軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第317話 3人の新たな生活と、クッキー

年が明けても、獣人の村も、私も、いつもの生活は大きくは変わらない。

変わったといえば。

「こんにちは~。オババさん、いる~?」

「コニチハ」

「コンニチハ」

『あ、エメさん、アルフさん、こんにちは。お疲れ様です』

ジェアーノ王国からやってきた3人が現れて、すでに5日。

彼らは、そのまま、オババさんの家に住むことになった。

元々、オババさん一人で住むには家が大きかったのと、狼獣人にしては小柄で快活な対応に、3人、特にラインハルトくんにはよかったようだ。

エメさんいわく、オババさんが、小さいころに亡くなったラインハルトくんのおばあさんに雰囲気が似ているらしい。

梅ジャム茶のおかげで、彼らは3日目には家の中を動き回れるくらいには復活していた。

――梅ジャム茶、恐るべし。

それでも、さすがに、やつれているのまでは治せなかったけど、これは美味しい物を食べてもらうしかないだろう。魔物のお肉(エイデンの貢物)、いっぱいあるしね。

最初は獣人を怖がっていた3人。

間に私が入ったのと、甲斐甲斐しく世話をしたオババさんやハノエさんたちママ軍団のおかげもあってか、この村の獣人は大丈夫、と判断したのだろう。今では身振り手振りで会話をするくらいにはなった。

中でも簡単な挨拶は覚えたようで、獣人たちの言葉で挨拶をしているようだ。

残念ながら私の方は、イヤーカフの弊害で、彼らの言葉で話しているらしく、エメさんには苦笑いをされる。

ただ、大勢の獣人に囲まれるのは、まだ怖いようだ。

彼らがどんな状況だったのか、想像してもわからないけれど、相当怖かったのだろう、というのは私でもわかる。

私はもう慣れたけれど、狼獣人の大人の男性たちは、普通の人間に比べても大柄だし、なかなか威圧感があるのだ。この前行商人とともに来た護衛の熊の獣人たちは、狼獣人たちよりも、大きかった。あんなのに襲われたら、確実にトラウマになるだろう。

オババさんのところに3人の様子を見に来た私。

エメさんとアルフさんは、オババさんの手伝いなのか、薬草の束を作っていて、それをラインハルトくんが椅子に座りながら、ボーっと眺めている。

大人2人は、オババさんに世話になっていることもあり、彼女の手伝いをしているようだ。一方のラインハルトくんは、あれから虚脱状態になっているようで、そこから抜けきれていない。声をかけても視線を向けはするものの、すぐに目をそらしてしまう。ちょっと痛々しい感じだ。

「オババさん、クッキー作ってきたんだけど、一休みしない?」

「おや、五月様のクッキーですか。そりゃぁ、ありがたいね。どれ、お茶でもいれるかい」

どっこいせ、と椅子からおりてキッチンに向かうオババさん。新しいキッチンに使い古された魔道コンロは、なかなかの違和感だ。

ヤカンでお湯を沸かしている間に、私は紙皿にアイスボックスクッキーを取り出した。

今日は、砂糖をまぶした甘いクッキーの他に、ローズマリーやバジルを混ぜこんだしょっぱいクッキーも持ってきた。

『美味しいよ?』

甘いクッキーをつまんで差し出すと、ラインハルトくんは、じーっとそれを見てから、手にしてから口にした。

『甘い』

ぽつりと呟いたラインハルトくんは、無言でクッキーを食べつづけた。

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