作品タイトル不明
第207話 山へ戻ろう!
街の壊れた門を出ると、スノーの背中に乗る。背後でギャースカ何か言ってるけれど、それどころではない。万が一にも、ガズゥたちに何かあったら、村から迎えに来る人達に申し訳がたたない。そのことだけが私の頭の中をぐるぐると駆け巡る。
街に向かうときの倍くらいのスピードで、森まで戻ってきた。おかげで、スノーの上にしがみついていた私はクタクタ。自力でスノーから下りられない始末。エイデンが、そのままでいろというので、素直に身を任せた状態だ。
「うむ。やはり、大丈夫であったな」
エイデンのどこか自慢気な声に、顔をあげる。
ビニールシートの上で、暢気に寝ているガズゥたちの姿に、ホッとする。
そんな彼らの周囲をホワイトウルフたちも寝ていて、そんな中、一際大きな身体は……珍しく、シロタエがいた。
「え、どうしたの? シロタエ」
『うふふ、ビャクヤが久しぶりにチビたちの面倒を見てくれるというので、追いかけてきましたの』
「え、やだ。ビャクヤってば偉い」
そう言うと、ちょっと自慢気になるシロタエが可愛い。
「ああ、そうだ。ここに冒険者とか来なかった?」
こうして寝ているんだから、誰も来てはいないのだろうけれど、一応聞いてしまう。
「いいえ。ここには来ておりませんわ」
「そっか、よかった」
私たちの会話に気が付いたのか、もぞもぞと子供たちが起きだした。
「買い物は終わりました?」
寝ぼけまなこで声をかけてくるガズゥ。
「うん、急ぎで買いたいものは買ってきたわ。他にも気になる物もあったけど、また来ればいいし」
魔道具の店の中を思い出すと、いくつか便利そうだな、と思った物があったのだ。機能がどこまでのものかはわからないけど。
「さっさと帰ろうか」
「はーい」
ガズゥたちがビニールシートを畳み始めた脇で、軽トラを『収納』から取り出す。これを魔物とかって勘違いするって、どうなのだろう? 確かにホワイトウルフみたいに白い車体ではあるけど。車の顔は、狼っていうより芋虫って感じ?
「五月」
「うん?」
運転席に乗り込んだ私にエイデンが声をかけてきた。彼はまだ車に乗ってこない。
「ちょっと寄り道してから戻る」
「うん?」
「ホワイトウルフたちを借りるぞ」
「え。あの子たちに何やらせるの」
冒険者のこともあるから、さっさと山に戻らせたいのに。ただでさえ、群れで動いてるのが問題になってたし。そのことも、後で彼らに言わなきゃいけないか。
「いや、何もさせないさ」
「……本当に?」
「ああ、こいつらにはね」
うわ。なんか物騒なこと考えていそうなんだけど。
『五月様には、私がついておりますわ』
「頼むぞ」
……勝手に話が進められてくんですけど。
結局、ホワイトウルフの半数(スノーを含む)がエイデンと一緒に残って、私たちは山へと戻ることにした。
「危ないこと、しないでよね」
「ああ、大丈夫だ(五月が俺を心配してくれてるっ!)」
嬉し気なエイデンに首を傾げながら、私は軽トラのエンジンをかけた。
* * * * *
五月の軽トラが去っていく姿を確認すると、エイデンは顔を引き締める。
「冒険者たちはどうした」
『どうもこの森の反対側からこちらに移動してきているようです』
「ふむ……奴らに山までつけられるのも面倒だ。少し遠回りして戻るぞ」
『はい』
エイデンは軽トラでできた轍の跡を、魔法でサッと消すと、五月達とは反対方向、隣国との国境へと向かうのであった。