作品タイトル不明
第348話 桜並木と精霊たち
桜並木は残念ながら、魔の森の際までは届かなかった。
なんとかエイデンの山の北側の際あたりくらい。一応、木と木の間隔は広めにとったけれど、本数が圧倒的に足りなかったので、たいした距離にはならなかった。
ちなみに、山裾から桜並木の間の幅は、だいたい5、6メートルくらいをとってみた。
軽トラと馬車がすれ違っても、なんとかぶつからないはず。ヤバそうだったら、桜の木と木の間に入れば、なんとかすれ違えるはずだ。
できれば、砂利などを敷いて、道のようにしてしまいたいところだけれど、そこは急ぎという程でもない。
むしろ、ここで敷物でも敷いて、花見の宴会をしてもいいだろう。
そして、村の石壁の外の周辺では、元々冬枯れとは関係なく、何もない赤茶けた荒れた土地だったのに、緑の草がチラホラ見えるくらいに回復している。
――ああ、春だなぁ。
ちょっとだけ、のほほんとした気持ちになるのは、陽気のせいもあるだろう。
「五月様、お水をあげてもいいですか?」
「いいけど、かなり距離があるわよ?」
「大丈夫です!」
今からサクランボが生るのを期待しているのか、ガズゥたちの目がキラキラ光っている。
ガズゥ、テオ、マル、ラインハルトくんと、4人がドワーフに作ってもらった如雨露に、ユグドラシルの根本にある池の水を汲んで、桜への水やりに向かう。
獣人の子らは余裕だけれど、ラインハルトくんはえっちらおっちらという感じで、心もとない。心配に思いながら見つめていると、水やりの終わったマルが、ラインハルトくんの手伝いに走ってきた。
――仲良きことは美しきかな。
うんうん、と頷いている私の肩には、土と水の精霊たちが乗っている。重たさはない。
『ねぇ、さつき、もうさかす?』
『さくらもやるきになってるよ?』
『ねー?』
『ねー!』
「いやいや、もうちょっと待とう? 早く咲き過ぎちゃうと、エイデンたちが戻ってきた時には葉桜になっちゃうよ」
『えー』
『えー』
なんとか精霊たちを宥めて、桜並木周辺の土地の緑の濃さが目立つかな? くらいに抑えてもらった。
宥めるだけで、かなり疲れたのは言うまでもない。
一方で、私は私で、桜の苗木の準備を頑張った。合計で、30個。
まだ種は残っているけど、桜並木の引っ越しをしてみて、桜が育った時の木と木の間隔を広めに考えた方がいいかも、と思ったのだ。
それと、前の獣人の村。梅の木は村の四隅に植えて、十分に機能したことを考えても、びっしりと植えなくてもいいんじゃないか、と気が付いた。
足りなかったら、また用意すればいい。
種も黒ポットも、十分に残っている。
黒ポットにログハウスの畑の土を入れ、『悪い奴らが入ってこないようにしてね』とか『ラインハルトくんたちを守ってね』と祈りながら、種を一つ一つを埋めた。
私の気持ちがどれだけ反映してくれるかわからないけど、気持ちは大事!
そう思ったら、精霊たちも大盤振る舞いで、翌日には芽が出てた。桜並木に力を使えなかったせいだろうか。
しばらくすれば、そこそこ育った苗木になるだろう(遠い目)。