軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五十七話 南方辺境伯の不可解な断罪3

「さっさと片付けて王都に帰りましょう」

俺はイライラしてクローデリアに言った。

「あら、ユウマはここが嫌いなの?」

「ええ、何か薄気味悪いですし、辺境伯は嫌がらせばかりしてきますし」

「あら、私はこの辺境は美しい土地だと思いますし、セドリック様もとても良い方だと思いますけれど」

王都の公爵令嬢が、そんなこと言うとは意外だが……相変わらず、おかしな感性だ。

俺たちは一軒ずつ家を回りはじめた。

どの家も簡素な薄い板を申し訳程度に組み立てたような家で、強い風が吹いたら簡単に飛ばされそうに見えた。

木々も植物も少ないので、土地もきっと痩せているのだろう。近くに川も無さそうなのだが、辺境伯はどこからあんな川魚を持ってきたのだろうか。

いずれにせよ、こんな場所を住処にすること自体が間違っているように思える。

すでに辺境伯から話が通っていたようで、村人たちは協力的だった。

ただ、どの村人も痩せ細っており、困窮具合が容易に察せられた。

俺はとても嫌な想像をしてしまった。

——子ども食べちゃったのでは?

「何か仰いましたか?」

住人の村人が不審そうに尋ねてくる。

「な、何でもないですよ」

と答えてはみるものの、もし各家庭で子どもが食卓に乗っていたとなると、犯人が量産されてしまうのでは……? そして、村人たちは俺たちも食おうと考えるのでは、という恐怖に襲われ始める。

が、俺には「剣姫」クローデリア様がついているから大丈夫だ。

心を奮い立たせ、スキルの準備をする。

罪状は「子ども誘拐犯」に設定だ。

「ちょっと石投げさせてもらいますね。『断罪の石投げ《コンデム・ストーン》』」

俺の手から石が放たれ、村人に当た……らずUターン。

クローデリアが俺に当たる前に剣で石を弾いた。

ひとまず安心だ。少なくともこの村人は子どもを食ってはいない。

それからも俺は恐怖と戦いながら、クローデリア様の加護を頼りに石を投げ続けた。クローデリアは黙々と俺のために石を弾き続け、(たぶん)俺に危険が及ばないかと目を利かせてくれた。「剣姫」は本当に頼もしい。

しかし……犯人は一向に見つからなかった。凶悪犯どころか、妙に親切な村人が多く、「遠いところからわざわざ来てくれてありがとう」と、少ない備蓄の食べ物を分けようとする村人ばかりだった。拍子抜けだ。

そして、あっという間に最後の一戸となった。

本当に小さい村だな。

最後まで当てられなかったのは、相当なクジ運の悪さではあるが、「最後の一戸」ということは犯人がいる可能性が極めて高いということだ。凶悪犯である可能性もあるので、警戒を怠ってはいけない。

「クローデリア様、どうか俺をお守りください」

「ふふ、任せて。ユウマのことは必ず守るから」

クローデリア様、一生信奉させていただきます。

「では、行きますよ。犯人確保ぉー」

勢いよく家の扉を開くと……そこにいたのは明らかに寝たきりの老婆だった。

いや、実は寝たきりのふりをした魔物かもしれない。念のため「断罪の石投げ《コンデム・ストーン》」。

石は何事もなくUターンし、俺に向かってくる。そして俺に当たった。いてぇ。クローデリア様、守ってくれる約束は?

「大丈夫ですか?」

クローデリアは老婆に駆け寄っていた。

老婆は意識があるのかどうかも定かでなかった。

「このままではこのおばあさんは亡くなってしまう……」

クローデリアは涙を流していた。

泣かないでくれ、クローデリア……俺も泣いてしまう。魔物かと疑ってすみません。

しかし、医師でも聖女でもない俺たちにはどうしようもない。いかに「剣姫」が強かろうが、死にゆく人を癒すことはできないのだ。俺の断罪スキルなど言わずもがな。人を攻撃することしかできない「 断罪(ヴァーティクト) の刃(・ブレイド) 」の何と無力なことか。

そして……犯人は村人の中にはいなかった……。

ということは……やはり神隠し……。

「まだ一人だけ石の標的になっていない人がいるわ」

涙を拭い、クローデリアが立ち上がった。