軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

104:罪人の皆さんの処遇について

翌朝、私とナゼル様はベルトラン殿下に呼び出された。

第一王子が自ら客室まで来たのには驚いたが……よく考えるとベルトラン様なので、なんでもアリなのだと思う。

「昨日の今日ですまないな。事の顛末を説明するから謁見室までついてきてくれ」

「謁見室ですか?」

ナゼル様の言葉に、ベルトラン殿下はこくりと頷いた。

「陛下からも話がある。アニエス夫人も来るといい」

私とナゼル様は顔を見合わせ、ベルトラン殿下のあとに続いた。

そうして、謁見室へ足を踏み入れる。

こんな場所に来たのは初めてなので、私は緊張で全身がガチガチに固まっていた。

「アニエス、大丈夫だよ」

慣れた様子のナゼル様が抱き寄せてエスコートしてくれる。

謁見室内にはラトリーチェ様やレオナルド殿下もいた。

当然だけれど、王妃殿下、王女殿下、ロビン様はいない。

青色の絨毯が伸びる部屋の奥、玉座に腰掛けた陛下が私たちを見て立ち上がった。

「よく来たな、二人とも。此度はご苦労であった。王妃の悪事、王女やロビンの罪も明るみに出て、国の危機はひとまず救われた」

陛下の言葉に、ベルトラン殿下がツッコミを入れる。

「何言ってんの、陛下。元はと言えば、アンタが頼りないからこんなことになったんでしょ。最初から威厳を持って王妃を止めていれば、ミーアもロビンもあそこまで増長しなかった」

「うう、面目ない。でも儂には無理だ……王妃も両公爵家も常に儂の動向に目を光らせておったからな。少しでも何かあれば消されていたかも知れん。だから、お前たちに裏で動いてもらったのだ。レオナルドのことは警戒していたようだが、ベルトランは完全に盲点だっただろうよ」

「まったく……面倒ごとを全部、こっちに押しつけただけじゃないか」

「怒るでない。儂はこれで約束通り引退する、今回のゴタゴタの責任を取る形でな」

「ああ、あとは私が継ぐから、陛下は安心してくれ」

昨日彼が言っていた「約束」とは、王位交代を指していたらしい。

続いて、ベルトラン殿下と陛下は、私とナゼル様の方へ目を向ける。

陛下は改まった声音で私たちに告げた。

「そういうわけで、ナゼルバートよ。これからはベルトランを支えてやって欲しい」

「かしこまりました。しかし……私は、辺境スートレナの領主です。王都にいる予定はないのですが?」

ナゼル様はやや困惑した表情を浮かべたが、ベルトラン殿下は気にする様子もなく答える。

「それでいい。スートレナは重要な土地だから、私はお前たちと友好な関係でいたい……という意味だ。ナゼルバートがスートレナに帰りたがっているのは知っている」

「なるほど。それなら喜んで。王都でベルトラン殿下を助ける役目は、弟のジュリアンに依頼します」

「それは助かる。フロレスクルス公爵家の次期当主は、ジュリアンになりそうだしな……お前も知っているだろうが、現当主と長男は、王妃の企みに加担していた事実が判明したんだ。このままにしておけないので捕縛は免れん。だが、フロレスクルス家を取り潰す気はないから安心しろ」

「父と兄が申し訳ございません。寛大な処分に感謝します」

「邪魔者を捕らえ、お前やジュリアンを味方に付けられたのだから、私にとっても悪い話ではない」

それから、陛下とベルトラン殿下は、王妃殿下や王女殿下、ロビン様の処遇について話をする。

「まず、王妃と王女は身分を剥奪の上、罪人たちが暮らす孤島に追放する。温暖で自然豊かな場所だから、過度に贅沢をしなければ庶民として普通に生活していけるはずだ。あの二人には難しいだろうがな。そしてロビンに関してだが……孤島で余計な騒動を起こしかねないから、奴だけは別の刑に処すことにした」

ベルトラン様が面白そうに目を細めて、ロビン様の処遇を教えてくれる。

「あいつへの罰は、女人禁制の修道院で一生軟禁生活を過ごすというものだ。そこは我が国で一番厳しいと有名かつ、人身売買騒動に唯一加担しなかった場所でな。院長とは知り合いなので、心身共にロビンを鍛え直してくれと言っておいた」

ナゼル様が首を傾げつつ殿下に問いかける。

「しかし、ロビンの魔法は危険ではありませんか? 彼が使うのは人心を惑わす類いの魔法だと感じたのですが……」

「ロビンの魔法はそのような大したものではない。ミーアは『聖なる魔法』などと呼んでいたが、いわば『微弱な治癒と浄化』だ。本来なら恐れるような魔法ではないが、口の達者なあいつが使ったからこそ事件になったのだろう」

少し考え、私は会話に参加する。

「あの……そういえば、ロビン様に魔法をかけられたとき、胸の奥が洗われてすっと晴れるような変な感覚がありました。「浄化」とは、そういった効果を指しているのですか」

「ああ、そうだ、アニエス夫人。ロビンの浄化は精神に作用し、一時的に負の感情を消し去って、相手の心を無防備にできる」

「……微弱とはいえ、怖い魔法ですね」

「皆が皆、アニエス夫人のように心の強い女性であればいいが……ロビンの口のうまさにやられて、コロッと気を許してしまう令嬢があとを絶たなかった。軽傷を癒やす『治癒』はともかく、精神に作用する『浄化』は中毒性もあり、悪用すれば被害が拡大すると我々は判断した」

「修道院で被害は出ませんか?」

「念のため、魔法は封印しておく。部下に軽微な『魔力封じ』の魔法を使える者がいるから、ロビン程度の魔法なら封じることが可能だろう。今まであいつは令嬢にばかり魔法を使っていたというから、封じなくても害はないかもしれないがな」

男性だけの修道院。

女性が大好きなロビン様にとっては、きっと辛い環境になるだろう。

ロビン様が修道院へ行けば、これ以上セクハラされる被害者が出ないだろうから、良い処罰だと思う。

そうして数日後、私たちは辺境スートレナへ戻った。

約一月後、国王陛下が退位し、新王としてベルトラン殿下が立ち、ラトリーチェ様が王妃に収まったという知らせが国中に広まる。

レオナルド殿下は兄の補佐に回っているようだ。

彼らがいる限り、デズニム国はしばらく荒れることはないだろう。

二大公爵家は力を失い、ナゼル様の実家はジュリアン様が継いだ。

彼はレオナルド殿下と仲がいいらしく、しょっちゅう顔を合わせているのだとか。

パーティーのあと、隣国ポルピスタン国へ戻ったポールは、勉強に精を出し頑張っている。しかし、なぜか度々ケリー宛に手紙を送っているようだ。

ケリーがポールからの手紙を見せてくれたけれど、なんというか、ラブレターのように見えなくもない。

(……もしかして)

ポールがスートレナの屋敷にいたとき、主に世話を焼いていたのはケリーだった。

(あらあら、そういうことなのね。ケリーは手強いわよ、ポール)

ケリー自身は、ポールからの手紙をラブレターだと考えてはいないようだ。

密かに弟の恋を応援しつつも、道のりは険しいと思う私だった。