軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

半精霊化の儀式。

ガディエルの半精霊化の儀式を行うと、エレンはオリジンと共に城の地下へと連れてこられた。

そこにはすでに双女神とアーク、そしてロヴェルが待っていた。

エレン達に気付いた双女神が、こちらに向かって手をヒラヒラと振っている。エレンとオリジンも手を振り返した。

地下の中央には巨大な真っ白な魔方陣と、台座のようなものがあった。

扉が開いた瞬間、この締め切られた空間を見てエレンはアークが囚われていた学院の地下を思い出してしまって少し顔色が悪くなる。

だが、意外にもエレンの足は台座へと進んでいた。

魔方陣が発光しているのもあるが、双女神の境界のように一面が真っ白でとても明るかったからだろう。

部屋が暗かったら、きっと躊躇していたに違いない。

「ロヴェルの時を思い出すわねぇ」

ヴァールがそう言いながら手を動かすと、台座の少し上の部分がさらに光った。

次の瞬間には寝かされたままのガディエルの身体が宙に浮いたままの状態で台座へと安置される。

ガディエルの周囲には結界が施されたままだった。

真っ白な顔のまま眠りについているガディエルを見て、エレンは思わず駆け寄った。

「エレンちゃん、大丈夫よ」

からからと笑いながらヴォールがエレンの両肩に手を置いた。

「これから半精霊化が始まるのか……」

眉間に皺を寄せたままのロヴェルがぼそりと呟いた。

己の身体もこうして半精霊化したのかと思うと、やはりどこか複雑な気持ちになるのだろう。

「ロヴェルの時は大変だったのよ。オリジンちゃんがいつまで経っても泣いたままだったし」

「そうよ~。身体がボロボロだったから、一から素体を作る羽目になってしまったわ」

「……素体?」

怪訝な単語にロヴェルがぴくりと反応する。

「わ、わわわ……!」

エレンは慌てた。ロヴェルは自分の身体のほとんどを造り替えられている事を知らないのだ。

オリジンはあえてロヴェルに伝えていないので、ここでバレていいのかとエレンは慌ててオリジンやロヴェルを交互に見る。

「あなたの身体、モンスターテンペストでボロボロだったじゃない」

「そうよ、あなたの身体を修復させるの大変だったんだから」

「……修復させたのならば、素体というのは? 殿下の身体も素体を使うのか?」

「素体とは魂の入っていない精霊の身体のことよ。身体から一度離れた魂は、もう身体にくっつかないの。だから元の身体を器にして、新たに身体を作らなければならなかったの……」

しゅんとしたオリジンの告白に、ロヴェルはきょとんとした顔をした。

そして自分の身体を見下ろして、何か合点がいった顔をした。

「そうか! だから歳をとらなくなったのか!」

「父様、そこですか!?」

もっと深刻な事態になるかと思っていたエレンが思わず突っ込む。

すると、意外にもオリジンもきょとんとした顔をした。

しだいにうるうるとオリジンが泣き出す。これにロヴェルとエレンが驚いた。

「わ、わたくし……勝手にロヴェルの身体を……」

「ああ、そういう事か。……オーリ、おいで」

ロヴェルが泣いているオリジンを抱き寄せておでこにキスをした。

「俺はオーリと一緒にいられるのならば、何をされても構わないよ」

「ロヴェル……」

「オーリのお陰で母や弟とまた会えたし、それにオーリは俺にたくさん家族をくれるんだ。あの時の俺はもう、全てを諦めていたんだよ。こんなに嬉しいことはない」

「…………」

「オーリ、君の隣にいさせてくれてありがとう」

「う……あなた~~!」

抱き合う二人の姿を見て、エレンはホッとした。

後ろめたかった思いがあった分だけ、オリジンもすっきりとした顔をしている。

(隣に立つって……素敵だなぁ……)

自分もこういう夫婦になりたい。そう思った瞬間、自分の頭にとある図が浮かんでエレンはボッと顔を赤らめた。

(わー! わー! わー!)

妄想を振り払うかのように、エレンは頭を左右に振った。

ふと顔を上げれば、ヴォールと目が合った。お見通しだと言わんばかりににやりと笑われる。

(わああああああああ!)

「ふふふ、エレンちゃんったら可愛いわ!」

がばりとヴォールに抱きつかれて、エレンはその豊満な胸に埋もれた。

「むぎゅううううう」

「あら、良いわね~わたくしもエレンちゃんをぎゅうってしたいわ!」

「エレンちゃん、抱き心地がとてもいいわね。すっぽり埋まるの!」

「あらほんと!」

ヴァールまできた! と、エレンは思わずアークに助けを求めようとした。

しかし肝心のアークは待ちくたびれたのか、こくりこくりと船をこいでいる。

(寝てるぅ!)

