作品タイトル不明
第930話 花見を楽しむ
村の花見は、賑やかだ。
孤児院の子たちは、獣人たちやドワーフたちのところにお邪魔して、一緒に楽しんでいるし、今回の花見が初めてのチャーリー一家は、満開の桜の木が気になるようで、口をあけて見上げている。
ママ軍団のように地面に布を広げているところもあれば、折り畳み椅子にローテーブルのようなものを出しているところもある。
しかし、どこでも楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
この場にいないのは、冒険者ギルドの依頼を受けて出かけている若者たちや、糞エルフの後片付けで出かけているエイデンやノワールくらいだ。
エイデンやノワールは、後で嘆きそうだけど、それはタイミングの問題なので仕方がない。
――平和が一番よねぇ。
そんなことを思いながら、自分で用意した唐揚げを食べようとしたら、すでにお皿は空っぽ。
「は?」
すぐにセバスの姿を探すが、ヤツは子供たちを乗せて桜並木を歩いていた。食い気より子供たちを優先していることにビックリ。一緒にマリンもいるからかもしれない。
「あら、なくなっちゃったわ」
「もう、マナ、食べすぎなのよ」
「そういうラナだって」
「ハノエさんだって食べてたじゃない」
犯人はママ軍団だった。
「だって、サツキ様のカラアゲ、美味しいんですもの」
三人に声を揃えて言われると、悪い気はしない。しないけど……自分ももう少し食べたかった。
他にも皆で持ち寄ったおかずを食べていると。
『なんだ、なんだ、楽しそうではないか』
まさかの風の精霊王様、降臨。
「え、あ、はい。よ、よろしければどうぞ」
「ちょ、サ、サツキ様!」
「地べたには!」
慌てて座れるスペースを作ろうとすると、ハノエさんたちが慌てだす。
「え、ああ!」
さすがに私たちと同じように座らせるのはマズイか、と、タブレットから椅子を出していると。
『ほお、さすが異世界の花であるな』
『美しい』
『……酒をくれ』
なんと、火、水、土の精霊王様が続々と現れた。
そのせいで精霊王様たちがいるのが嬉しすぎる精霊たちの光が、ピカピカからビカビカになってて、眩しくて目を瞑ってしまう。
一方で、精霊王様たちの存在に慣れてるせいなのか、酔っ払い状態なせいなのか、村人たちはそれぞれ自分たちの場所に精霊王様たちを連れて行って、食べ物を渡したり、お酒を飲ませている。
ああ、さすがにチャーリー一家は固まってるか。
――もう、何も言うまい。
私は遠い目になりながら、ハノエさんが持ってきた串焼きにかぶりつく。
この肉はガズゥがパパ軍団と一緒にエイデンダンジョンでとってきた魔物の肉なのだとか。ハノエさんが嬉しそうに教えてくれた。
すっかり大人たちと行動をともにするようになったガズゥ。
大きくなったなぁ、と肉を味わいながら思う私なのであった。