作品タイトル不明
第267話 雨のログハウス
雨、雨、雨。
ここ数日、冷たい雨がしとしとと降り続いている。こちらにきてから、天気が崩れることはそう多くはなくて、こんな長雨は初めてかもしれない。暑い時期の湿度の高い状態は嫌だけれど、寒い時期の雨も、あんまり嬉しくはない。
暖炉の火がぱちぱちいっている。その前には炎に照らされて黒光りしているノワールが丸くなって寝ている。
獣人関係のドタバタが落ち着いた頃から、ログハウスでゴロゴロしている姿を見かけるようになった。エイデンはいいのか、聞いてみたら、最近、忙しいらしく、あまり城にもいないのだとか。
――ゴロゴロしている姿は犬とか猫みたいだけれど、これでもドラゴンなんだよなぁ。
どんどん大きくなってきていて、このままだと、そのうち家の中に入れなくなるんじゃ、と心配になる。実際、今は私と背丈が大差なくなってる。横幅もドアのサイズ、ギリギリだ。ビャクヤたちみたいな巣穴か、専用の厩舎でも用意してあげないとダメかもしれない。
窓の外へと目を向けると、桜と柿の木はすっかり紅葉している。
この前、ガズゥたちに手伝ってもらって、ログハウスの敷地にあるりんごと柿、果樹園にある梨を収穫した。ちょっと遅れてたら、ダメだったかもしれない。
そろそろ栗とみかんを収穫してもいい頃合いなのだけれど、この天気のせいで出来ないでいる。みかんは、もしかしたらダメになってしまうかも、と思うと心配だ。
収穫自体は、一人では食べきれない量になってしまったけど、今回は獣人たちがいる。さっそく彼らにも少し、お裾分けしたら、2、3日で食べきってしまった。
もっと果樹を植えれば、彼らも自分たちで収穫もできるようになるはず、と、今回も種を植えることにした。おかげで荷物置きに使っていた小屋は、黒ポットでいっぱい。
すでに芽が出ているのもあるので、もう少し大きくなったら、村の周辺に植えてあげようと思っている。
雨は相変わらず、止む気配はない。
「せっかくだし、家でできることといったら」
料理をするか、裁縫するか。
保存食を作り溜めしておきたいけれど、今日はそういう気分ではない。
ふと、『収納』に入れっぱなしの、ホワイトウルフの毛を思い出す。去年の秋から冬にかけて、クッションの中身にしたり、少量ながらも糸を作ってミサンガにしたりした。この時は動画で調べて、スピンドルという道具で作ってみた。本当に少量だったから、これで十分だった。
しかし、『収納』の中のホワイトウルフの毛は減らないし、むしろ増えている。『売却』や『廃棄』もできるけど、なんとなく、自分のところで使えないかな、と思ってしまうのだ。
「あー、糸車、欲しいかも」
獣人たちの中に持ってる人とかいたりしないかしら。もしくは、作れる人。
古い家から荷物を取り出している様子は見ていたけれど、じっくり見てたわけではないので、彼らの手持ちに糸車があったかどうかはわからない。
「天気がよくなったら、聞きにいってみようかな」
雨の中、スーパーカブを走らせる気にはならないし、まして傘をさして歩いていく気にもならない。
荷物置き場になっている2階の部屋に向かうと、いくつもの毛糸を入れた籠を持って階段を下りる。大層な物は作れないけど、ガズゥたち子供らに、マフラーくらいなら作ってみてもいいかもしれない。
――早く雨止まないかなぁ。
ノワールの背中によりかかりながら、私は編み針と毛糸を手に取った。