軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12

時が過ぎるのは早いもので誕生祭から3週間が経った。

久しぶりに家にやって来たアーノルドを玄関で出迎えると「シェリ~」と気の抜けた声で呼ばれたぎゅっと抱きしめられる。うれしくなって抱き合っていると複数の咳払いが聞こえてアーノルドが離れる。

シェリルの部屋に入るとアーノルドが待ちきれないとばかりに話し出す。

「やっと新型馬車が完成したんだ! 副所長とやりあって長い休暇もとってきたしどこでも出かけられるぞ」

「わあ、やったあ!! お疲れ様、アル。まずはゆっくり休んでね」

「ありがとうな。でも、シェリと出かけられる体力は余裕で残っているから大丈夫だ。むしろそれが休みだ。新型馬車なら揺れが少ないから快適に移動できるし、行きたいところを全制覇できるぞぅ」

きりっとした顔のアーノルドに笑う。

「新しい馬車に乗れるなんてうれしいな。どこがいいかな?」

「そうだなあ。来週だけれど王立芸術館なんてどうだ? この間の誕生祭で使った魔道具のレプリカが展示されるらしい」

「わあ、本当!? 見たい行きたい」

ダンスホールの天井いっぱいに映った万華鏡の映像は、まるで色とりどりの花が咲き誇る花園に立っているようで。シェリルの夢に何度も出てきた。特等席を用意してくれたコーディにお礼を言いに行くと「ラスカと幸せにな」と祝われてうれしかった。

それに、とちくりと心が痛む。

あの後、パールディアは急に体調を崩したとしてブラーゼ伯爵父子と一緒に退出し、病気療養として領地に送られたそうだ。王城での一件を耳にした父曰く「不治の病だから領地から出すことはない」とのことだ。

悪意を持って自分を貶めようとした相手にやり返すためとはいえ悪意をぶつけるのは自分も傷つく。もう二度と彼女と会うことはないと思うとほっとした。

ヴィンセントとの思い出が遠い昔のことに感じられるように、彼女のこともいつかは「こんな人がいた」という記憶になるのだろう。

「そういえば、先輩におすすめスポットをまとめた地図をもらってきたんだ、ほい」

「わあ、こんなに大きいのにすごく細かく書いてある。イラストもついていてすごくわかりやすいわ」

「だよな、先輩はこういうのが好きだからなあ。将来は王国中を歩き回って地図を作りそうだ」

アーノルドと顔を寄せてテーブルに広げた地図をのぞきこむ。ふと思いついてアーノルドにくっつくと彼も身を寄せてくる。彼の少し伸びた髪が当たってくすぐったくてくすくす笑う。

――これからもこうして1つ1つ幸せを見つけて行こう。

シェリルとアーノルドはぴったりくっつきながら、これからの楽しい予定を話し合った。