作品タイトル不明
第167話 サリーの秘密
稲荷さんの言葉に、考え込んでしまう。
「万が一、キャサリン様の家の者の方が先に来たとしても、望月様が認めない限り、この結界の中には入ってこれないでしょうから、それほど気にすることもないかもしれませんけどね」
「え? 来る可能性があるんですか?」
「あー、たぶん、あの小さい女の子の方なんですけど」
まだパンをむしゃむしゃ食べているサリーに目を向ける。ああ、口の周りにカレーがついちゃってる。のほほんと癒された気分で見ていたところに、稲荷さんから爆弾が投下される。
「いわゆるGPSみたいな力があるようですね」
「は?」
「まぁ、ノワールほどじゃないですよ? 特に『隷属の紋』が付けられていた間は魔力が枯渇していたでしょうから、公爵家でも把握出来てなかった可能性はありますがね」
「え? え? え?」
私が困惑しているところに、声を小さくして稲荷さんが教えてくれた。
「彼女の右肩の中に、魔石が埋め込まれているんです」
「……何それ」
「そんなに大きな物ではありません。さすがに、マイクロチップみたいな小さな物ではありませんが、おそらく親指の爪くらいの大きさの物が入ってますね」
「そんなの身体に入れて大丈夫なんですか」
「私の目で見る分には、問題はなさそうですね。よっぽど技術のある者がしたのでしょう。それだけ大事にされているとも言えるのでしょうが(自爆するような物騒なのじゃなくてよかったですよ)」
「それって、こっちでは一般的なことなんですか」
「……いいえ。それでしたら、キャサリン嬢本人にすればいいことですから」
なぜ、サリーに? という疑問は残ったものの、彼女たちを迎えに誰かしら来る可能性が出てきたことに、少しだけホッとする。
「まぁ、その迎えがどれくらいで来れるのかは、わかりませんけどね」
「こっちって、当然、車とかないんですよね?」
「はい。速さだけでいえば、 飛竜(ワイバーン) を使って飛んでくる可能性もありますけど」
「は?」
なんか、聞いちゃいけないようなワードがあったような?
「まぁ、公爵令嬢を迎えに来るなら、通常は馬車でしょうねぇ」
「ば、馬車ですか」
あの荒地のようなところを馬車で、となると、相当時間がかかりそうな気が。道らしい道も見えないし、ここまで無事に馬車が走ってこれるのか心配になる。
「それと、獣人の子供たちのほうですが、何か話を聞いてますか?」
「いえ、まだ、たいして話をしてません」
彼女たちのほうが弱っていたこともあって、ガズゥたちとちゃんと話をしていなかったことに気が付く。
「なるほど。では、少し彼らとも話をしてみましょう。もしよろしければ、その間に、彼女たちの世話をお願いします」
「すみません、助かります」
私はキャサリンたちのそばへ行くと、サリーの口元のカレーを拭きながら、今日は一日何をしていたのか、話を聞くことにした。