軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二十九話 大捜索作戦(後編)

宰相ジークフリートの号令により、各冒険者パーティーは聖女の捜索に向かうことになった。

ジークフリートの指示で、「断罪の刃」パーティーを中心に索敵を行い、勇者パーティーや他の有力パーティーが同行する。それ以外のパーティーはそれぞれに異なる地域の捜索を任された。

「なぜこんなモブ平民に勇者がついていかねばならんのだ」と勇者が喚いて猛反発したが、ジークフリートの宰相命令で、頑として聞かなかった。

よほど俺は勇者に嫌われたらしい。ジークフリートも余計なことしやがって。

「断罪の刃」の索敵担当の俺が先頭を歩き、王都の町を進むべく、広場に背を向け歩き出す。

王都中を歩いて、俺のスキルで犯人を探し出し、腕っぷしに覚えがある冒険者たちが取り押さえるという算段だ。相手の戦力は未知数だが、「仮面」の人物の動きを見た限り、相当な手練れであることは間違いない。

俺のスキル「 断罪の石投げ(コンデム・ストーン) 」は、犯人が俺の前後左右で視認可能な範囲内にいればその犯人に石が飛んでいくが、犯人がいなければ、石は俺に向かってくる。

犯人がすぐに見つかるわけがなく、俺が石を受け続けると、防御力もHPも低い俺はそのうち死んでしまうことが想定されるので(あと痛いのも嫌なので)、「剣姫」クローデリアが俺に当たる前に石は弾いてくれることになっている。

そしてさっそく俺は罪状の「聖女誘拐犯」を設定し、最初の「 断罪の石投げ(コンデム・ストーン) 」を発動する。

さて、犯人が見つかるまでどれだけかかることか……

俺の手から放たれた石は、案の定、宙でUターンし、俺に向かってくる。

クローデリアが石を弾くべく、剣の柄に手をかけ石を弾……かない!

なぜー!?と思ったら、石が俺の頭のわずか上を、念のため巻いていたターバンを掠めながら通過し、背後に飛んでいった。

振り返ると、あの勇者が俺の真後ろに立っていた。その足下には、俺の投げた石が転がっていた。

「……おい、モブ平民、何のつもりだ?」

勇者が俺を睨み、詰問する。痛がらないところを見ると防御力が高そうですね。さすが勇者様。

俺はゆっくりと後退して勇者と距離を取り、クローデリアの後ろに隠れた。

「それはこちらのセリフです。勇者様、いったいどういうことですか?」

クローデリアが尋ねる。

「何がです、クローデリア様」

勇者は今度はクローデリアをギロリと睨む。

「ユウマの石が当たったということは、あなたが聖女誘拐に関与したということです」

「何の言いがかりですか? そのモブ平民の石が何だと言うのです。こっちは腹が立ってんだ」

勇者の顔が怒りに歪み始める。

「何の騒ぎです? さっさと捜索に行ってくださいよ」

そこに間の悪いことに宰相ジークフリートが近づいてきた。

「その勇者に俺の 断罪の石投げ(コンデム・ストーン) が当たったんです」

俺がそう申告すると、「へ? えっ?」と、ジークフリートが変な声を上げる。

「勇者ソウマが? バカな」

「本当です、ジークフリート様。このクズ平民が勇者である僕のこの美しい顔に石をぶつけたのです。即刻処断させてください」

自分で認めちゃったよ……

「と、取り押さえるんだ!」

ジークフリートが指示を出すと、冒険者たちに視線が俺に集まる。

「違う! ユウマじゃない。勇者ソウマだ。そいつが犯人だ!」

ジークフリートが急いで指示を訂正する。

一人の筋骨隆々の男が勇者を睨む。

「こいつ、勇者だからっていつも偉そうにして、気に食わなかったんだ」

俺以上にモブっぽいセリフを吐いて見事なフラグを立てる……が、明らかに俺より強いことだけはわかる。

「少しくらい痛めつけてもいいんだよな」

筋骨隆々男がさらにフラグ発言を重ねる。

「ああ、構わん。絶対に逃すな」

ジークフリートもフラグってわかってて言っているのか!?

すると筋骨隆々男がバトルアクスっぽい獲物を手に勇者に襲いかかった。

明らかに「痛めつける」以上の殺意のある斧の一振りが、勇者ソウマの脳天に落ちる……までもなく、ソウマが剣を一閃すると、筋骨隆々男はその場に倒れた。フラグ回収。

勇者は普通に強いらしい。

他の冒険者たちがたじろぐ中、我らがクローデリア様が前に進み出る。

そのとき、ソウマが脱兎のごとく走り出し、ジークフリートの背後に回り、首元に剣の刃を突きつけた。

その動きは聖女エリシアを誘拐したあの仮面の人物そのものだった。

「クローデリア様、お下がりください。悔しいが、あなたのステータスはすさまじい。僕が敵う相手じゃない。宰相を人質に、ここは逃げさせてもらいます」

宰相ジークフリートは王政府を支える重要な人物だ。人質に取られたら手が出せない。クローデリアもやむを得ず、剣を鞘に収める。

しかし同時に、ジークフリートは俺の上司でもあり、こいつが死ねば、俺の日頃の鬱憤が晴らされ、「断罪結社」も解散し、俺はただのモブ平民に戻れるのでは、という思いも首をもたげてくる。

うん、やってしまってください、勇者様。

「それからモブ平民、おまえは想像を絶する残酷な方法で殺すから覚えておけよ」

くそっ!

「無駄ですわよ。もうあなたは射程圏内よ」

その時、「剣姫」クローデリアが収めた剣の柄に再び手をかけた。よし、宰相も死んで、勇者もやられてしまえ!

「 静寂の(サイレント・) 宣告(センテンス) 」

クローデリアがそう言ったかと思うと、勇者が突然何も言わずに倒れた。

え? 何? 勇者弱っ。

「峰打ちです。殺してはいません」

宰相は? ……無事か……くそっ。役に立たん勇者だ。

「これが『剣姫』……すさまじい太刀筋だ」

冒険者たちがざわつき、気づくとそれがクローデリアを讃える喝采に変わっていた。

俺は太刀も何も見えませんでした。居合い抜きみたいなスキル使ったってこと?

だが、クローデリアが恐ろしく強いことだけはわかった。推察するに、協調性がないために複数人で対応する案件を取れないからS級になれていないだけなのだろう。

「ステータスだけでは見えないことも理解することね。あなたはユウマの力も私の力も……いえ、『断罪の刃』の力を見誤ったのですわ」

かっこよく締めているところ申し訳ないのですが、勇者は気絶しているようです。あと「断罪の刃」は役目を終えたと思うので、この後解散を申し出るつもりです。