスティロスさんに丸投げ。
ゲハさんたち、ジジババは大喜びしてたので、まぁ、いいか。
村のどこに厩舎などの牛を飼う場所を置くか考えなきゃだけど、今はそれは後にしよう。
カスティロスさんとゲハさんたちが話し合ってはいるようなので、私は大きな丸いチーズをあるだけ買って、他のモノを見るために歩き出す。
食べ物関係が集まっているところから、生活雑貨が揃っているあたりへと向かう。
今回は、同行しているエルフの数が多いことからも、前回以上に、色んな物を持ってきたようだ。
そんな中、デデーンっと置かれた1台の大きな四角いモノが目に入る。
「おおお、まさかの洗濯機!」
この前、稲荷さんの奥さんのところのお古を譲って頂いたばかりなのに、洗濯機がなぜ、ここにっ!
それも、あちらのドラム式洗濯機と見た目が変わらないって、どういうこと!?
「おう、お嬢さん、よく知ってるね!」
思わず叫んでしまった私に声をかけてきたエルフが一人。
他のエルフがストレートの銀糸のような髪型が多い中、このエルフはなぜかモジャモジャしているのを一つにまとめている。格好もなんだか……作業着っぽいのを着ている。
見た感じは男性に見える(主に胸元)けど、声は甲高いので、女性なのだろうか。今まで女性のエルフを見たことはないだけに、判断が難しい。
「こいつは、最新型でね! うちのお師匠さんが、レィティア様にってんで作ったんだけど、あ、レィティア様ってのは、うちの一族のお姫さんなんだけど」
聞き覚えのある名前だな、と思ったら、稲荷さんの奥さんの名前じゃないの。そうか、姫様なのか。一気に洗濯機を買い替えできて、中古を譲れるんだもの、お金持ちだろうなぁ、とは思ったけど。単純に、稲荷さんが稼いでるって思ってたよ。
……どうやって稼いでるかは、知らないけど。
話しっぷりからも、このエルフは他のおっとりした感じのエルフとは違う。格好からしても職人って感じだ。
どうもこの洗濯機、自慢の一品って感じなのか、エルフの言葉が止まらない。
「そもそも、この洗濯機ってのがさ、レィティア様の旦那さんが、うちの師匠に魔道具として使えるように出来ないかってんで、元になるもんを持ち込んだんだよ」
いやぁ、あれは大変だった、と、カラカラと笑いながらエルフ。
それっていつ頼んだのかな、稲荷さん、って思ったら、遠い目になる。
もしかして、山を買う時に私がごねたから、とかないよね。
「それでも、うちのお師匠さんの凄いところはさ、1か月としないでモノにしちまったってところさ!」
「へぇ」
そいつは単純に凄い。
元になったのが、どういうタイプの洗濯機だったかはわからないけど、それだって複雑な仕組みだったに違いない。
「な、凄いだろ? いつか私も、お師匠さんみたいなもんを作れるようになりたいもんだよ!」
ニカリと笑ったエルフ。
その後は滔々と、機能の説明までし始めるから、本当に、自慢なんだろう。
排水は自動で綺麗な水にしてくれて、乾燥機の機能もついている。その上、浄化までしてくれるとか、あっちの洗濯機よりも高性能過ぎません!?
「ところでこれって、おいくら?」
こっちの価値観だったら、とんでもなく高くなりそう。
でも、今の私だったら、ギリギリ買えそうな気が……しないでもない。
いまだにポータブル洗濯機で洗濯してる私。一人での生活だし、そんなに洗濯物の量はないから、なんとかなってはいるけど、乾燥機ついてるとか思うと、ちょっといいなって思う。
「あー、これは売り物じゃないんだよ」
「え?」
申し訳なさそうに言うエルフ。
もしかして、これって見本? 受注生産とか?
「こいつは、レィティア様から、サツキ様への贈り物なんだ」
「ぶっ」
まさかの、私へのプレゼントだった!