作品タイトル不明
第264話 出発(ネドリたちが)
黙々と皆荷物を荷馬車に載せている。皆、とは、元怪我人、老人含め、全員だ。
結界がなくなってしまうと聞いては、さすがに、ここに居続ける勇気はなかった模様。なにせ、戦える者が誰もいなくなってしまうし、周囲が焼け野原じゃね。
っていうか、周囲の状況に気付いていないほどに、心も弱っていて、視野も狭くなってたってことなのかもしれないけど……ブルーベリー、万歳。
その全員で、村に残っている食料などを、できるだけ多く運びこんでいるものの、人間が乗るほうが大事だ。多くはそのまま残すことにしたらしい。
一応、軽トラに乗る人の希望も聞いたけれど、エイデンが飛んで運んでくれると話したら、みんなびびって乗りたがらなかった。まぁ、高いし、手すりがあるわけでもないし、怖いのはわかるけど……そこまで避けることなくない?
結局、元怪我人たちのうち10人ほどが軽トラの荷台、残りの人と老人たちは馬車、ということになった。ネドリは馬車組のまとめ役として行くらしい。
助手席確定のケニーは、荷台組に毛布を渡している。
「これ、皆さんで食べてください」
元々渡す予定にしていた燻製肉と乾燥野菜、ロールパンをネドリに渡す。ロールパンは大袋をまとめ買いしたやつ、燻製肉と乾燥野菜は、ガズゥたちのことがあってから、時間がある時に、少しずつ保存食として作っていたのだ(今、保存庫には何も残っていない。とほほ)。
それに、魔石入りのウォータータンクも2つ預けておく。1つは満タン。もう1つはけっこう使ったので足りるか心配したけれど、『収納』から取り出してみた途端、水がどんどん増えていくのにびっくりした。魔石ってこういう使い方ができるのか、と初めて知った。途中で補給する余裕があるかわからないので助かる。
「こんなによろしいんですか」
「いいです、いいです。私たちにはエイデンがいるので、すぐに着いてしまいますから」
エイデン曰く、猛スピードで帰れば3時間だという。普通、空の馬車で何事もなければ3,4日、人や荷物がある場合、移動には1週間かかるというのだから、どれだけ早いのよ、という話だ。
ちなみに、ホワイトウルフたちが一緒だと、もう少し時間が短縮していたらしい。馬、必死だったんじゃないの? とちょっと可哀想になった。
そのホワイトウルフたち。これからまたしばらく、彼らの護衛みたいなことをしてもらわなければならない。そのために、ビャクヤたちにはご褒美の先払いで、巨大なワイルドボアの塊肉を5、6個あげた。1個あたり、抱えるような大きさなのに、あっという間に無くなってしまった。
肉に満足したのか、盛大に尻尾を振りまくってるホワイトウルフたち。その中でも一際大きな体のビャクヤに抱きつく私。こっそり、「お願いね」と頼めば、大きな頭を私の身体にこすりつけてきた。大きいし、狼なんだけど、やっぱりかわいい。わしゃわしゃと撫でくり回しているうちに、馬車組の準備は済んだようだ。
「では、我々は先に行かせていただきます」
ネドリが頭を深々と下げたので、慌てて頭をあげさせる。
「たぶん、私たちの方が先に着くと思いますけど、焦らず気を付けて行ってください」
「はい。では、村の方はお願いします」
「はい」
周囲をホワイトウルフたちに囲まれた馬車が、ゆっくりと焼け野原を進んで行く。
きっと大丈夫、と自分に言い聞かせ、私は背後の村の方へと振り返った。