作品タイトル不明
第275話 魔物除けの木
石壁の外に広がる畑の周囲が、深めの堀で囲まれている。
はい。頑張って掘りました。
最初はただの水路くらいな感覚で、せいぜい私の膝くらいの堀を掘ったんだけど、それを見たネドリたちから、もっと深く、もっと深くと合計3度乞われて、結局、2mくらい深い堀が出来てしまった。
水源はユグドラシルの元にある池。精霊の魔力がたっぷりのお陰か、秋も半ばというのに、周辺の土地に雑草が生えだしている。あの穢れて黒かった土も、今では薄っすら黒っぽい? くらいに浄化された模様。ユグドラシルパワー炸裂ってところだろうか。
堀の内側、村のある側を掘った土で盛土をしてみた。
ないとは思うが、ちびっ子たちが興奮して走り回って、間違って落ちないようにしておこうかと思ったのと、その盛土に、稲荷さんが言っていた魔物除けの灌木を植えられないかな、と思ったのだ。
その灌木のことをネドリに聞いてみたら、思い当たる木があるらしく、すぐに何人かの獣人で探しに行ってくれた。
「へぇ、これが魔物除けしてくれるんだ」
数日後、持ってきてくれたのは、トゲトゲした肉厚な葉をした、幅は2mないくらい、高さは私の腰くらいの木。葉を見た感じ、私の知っているヒイラギに似てる気がする。それを5本ほど、根こそぎ持ってきてくれた。
このトゲトゲの葉じゃ、運ぶの大変だったんじゃないかと思ったんだけど、そうでもなかったらしい。
「これは、マギライという木でして」
見つけてきてくれた犬の獣人のおじいさんが説明してくれた。
魔物の多い獣王国では、よく、村の魔物除けに植えているところがあるのだとか。
魔物除けというわりに、生えている場所は魔の森の浅いところらしい。それって、すごく遠いよね? それに群生しているわけでもないだろう。
思わず、この前買った土地の範囲を思い出し、びっくりする。その距離を運んできたわりに、マギライの葉は萎れるでもなく、けっこう生き生きしてる。なかなか強い木らしい。
「じゃあ、さっそく植えてみますかね」
そういうと、みんな腕まくりし始めた。見るからに、私一人で植えるのは無理だものね。
彼らと一緒に植えてから、一応、木と木の間隔を確認。もうちょっと開けた方がいいかも、と、タブレットを使い、少し間隔を開けながらマギライを植え直していく。これ以上育たないという保証はないからね。場所が場所だし。
5本全部植えたところで、『ヒロゲルクン』のメニューを確認する。畑の苗同様、マギライも新たな苗に登録されてました。予想通り。しかし、KP高っ! 畑の苗は一桁なのに、マギライ1本、300KP。
アプリのダウンロードやバージョンアップのために大量に使ったし、堀を使うのにもけっこう使ったんだけど、獣人たちのおかげなのか、いつの間にか、KPが増えてたからよかった。
「それでは、『ヒロゲルクン』で……ほい」
そして、6本目が現れて、周囲がびっくり、固まっている。
まぁ、驚くよね。
そんな彼らをよそに、私はほいほいと新たなマギライを植えていく。
――あー、また、KP貯めないとなぁ。
タブレットに表示されている数値が減っていくのを見て、苦笑いを浮かべる私なのであった。