作品タイトル不明
第186話 古龍と子供たちと人攫い
問いただす間もなく、エイデンたちが飛び出して行って、1時間ほど。
その間に、私たちは残された肉を切っては焼き、切っては焼き、これ以上は焼肉のタレにでも漬け込むしかないか、と、大きめのストックバックにタレを入れて、どんどん詰め込む。
本当は気になって仕方がないのだが、私が何か出来るわけでもないので、苛立ちを肉にぶつけまくっている。
結局、ストックバックがなくなってしまったのに、肉の方は、まだ4分の1くらい塊で残ってしまった。これはホワイトウルフたちにお裾分けするかな。
焼きあがった肉は、戻ってきたら食べさせてあげればいいか、と皿に山盛りになっていく。すっかりテーブルの上が肉だらけだ。
「もう、食べ終わったのか?」
「わ、びっくりしたぁ」
音もなく、背後からエイデンが現れるから、思わず声を上げてしまう。
特に息を切らしたわけでもなく、普通に現れた。
「子供たちは?」
「ホワイトウルフたちと一緒に戻ってくる」
「……何があったの?」
かなりエイデンに鍛えられていたとはいえ、ガズゥはまだ10歳の子供だ。マルとテオはそれよりも年下。ホワイトウルフたちが一緒でも、心配にはなる。
「……物騒な物言いをしている奴らがいたから、排除してきた」
エイデンの鋭い言葉に、びっくりする。
全然、人の声なんか聞こえなかったけど。そもそも『排除』って。何してきたのよ!?
「物騒な物言いって」
「……子供たちを見つけたとか、攫ってこいだとか、邪魔者は殺せとか?」
……何それ。
私にはそんな声は聞こえなかったけど、獣人の子供たちやエイデンには聞こえていたのか。あ、もしかして、今頃になって、子供たちを攫った連中の仲間が来たのっ!?
「あの子供らなら大丈夫だ。俺の訓練についてきてたくらいだからな。よっぽどのことでもないかぎり、そこらの人族には負けない」
「……そんなに、あの子たち強くなったの?」
「ああ。それよりも、その肉は食ってもいいのか?」
「え、ああ、いいけど、もうほとんど冷めちゃってるわよ」
「かまわない、温めれば済むことだ」
そう言ったかと思ったら、エイデンの手にした皿に山盛りになっている肉から湯気がたちはじめた。
「え」
「フフン、なかなか便利だろう?」
これも魔法っていうやつなの!?
人間レンジ、いやドラゴンレンジかよっ!
「ただいま~」
「おなかへった~」
「おにく~」
ガズゥたちの明るい声が聞こえたと同時に、慌てて立ち上がって彼らの姿を確認する。汚れ一つない彼らの様子に、ホッとする。エイデンもいっしょだし、ホワイトウルフたちもいる。わかっていても、やっぱり子供だから心配になるのは当然だと思う。
「おかえり、怪我とかはしてない?」
「大丈夫です」
「あいつら、よえーの」
「ほわいとうるふたちのおかげじゃん」
「まーなー」
ガズゥは真面目に答えてるけれど、ちびっ子2人はにやにやと余裕の表情。肉の載っている皿(エイデンにより温め済み)を受け取ると、そのまま猛スピードで食べだした。
人攫いたちがどうなったのかが、すごーく気になったけれど、食事の時に聞いていい話題なのか迷ったうえで、とりあえず、今ではないかな、と思った。
ちなみに、残った塊肉は、撃退につきあわせたお礼に、ホワイトウルフたちに振舞われたのはいうまでもない。