作品タイトル不明
第329話 獣王国の近くの山にて(3)
エイデンの結界のおかげで、あまり寒い思いをせずに一夜を過ごすことができたのには、感謝。
私のガーデンフェンスの結界程度じゃ、無理だったと思う。
「おはようございます!」
長屋から出た途端、メンレーちゃんの元気な声が、まだ薄暗い拠点の中に響く。
その声に合わせて、あちこちで朝の挨拶が響く。
空を見上げると、いい天気の模様。大型ガーデンフェンス、設置するぞ! と気合を入れた。
獣人たちにとっては軽めの朝食(固めのパンにベーコンエッグ、メリーさん特製根菜ゴロゴロスープ)を終えると、エイデンが古龍の姿で飛び立ったのと入れ違いに、ビャクヤとハクが現れた。
『五月様、お待たせしました』
「わざわざ来てくれたのね。ありがとう!」
『五月の為だ。当然だ!』
私はビャクヤの顔に抱きついて、わしゃわしゃと毛を撫でまわす。ハクは盛大に大きな尻尾をぶんまわしている。
そんな彼らの後から、遅れて到着した他のホワイトウルフは息をきらせている。
こうして見ると、余裕のビャクヤとハクが別格なのがよくわかる。
「村の方は大丈夫なの?」
獣人たちがいるし、ちゃんと結界も機能してるし、問題はないとは思う。
しかし、冒険者とか貴族とか、聖職者とか、色々あった後だけに少しばかり不安を感じずにはいられない。
『大丈夫です。シロタエたちがおります』
『ユキとスノーもいる。大丈夫だよ』
他にもノワールも、多くの精霊たちも守ってくれているらしい。
ノワールはすっかり巨体になっちゃってるから、うちの山の主っぽいし、精霊もギューギューだったな、と今のこの拠点の状況と比べてしまう。
この拠点となる場所、精霊がいないわけではない。
でも残念ながら、本当に小さい光がぽよぽよ~って感じで、薄っすらと見えるだけなのだ。当然、会話なんか出来ない。
なんで、こんなに違うんだろう、と不思議に思ってはいる。
私にはビャクヤたちがついてくれることになったので、獣人たちは村方向への伐採へと向かってくれた。獣人たちのホワイトウルフへの信頼感、半端ない。
「じゃあ、私はさっさと『伐採』しないとね」
タブレットを手に『ヒロゲルクン』を立ち上げると、画面には山の周辺の地図が表示される。私は指先で『伐採』したい範囲を指定して……ポチッとな。
「おお~!」
『流石です!』
『スゴイッ!』
オオオーンッ
オオオーンッ
……皆、盛り上がりすぎです。気持ちはわかるけど。
何せ、目の前の木々が、音もなく一気に消えて、視界が広がったんだもの。
その幅、約10メートルくらいだろうか。
実際は、下草もあってその下には株が残っているんだろうけれど。
ちょっと可哀想だったのは、木に住みついていた鳥たちか。いきなり消えて、落下している鳥や、なんとか飛び立った小鳥がいて、少しだけ申し訳なかったり。
「さぁ、チャチャッとやっちゃうよ!」
そう声をあげて、気分を変える。
同時に、ホワイトウルフたちが遠吠えを始める。
南の方の獣人たちからも、遠吠えが返ってくるのには、ビックリだ。
ウォォォーン
……うん?
この遠吠えは?