軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第27話 新人の冒険者登録とランクアップ

奴隷たちの戦闘訓練をした翌日、俺たちはアタリメへの移動を再開することにした。新人奴隷たちは半分を『ルーム』に入れることにし、残りの半分は戦闘要員とした。さすがに馬車がいっぱいになってきたからね。

新人奴隷たちも初めて見る『ルーム』に驚いていたが、秘密の力の一言で納得させることに成功した。もう、俺たちに何ができてもおかしくないと思っているんだろうな。

『ルーム』の中にいる奴隷たちには物は試しと生産系のポイントを与えてモノづくりをさせている。ポーションは1ポイントしか与えていない<調剤>で、俺とさくらよりも高い品質を叩き出している。いや、比較対象が俺達では正確な評価ができないか…。

ついでだからドーラにもハイポーションを作らせてみた。ハイポーションはポーションに少し材料を追加するだけなのだが、<調剤>レベルが3必要なため、作れる人は意外と少ない。当然のように効果が1.5倍のハイポーション作成に成功するドーラ。だから売れないって…。

そして2日後、俺たちはアタリメの街に到着した。街への通行料はいつもと同じ1000ゴールドだ。全員『ルーム』から出してお金を払うことにした。1万4千ゴールドのそれなりの大金だ。ちなみに奴隷が通る場合、モノ扱いのため定められた料金(通行料よりは安く、200ゴールドが平均)を払うだけで済む。いや、奴隷であることを公にする予定がないからこそ、一般の料金を払っているんだけどね。

いつものようにマップで検索して馬車を止められる宿へと向かう。アタリメの街は若干不思議な街並みだ。何というか…、所々日本の建築様式が混ざっているというべきだろう。洋風の建物なのに引き戸になっていたり、屋根だけ瓦が使われていたりという建物がちらちら見えるのだ。中途半端に和洋折衷した感じだ。

Q:なんで?

A:勇者の残した建築方式が中途半端に使われた結果です。

勇者…またお前か。いや、この国は質実剛健で実益重視だから、あの日本人からしたら違和感がある建築物にも合理性というものがあるのだろう、…多分。ある意味、観光としてはこれ以上ない見どころである。

「何でしょう…、この懐かしいようで全く懐かしくない不思議な感覚は…」

さくらも違和感がすごいようだ。

「カスタールには日本文化が根付いているって話を聞いてたから、少し期待していたんだけど、これは違うわね」

ミオも認められる範囲外らしい。

「まあ、そのうち慣れるだろう…」

「これに慣れたら日本人として何かが崩れる気がします」

「多分、王都に行くともっと酷くなるんじゃないかな…」

「止める?王都行き」

「さすがに、そこまでは言いませんけど…」

日本人組が唸っているが、この世界に元々いるメンバーとしては『変わった建物だな』くらいの感想なので、共感は得られなかった。

あ、王都に行くのを止めたりはしていないよ。もしかしたら、完璧な日本家屋があるかもしれないし。

そうだ。大切なことを思い出した。この街ではお米を取り扱っているみたいだ。普通の小売りもあるようなので、しっかり買っていく予定だ。この事実が明らかになったのは街に入る直前だったんだけど、すぐに近くに『ポータル』を設置しました。これでいつでも買いに来れるぞ。

宿は2部屋とることにした。元のパーティと新人奴隷組だ。…正確にはその2つで分けようとしたら、ココとロロが俺と同じ部屋がいいと言い出した。そしたらココについて回るシシリーもこちらがいいと言い出した。そこでさくらとセラが新人奴隷組の方に行き7人ずつに分かれることになった。

じゃんけんの結果なのだが、冷静に考えると部屋がロリロリしい気がする。よりにもよって見た目の近しいさくらとセラがいなくなってしまった。その2人を除いたら、基本的には幼い子供ばっかりになってしまうんだよな…。趣味?いやいや、偶然の産物ですよ。

「「「「「「「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」」」」」」」

うん、多いね。宿の人にお願いして昼食は部屋の方でとることにした。いや、食堂みたいな場所にこれだけの人数を入れるのは気が引けたからね。

料理の注文で『お米を使った料理』とお願いしたら、出てきたのはドリアのようなものだった。…違う。お米は使っているけど、求めているのはそうじゃない。これに関しては注文をした俺とミオが悪い。使っている米は日本と同じタイプじゃなかったみたいだ。地域によって作っている品種が違うそうだ。今度は日本らしい米を探す作業だな。

