軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

118:芋くさ夫人の元婚約者は今

ヤラータは後悔していた。

自分が婚約から逃げ回っていたアニエスが、今や国内で知る人ぞ知る、美人で心優しく優秀な貴族の夫人として名を馳せているからだ。

彼女は夫のナゼルバートと協力し、辺境スートレナの人々の生活を立て直し、いち早く第一王子だったベルトランに味方して元王妃を追い落とした。

今では、国内で誰よりも現国王夫妻と良好な関係を築いている。

「それに比べて……」

自分はどうだろう。

ルグレ伯爵家は第二王子の派閥だったため、元王妃派や王女派の貴族ほど憂き目は見ていない。

だが、私生活には問題が山積みだった。否、もはや山は雪崩を起こしつつある。

その筆頭は、芋くさ令嬢ことアニエスの代わりに結婚した妻、ハリエットの存在である。

なんとこの妻、ありえないほどの浪費家だったのだ。

ヤラータとの結婚も、ルグレ家の財産を狙ってのことだったらしい。

相手が芋くさ令嬢なら、婚約者を奪えると判断し、彼女はあのパーティー会場へ乗り込んできたのだ。

(その判断は、大正解だったわけだが)

ヤラータは芋くさ令嬢から逃げ回り、見事美人で清楚な婚約者を得た。

……と思っていたのに。

今更どうにもできないことだが、選択を誤ったのではないかと、うじうじと考え込んでしまう。

あのとき、素直に芋くさ令嬢と結婚していれば、今頃幸せに暮らせていたのではないだろうか。

おまけに、妻のハリエットはめちゃくちゃ性格がきつい。

怖すぎて、ヤラータは彼女に一切逆らえないのである。

パーティー会場での彼女は完璧な猫を被っていた。

あれから六年、ハリエットはさらにたくましくなり、横幅も増え、最凶の伯爵夫人に成長しつつある。

もう誰にも彼女は止められなかった。

たまに新聞でスートレナ領主夫妻の仲睦まじい話題が目に入るたび、ヤラータは涙で目の前をにじませながら、がっくりうなだれるのであった。