作品タイトル不明
第347話 花見の計画と桜の引っ越し
買い出しから戻ってきて、軽トラの荷台に目を向ける。
「……今日も買いまくったね」
口座に120万ものお金が入ってただけに、ちょっとタガが外れてる感は拭えない。
それにカードで一括っていう勢いにも慣れだしてしまっている自分が怖い。おかげで、すっかり、お店で『たくさん買う人』として認識されつつある。
まぁ、使わずに貯めこんでも……って、こっちの世界のお金、貯めこんでて何を言う、だよな。
次の行商で、何か買おう。そうしよう。
荷台の半分以上が、主に、お酒。
ドワーフたちへの差し入れもそうだけど、無事に家族を呼び寄せられたら、絶対宴会になるのは目に見えてた。
今回買い込んだのは、4リットルの焼酎、ブランデーを各10ケース、3リットルの箱入りのワイン、赤白10箱。ビールはさすがにビールサーバーがないと無理そうなので、缶ビールを箱買いだ。
他にも、自分が飲めそうな甘いお酒も買ってきた。
「絶対、飲み屋でもやってるって思われてるよね」
それぐらいの量を買った自覚はある。
でも、これもきっとあっという間に無くなるんだろう。
「後は、稲荷さんからもらった玄米と麦の種」
籾殻付きの玄米は、なんと30キロのをお裾分けしてもらってしまった。
なんでもいつも買っている農家さん、一昨年が豊作だったらしく、ちょっと古いお米が残っていたんだとか。こっちとしては、種籾にするつもりだったので、別に古くてもいいかな、と思ったので、ありがたく受け取ったのだ。
麦に関しては、おまけ。小さなビニール袋1袋分だけ。
『こっちは知り合いから』
ニッコリ笑って渡された麦の種。稲荷さんの胡散臭い笑顔と、どういう知り合いなのかが、非常に気になったけれど、こっちも頂けるんだったら、素直に受け取るしかないよね。
一通り荷物を下ろし、保存庫やログハウス、『収納』にしまう物はしまって、ひと段落。
少し遅めのランチということで、買ってきたサンドウィッチを食べる。スーパーの中のパンの専門店が作っているだけに、旨い。
ふと、トンネル側の門のそばの桜の木に目を向けた。まだ緑の芽吹きはないものの。
「お、蕾、膨らんできてる」
うっすらとピンク色が見えている。
このログハウスの敷地の中は、結界のお陰もあって、比較的暖かい。ここしばらく、天気もよかったし、少しばかり、桜の開花が早くなるのかもしれない。
精霊たちによって、すっかり大きくなってしまっている桜の木。
満開になったら花見だな、なんて思ったら。
「……そういえば、ドワーフたちの宴会、花見にしてもいいんじゃない?」
しかし、今から桜の苗木を植えたところで、土の精霊に無理をさせないと、難しそうな気がする。そこまではなぁ、と思う。
「……だったら、引っ越しさせる?」
視線は山裾に向かう道の方へと向かう。
あちら側は、『ヒロゲルクン』を使って植えまくった桜が続いている。10m間隔で植えたけれど、すでに大きく育ってしまっているせいか、密集している感じ。むしろ、間引いた方がいいかもしれない。
そう。これを、タブレットの『ヒロゲルクン』を使って、移動させればいい話。
「村の近くに植え替えれば、獣人たちもサクランボが取れるだろうし」
さて、では、どこに植えるのがいいだろう。
私はさっさと食べ終えて、タブレットを取り出して、『ヒロゲルクン』を立ち上げ、地図を確認する。
初っ端は、私の土地と言われている場所全て。獣王国の方まで出ているから、デカすぎる。グーッと縮尺を変えて、うちの山周辺に変えた。
「うん、ここら辺、桜並木にしちゃおうか」
北側の村の石壁の外、エイデンの山裾から獣王国の魔の森の際までは、まだウッドフェンス等の結界は張っていない。剥き出し状態だ。
ホワイトウルフたちがいるから大丈夫らしいけれど、ここもそのうち、やらないと、と思っている。
残念ながら『ヒロゲルクン』で植えた桜には、結界機能はない。
でも、今回の目的はお花見だし、結界については、おいおい考えればいいだろう。
私は鼻歌を歌いながら、どの木を引っ越しさせるか、桜並木を確認しに向かった。