作品タイトル不明
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ビヨルンテ獣王国、魔の森の近くにある街ケセラノの冒険者ギルド。
ギルドマスターの部屋から見える街の風景は、真っ白だった。
「まったく、なんだってこの時期に猛吹雪なんだ!」
熊の獣人のギルドマスター、ジャロはイライラしっぱなしだ。
なぜなら、急ぎ魔の森の先、ケセランテノ山へ調査に入らないとならないのに、この猛吹雪のせいで、街からすら出られない状況なのだ。
ケセランテノ山は、辺境の街、ケセラノからも望める美しい山である。
その美しさに反して、魔の森の奥にあり、途中、多くの魔物(それも上位種や特殊個体が多い)が存在し、ケセラノに存在する3つのAランクパーティですら、単独では山の入口まで到達するのも厳しい。
しかし、魔の森の外縁部あたりであれば、若手の冒険者たちでも、薬草採取や低ランクの魔物の討伐など、出来ることはいくらでもある。
実際、猛吹雪が始まる前、春の兆しに多くの冒険者たちが魔の森に入っていた。
その山周辺が突如光った、という報告が、当時魔の森に入っていた冒険者たちからいくつかあがってきた。街からも見えた、という住人からの言葉もあり、至急調査を、という話になったのだ。
多くの冒険者たちが、いざ調査へ向かわんとしたところで、件の猛吹雪だ。
今年の冬は寒さも厳しくなく、死人が出ることもなく、穏やかな冬だったのに……。
「さっさと、落ち着いてくれないもんかねぇ」
忌々し気に、外の景色を睨みつけるギルドマスターだった。
結局、猛吹雪は3日間続いた。
雪は街だけではなく、周辺も雪で覆われ、魔の森の姿さえ見えない。しかし、調査は急がねばならない。
なんとか魔の森の入口に辿り着いたのは、雪が止んだ翌日。街にいた冒険者総出で雪かきや、魔法で溶かしたりと、そこまでで一仕事になった。
そして多くの冒険者たちが魔の森へと入っていった。
1週間後、ポツポツと冒険者たちが戻ってきた。
「どうだった」
ギルドマスターの部屋に代表して報告に来たのは、Aランクパーティのうちの1つ、『熱き誓い』だった。
「……山へは入れなかった」
ムッとした顔で答えたのはリーダーのマック。
「入れない……山裾までは行けたのか?」
「ああ、行けるには行った。しかし、残念ながら、山の周辺一帯が結界で囲まれていたんだ」
「は?」
「見た目はただの板の壁なんだがな……どんな攻撃も効かなかったんだ」
「物理攻撃も魔術も一切よ」
ケセラノでも凄腕で有名な魔術師のアンが、肩をすくめて言う。
「なんだって?」
あの巨大な山の、どこにも入る隙がないというのだ。
「その板の壁にはドアも付いていたんだが、誰もそのドアを開けることができなかったんだ」
「ただのドアなんだろう?」
「そう、ドア。でもな、どのドアの脇にも注意書きがあってな」
「どのドアって……そんなにドアがあるのか」
「俺たちが確認できただけで3か所はあったよな」
「ええ」
パーティメンバー全員が、うんざりしたような顔をしている。
「『これより私有地。入山できません』……だとよ」
「はぁぁぁぁぁっ!?」
ジャロの驚きの声が、ギルドマスターの部屋の外まで響いた。