軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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ベイマールの町から、遺跡と反対方向へ馬車で三十分。

農村地であるエッピカは、低い山に囲まれたのどかな村だった。

不動産屋の店主ガスパーナの言った通り、見渡す限り畑しかない。民家もぽつりぽつりと点在するだけで、隣人に会いに行くにも十分以上歩かなければいけないほどだ。生活するには見るからに不便そうなところだった。

逆を言えば、人目を避けて生活するにはうってつけの場所とも言えるだろう。

「本当にこんなところにフロレンシア姫がいるのか?」

アランが訝しがるのも当然だ。一国の姫が生活するにはあまりに不似合いで、きらびやかな城で世界で生きてきたフロレンシア姫が耐えられるとは思えない。

ジュール国王からの返事はまだ来ていないが、悠長に指示を待ってもいられないので、オリヴィアとサイラス、そしてアランは、護衛官とザックフィル伯爵領の兵士を借りて、フロレンシア姫とレギオンの身柄を確保するためにエッピカに向かっていた。

町を出てすぐに舗装されていない道が続くので、馬車がガタガタと激しく揺れて、アランは先ほどから機嫌が悪い。馬車が揺れて危ないからという理由でオリヴィアをしっかりと抱きしめているサイラスを睨んで、「危険かもしれないならオリヴィアをおいてくればよかっただろう!」と文句ばかり言っていた。

「それにしても、こんな農村地に家を買うなんて……オリヴィア、よくわかったね」

アランの文句を綺麗に無視して、サイラスは腕の中のオリヴィアに訊ねた。

オリヴィアは、アランではないがここまでしっかり抱きしめる必要があるのだろうかと思いつつ、恥ずかしくてうつむかせていた顔を上げて頷く。

「わたくしならどうするか考えてみたんです。すぐに目的地に移動したら目立つでしょうし、捜索の目も厳しいでしょう? だからほとぼりが冷めるまで人目につかない場所で、かつ普通に考えて捜査の手が伸びないだろうところに身を隠しているのではないかと。アラン殿下もおっしゃったとおり、一国の姫がこんなところにいるとは、誰も思わないはずですから」

「それはまあ、確かに」

「普通に考えたら、部屋の中で侍女や護衛官が倒れていたら、物取りか誘拐を疑うでしょうし。誘拐犯がこんな目と鼻の先の農村地でのんびりしているとは思わないでしょう」

「……まあ、アームワールにしても、お前がいなければ気がつかなかっただろうからな。俺たちだけだったら単純にフロレンシア姫が誘拐されたか何らかの事件に巻き込まれたと判断して、ベイマールの町を片っ端から捜索して回っていただろうよ。……そんなことより、馬車の揺れは少し落ち着いてきただろう、いつまでいちゃついているつもりだ!」

「い、いちゃつ……」

オリヴィアは真っ赤になった。

相変わらず道は舗装されていないが、馬車の揺れは先ほどよりも落ち着いていた。速度も落ちているので、目的地に近くなったのだろう。このあたりは似たような場所ばかりで、地図を頼りに探していくしかないので、速度を落として一軒一軒確認していくしかない。

サイラスが仕方がなさそうにオリヴィアを開放して、馬車の窓から外を眺めた。

オリヴィアたちが到着する前に、数人の兵士が先行してフロレンシア姫がいるだろう家に向かっている。オリヴィアたちが到着するまで中に入らないように告げているが、オリヴィアたちが近づいたことで気がつかれた場合、最悪二人の身柄を確保していいとは伝えているが、姫と一緒にいるだろうレギオンは相当腕が立つそうだ。できるだけ早く合流したい。

「どうやらついたみたいだよ」

サイラスがそう言った十数秒後、馬車がゆっくりと停車した。

馬車が通れる道はここまでだ。ゆるい坂の上に一軒の小さな家が見える。人がギリギリすれ違える程度の細い道が家までジグザグに伸びていた。

「オリヴィアは馬車の中で待っていて」

サイラスとアランが馬車を降りて、念のためコリンにオリヴィアのそばについているように告げてから、二人は兵士たちに続いて坂道を登っていく。

二人が坂を上ってしばらくして、一人の兵士が坂道を駆け下りてきた。

どうやら、家の中にいたフロレンシア姫とレギオンを、無事に確保したらしい。

オリヴィアはほっと胸を撫でおろして、サイラス達が戻ってくるのを待った。