軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

受付嬢二年目編・10-4

「と、とにかくナナリー、素知らぬ顔で接客するわよ」

「ニケが立ち直った」

「どきまぎしてたら駄目よ、逆に怪しまれるわ」

どぎまぎしていたのはニケのほうであるが、私は分かったと首を縦に振る。

確かに不審な動きをしているより、このまま自然に接客していたほうが紛れるだろう。むしろ私は知り合いという知り合いも騎士団にはいないので、ニケのほうが大変だ。

またよく見られなければニケだということも分別がつかないはずだ。

なにより聞かれてもシラを切りとおせばいいし、彼女に至っては団長には許可をとっているのでバレてしまっても事情を考慮してくれるだろう。

私達は徐々に壁際へと寄って、待機場所である樽の横に足を落ち着けた。

「騎士団来たけど大丈夫!?」

騎士達を席へと案内していたキャンベルが、騎士団に所属しているニケの身を心配して早足で近づいてきた。すまなそうに両手を合わせていた。

ベンジャミンはどうしているだろうと店内を見回せば姿がなかったので、また御手洗いで魔法をかけ直しているのかと察する。

未だサタナースは来ていない。

色々重なってしまった現状に、ニケがハァと小さく溜め息をついたのが分かった。

「ナナちゃんかニケちゃん! こっちでお酌してくれるかい?」

男の人に名前を呼ばれた気がしたので、カウンターのほうへと顔を向ける。

「こら、あの子達は売り女じゃないんだよ」

「いやだな~ウェラ、ついでもらうだけだって。いいだろ?」

「ったく仕方ないね。ナナちゃーん! こっち!」

ウェラさんに呼ばれた私は、刺肉を先程のお客に届けたあとカウンターへと急ぐ。

「何でしょうか?」

名指しで何用かと聞けば、なにやらお客さんが若い子にお酌をしてもらいたいとのことで、カウンター席に座るその男性へとお酒を注ぐこととなった。

顔も既に赤くこれ以上飲んで大丈夫なのかと心配になるが、いつもこの人はこうなのだとその隣に座っていた連れだか常連客だからしき人に言われたので少し安心する。

これは対人仕事だ。

いつもの受付の仕事の要領でこなせばなんてことないはず。

――チリン。

「はーい、いらっしゃいな」

またお客さんが入って来たのか、扉の鈴が鳴った。

「カウンター席は空いてる?」

「え? ああー構わないよ」

「ありがとう」

私は反対側を向いているので入ってきた人を認識できないが、どうやらこのカウンター席についたようである。

「おおっと溢しちまったや」

「服大丈夫ですか?」

お客さんがお酒を少し溢してしまったので、指先を向け呪文を唱えてテーブルを綺麗にした。服にもついてしまっていたのでそれも綺麗にする。

「あんた、きっれぇーな顔してるねぇ。騎士ならドルモットんとこ行ったほうがいいんじゃないかい? 団長さんがこっちにいるっても、楽しめないだろうこんなとこじゃあ」

「いいや、今日はこういう綺麗な所で飲みたかったんでね」

「あら、お疲れなのかい?」

「ウォールヘルヌスに出る出ないで揉めましたもんね、隊長」

隊長。

その誰かの言葉がやけに耳についた。

「ウォール……ああ! あれかい? そういや騎士団も出るみたいなことになってるんだろう?」

「まぁね。本当なら開催自体やめにしてほしいくらい」

首をそちらへ向けようとするも、身体が拒絶反応を示しており中々向けない。

あの声。

この声。

その声。

ついに声だけで奴を判別出来るようになるとは。

我ながら大した能力である。魔法より凄いかもしれない。

「お兄ちゃんは開催に反対なのかい?」

「そうだね。あまり好ましくはないかな」

カウンターの後ろにある棚の硝子の扉をそっと見る。

そこを見れば席にいるお客さんの顔が硝子越しにだいたい見えるのだが……。

私は一瞬でここから消えたくなった。

「なんで」

金髪の男。

髪はまた切ったのか珍しく肩上で、長めなのは変わらないがスッキリとしている。

騎士服の胸元は気持ち少しはだけさせており、少々ダラしのない格好。

そしていつかのように銀縁の眼鏡をかけている。

アルウェス・ロックマン。

奴が呑気にそこで兎鳥の揚げ物を食べていた。