軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

<護衛たち>

ケディシア伯爵領ケイドンの冒険者ギルドのギルドマスターの依頼に、グルターレ商会の護衛のドゴールは困惑していた。

「いや、俺たち、すでに別の依頼を受けている最中ですから」

「そこを何とか」

「……移動報告しに来ただけなんだけどなぁ」

Bランクパーティ『焔の剣』のリーダー、ドゴールは、この先、ビヨルンテ獣王国に向かうこともあり、コントリア王国での最後の街にあたるケイドンの冒険者ギルドに、移動報告のために寄っただけなのだ。

しかし、どこから聞き及んだのか、ギルドマスターは彼らが、あの荒地の村へと向かうということを知り、ドゴールに追加依頼を願い出た。

『荒地の村の状況調査』

ドゴールとしては、グルターレ商会の副会頭であるカスティロスの望む行程(それが荒地の村といわれる場所であろうとも)を進むだけ。

そもそも、村の状況なんて、彼ら自身でなくても他の者でも問題ないはずだろうと思っていた。彼らにしてみれば、その村に寄った後は、ケイドンには戻らず、ビヨルンテ獣王国を経て、エルフの村まで護衛していくのが今回の依頼なのだ。

コントリア王国の王都で、グルターレ商会からの指名依頼が来た時、ドゴールは久々にエルフたちとの商売の護衛ができると、楽しみにしていたのだ。

グルターレ商会のエルフたちが、普段は人族の姿で周辺国を回っているのは、すぐにわかった。なぜなら、ドゴールのパーティメンバーに、彼らと同じエルフがいたこと、グルターレ商会内の護衛が、そのメンバーとの知り合いでもあったからだ。

そんな関係もあってか、ここ数年、コントリア王国内での彼らの行商には、ドゴールのパーティ『焔の剣』が指名されてきていた。報酬もよく、それほど問題も起こらない依頼なので、指名があれば必ず受けてきた依頼だった。

ただし、彼らとの契約には、当たり前だが守秘義務があった。

どこで、誰と、どんな品物をやりとりしたか、等は当然のこと、相手の情報となるものは、どこにも漏らしてはならない。これを守り続けていたからこその、指名依頼なのだ。

「悪いんですけど、俺たち、この街には戻らないんで」

「そ、それなら、手紙でもなんでもいい」

「いや、それも勘弁してください、雇い主との契約もあるんですよ」

「クッ……!」

ギルドマスターの悔しそうな顔に、申し訳ない気分にはなったものの、エルフたちからの指名依頼の継続を考えたら、受けるわけにはいかない、と思った。

「どうなってんだ」

ドゴールは、村に着いて早々、狼獣人たちの多さに驚きつつも、エルフたちがいつにも増して腰の低い様に驚いた。

そもそも、荒地にできた村、と聞いていたので、もっと寂れたイメージだった。しかし、実際に来てみれば、頑丈そうな石壁に立派な建物が複数建っている。

その上、ここに住みついているほとんどが、獣人たちであること。それも、獣人の中でも戦闘能力に長けた狼の獣人ときているのだ。

唯一、人族と思われる、男のような格好をした若い娘に問いかけてみたが、「村長に聞け」と言われ、困惑する。

「ドゴール」

「……なんだ、マックス」

マックスと言われた熊の獣人が、顔を強張らせながらやってくる。

「ここはヤバい」

「あ?」

「ここはヤバいって言ってるんだ」

ドゴールを見下ろしながら、声を押し殺して訴えるマックス。

その後ろにいる虎の獣人も、青ざめた顔で頷いている。

「あれ、あの村長」

視線だけでネドリを示唆するマックスたち。

「……元Sランクのネドリだ」

「!?」

――なんだって、そんな大物が!?

「ドゴール」

今度はパーティメンバーのエルフが、これまた酷い顔色で声をかけてきた。

「……ここはヤバい」

「……」

「ここは、精霊で溢れている」

ドゴールは大きく目を見開く。エルフには人族に感じ取れないモノを察知する能力に長けている者がいる。パーティメンバーのエルフもその一人。

「それに、あの山」

エルフが視線を向ける先に、木々の隙間から古い石造りの建物が見え隠れしているのに気付く。

「ドラゴンの気配がする」

ドゴールは既に驚き過ぎて、反応すらできなくなっていた。

「ドゴール」

「……なんだよ。これ以上、何かあるのか」

血の気が引きすぎて、真っ白になったエルフが、唇を震わせながら言った。

「……精霊たちが」

「精霊たちが?」

「……手を出したら、許さないと」

いつも強気なエルフが怯える様に、ドゴールは一瞬、声を失う。

大きく深呼吸をして、見えない精霊に向かって宣言した。

「俺たちは、ただの護衛だ。この村に何ら危害を加えるつもりもない」

「ギ、ギルドに売ったら、どうなるか、よく考えろ、と」

――まさか、ケイドンでのギルドのやり取りを把握しているのか!

ドゴールは背中に冷や汗が流れていくのを感じた。

――ここは、本当にヤバい。

痛切にそう思ったドゴールなのであった。