窒息死……! そんな言葉が頭に過った瞬間、ロヴェルの手によって解放されたエレンはぜえはあと息を吐いていた。

「油断も隙もない!」

「あ~ん、エレンちゃん!」

「ごめんなさいね、エレンちゃんが可愛くてつい」

双女神はふふふと笑う。

エレンはロヴェルの背中に隠れて双女神を警戒した。

「ああん、まさか嫌われちゃった……!?」

「そんな、エレンちゃん……!」

「うう……殺されるのかと思いました……」

「あーん、ごめんなさい!」

「もうしないわ!」

「ええい、お前らエレンに近付くな! この堕女神どもが!」

がるるるるとエレンを守ろうとするロヴェルを見て、泣いていたオリジンが微笑ましそうに笑っているのにエレンは気付いた。

(よかった……)

憂いなど無い方がいいに決まっている。

ロヴェルにガミガミと怒られている横で、本当に寝の体勢に入ろうとしていたアークをロヴェルがたたき起こした。

そこでアークが「まだ……?」と目を擦ったので、さっさと終わらせようとロヴェルが手を叩く。

「オーリ、君の身体は大丈夫なのか?」

「ええ、皆が手伝ってくれるわ」

「そうか……無理はしないでくれ。殿下の事など二の次でいいんだ」

「父様ーー!」

怒るエレンにロヴェルは飄々としている。

それを眺めていた双女神がため息を吐いた。

「エレンちゃんの命の恩人なのに」

「本当。自分勝手な人」

「お前らに言われたくないぞ!?」

双女神に噛みつくロヴェルを無視して、オリジンと双女神は術を開始する。

オリジンの中心で幾重もの魔方陣が展開されていくのを、双女神が支えるようにして補佐していた。

それを見て、今度はアークが周囲の魔素の力を集めて手助けをしているらしい。

エレンが見えるのは力の動きのみで、一体どんなことをしているのかは分からなかった。

しばらくその状態が続いたと思っていた次の瞬間、オリジンの周囲にあった魔方陣が全てガディエルの身体に吸い込まれていった。

そして次にオリジンが宙に両手をかざすと、虹色のシャボン玉のような光輝く塊がふわふわと現れたのに気付く。

虹色は光の干渉だと分かっているものの、どこかで見た色合いにも見えた。

「エレンちゃんに守ってもらっているわね」

「ふふふ」

虹色の光を見て、双女神が楽しそうに笑っている。

しかしその言葉に隠れたものにいち早く気付いたロヴェルが、首を捻って眉間に皺を寄せていた。

しかし声を荒げてオリジンの邪魔をするような真似は出来ないと思っているようで静かではあったが、エレンは落ち着かない。

(もうーー!)

エレンは顔が赤いやら青いやらよく分からない顔色になっている。

双女神がくすくすと笑っていたので、明らかにエレンの力だと気付いたからだろう。

あの七色に光っていたものが、エレンと契約して繋がったガディエルの魂なのだ。

ガディエルの魂が、横たえられたガディエルの胸のあたりにすうっと吸い込まれて消えていく。

すると、何かの欠片がはまったような『カチリ』という音が聞こえた気がした。

光り輝いていた魔方陣がふわりと消え、ガディエルを覆っていた結界も消滅した。

「ふう……」

一息吐くオリジンの声に、エレンは思わず「終わったのですか?」と聞いた。

「ええ、終わったわ。あとは目を覚ますだけよ」

オリジンの言葉に、エレンもホッと胸をなで下ろした。

「オリジンちゃん、お疲れ様! ロヴェルは目覚めるのにここから一年はかかったけれど、おぼっちゃんはどうかしら?」

「え……そんなにですか……?」

「あら、言ってなかったかしら?」

「えっと……半精霊化が半年後……あっ」

そうだった。オリジンの出産を待ってガディエルの半精霊化が行われるということだ。

確かにロヴェルの時も、目覚めるのに一年ほどかかったと聞いている。

エレンはしゅんと落胆してしまった。

(すぐお話しできると思ってたんだけどな……またドリトラに頼まなきゃ)

そんなエレンの顔を見たロヴェルが、何かを察知したような顔をしていた。

まさか、自分の娘に限ってそんな……と複雑そうな顔をしている。

ロヴェルの様子に双女神が「あらあら」と声をもらした。

「本当、エレンちゃんに関しては鋭いわね」

「むしろ半年もよく隠し通せたと思うわ……」

そんな双女神の言葉に被されるように、男性のうめき声がした。

「え?」

エレンは慌ててガディエルの側へ駆け寄った。

これにはオリジン達も驚いていたようだ。

「あら……まさかもう?」

「う……」

ガディエルの眉間に皺が寄る。目を開こうとしていたが、部屋がまぶしいようで目を開こうとしてうめいていた。

「おぼっちゃんの身体は無傷だったから素体は最低限で済んだのだけど、まさか魂の定着がこんなにも早いとは思わなかったわ」

術を施したオリジンも驚きが隠せないようだった。

現にロヴェルの時の様に、髪色が変わったなどという変化は見られない。

そうった変化がなかった分、ガディエルの目覚めが早かったと思われる。

「……エ、レン?」

「ガディエル!」

エレンがガディエルの手をひしと摑むと、それを支えにガディエルはうめきながらも上半身を起こす。

「目が……」

「目? 目がどうしたの? まぶしいの?」

「世界が……」

ぼんやりとしたガディエルの声にエレンが心配になっていると、ガディエルの目が次第に開かれていった。

「まあ!」

「あらあら!」

双女神の驚きも無理はない。ガディエルの目が、エレンと同じように七色になっていたのだ。

ただ、ガディエルの元の目の色が影響しているのか、青みが強い気がする。

「…………どういうことだ?」

ガディエルの目を見たロヴェルから、地を這うようなとても低い声が聞こえた。