A:西区の大通りに取り扱っている店舗があります。

はい、終了。後で買いに行こう。

《…まえのおコメとなにかちがう…》

ドーラ…、意外と味覚が鋭いね。

《でも、これはこれでおいしー》

あ、ドーラの言う通り、これはこれで美味しかったです。

食事を終えた俺たちは、冒険者ギルドに向かうことにした。いよいよ、新人奴隷たちの冒険者デビューだ(Gランクが先輩面)。

「冒険者登録をお願いします。登録するのはこっちの8人です」

受付嬢さんに向けて、言い放つ。冒険者ギルドにはコノエの街と異なり、ゴロツキっぽい奴らがテーブルに腰かけたりしていた。ちなみに引き戸だった。

「かしこまりました。こちらの用紙に必要事項をご記入の上、提出をお願いいたします」

あれ?どう見ても10代前半の子が登録に来ているのに、止めたり聞いたりしないのか…。受付嬢の基本スタンスとしてはどっちが正しいんだろうね。

A:人によりけりです。

とりあえず、登録用紙に必要事項を書かせて提出する。文字を書けない子もいるので、その場合は代筆だ。

「はい、承りました。しばらくお待ちください」

用紙を手渡すと、受付嬢さんは処理に向かった。

「おうおう、ガキが集まって冒険者登録たぁいいご身分だな」

あ、テンプレ。

そういって近づいてきたのは、スキンヘッドで顔に傷のある冒険者だ。…冒険者だよね?これ、盗賊って言われた方が説得力あるんだけど…。

とりあえずミオと話していた方のテンプレが来たのでどうしようか悩んでいると…。

「テメェ、無視してんじゃねえ…」

そこまで言うと冒険者?は言葉を詰まらせた。当然だよね、マリアが冒険者?の喉に剣を当てているんだから。

今、マリア<縮地法>を使ったよね。セルディクの技らしいし、あまり大っぴらにはしないように言っていたのに…。後できちんと叱らないとな。

「仁様、いかがいたしましょうか?」

俺が切れって言ったら、迷わずに切るんだろうなー。さすがにテンプレ程度でそこまでのことをするつもりはない。

「放せ」

「はい」

そういうと剣を引くマリア。冒険者?さんも冷汗がすごいね。…まあ、本格的に絡む前にあれだけのことをされては、当然の反応かもしれないけど。

「それで、俺たちに何か用か?」

「い、いや、何でもねえ…」

マリアによって完全に勢いを失った冒険者?はすごすごとテーブルの方に戻っていった。

そこはもう少し頑張ってほしかった。

「ギルドカードの準備ができました。所有登録をお願いいたします」

そういって手渡されたギルドカードに、奴隷たちの血を染み込ませる。

さて、早速依頼を受けましょうかね。

ゴブリン・ソードマンの討伐

Gランク

西門付近にいるゴブリン・ソードマンを5匹討伐すること。

1500ゴールド

スライムの討伐

Gランク

アタリメ周辺のスライムを5匹討伐すること。

500ゴールド

等々…。

正直Gランクの依頼に大したのはなかった。村の周辺の魔物を間引けっていうことだろう。常時依頼でこそ無いものの、期限も1週間と長めだ。唯一の懸念は対象の魔物が見つからないことくらいだろう。マップがある俺には関係ありませんね。

ちなみにGランクから上のFランクに上がるには、Gランクもしくはランク無しの依頼を10回連続で成功させればいい。正確にはその間に1回なら失敗してもいい。しかもパーティで受けても全員に加算されるというのだから、本格的に才能のない人間でもなければ、簡単に越えられる壁だ。ユリーカ?本格的に冒険者の才能がないんだろうね。

依頼を受けた俺たちは、新人奴隷たちの戦闘訓練と同じようにパーティを分けることにした。新人だけで組ませるには、まだ不安も大きいからね。

今回は前回とは編成を少し変えた。

俺、ミオ、セラ、クロード、アデル、ココ、ロロが第1パーティ。

マリア、さくら、ドーラ、イリス、シシリー、ノット、ユリアが第2パーティだ。

今回は遠距離火力を分散させることにした。ミオとさくらを別パーティにしてみた。新人たちの編成は前と同じだ。指揮能力はマリアが、年長ということに期待してさくらが第2パーティを率いる。

どうでもいい話だが、ここまでの内容は全て冒険者ギルド内で行っている。最初は子供ばかりで物珍しそうに見られていたが、マリアの活躍?により『なんかヤバそう』と思われたらしく、あまり注目はされてない。というか堂々と見るものがいなくなっただけでチラ見はされ続けている。

マリアの恐ろしいところは、剣を突きつけたところを『ギルド職員は誰も見ていない』というところだ。だから何も注意されていないし、冒険者も避けることを決めたのだが…。

「じゃあ、分担して依頼を2件終えたらまた依頼を探してというのを今日いっぱい繰り返すということで」

「わかりました。パーティの編成替えは今日はしないで行くのですね」

「ああ、日ごとにテーマを決めてパーティ編成をして、数日はここで依頼を受けようと思う」

「はい、ではお気おつけて」

「そっちも気をつけろよ」

《何かあったらすぐに念話しろよ》

《はい、お気遣いありがとうございます》

マリアと軽く打ち合わせして解散とした。あ、Gランク冒険者は依頼を同時に2つまでしか受けられないから、ちょくちょく街に戻らないといけないんだよ。10件受けてさくっと終わらせたいんだけどね…。

街の外に出て討伐対象の魔物を探す。当然マップ検索で楽をする。

「ご主人様。何で魔物のいる位置がわかるんですか?」

「秘密の力だ」

「あ、はい」

すっかりテンプレとなった回答をする。その内、 俺たちの異能(ひみつのちから) についてもう少し教えてあげようかな。

「あ、ゴブリン・ソードマンが3匹います」

知ってる。

「また僕たちだけで戦闘してもいいでしょうか?」

「私たちだって少しは慣れてきたからね」

「わかった。任せる」

今のところほとんどの戦闘を新人奴隷たちに任せている。いや、サボっているわけじゃないよ。危なそうならいつでもサポートできるようにしているし。…マップで安全は確信しているんだけどね。

依頼を受けては街の外に出るを繰り返し5回、時間にして半日で俺たちはFランクにランクアップした。マリアたちもほぼ同じ時間でランクアップしていた。コノエの街のように依頼がないって方が普通は珍しいみたいだな。

魔物を間引く作業は定期的に必要だし、ランクごとに対象の魔物を決めることで、手に負えない魔物に手を出すことを防ぐ目的があるとのこと。

「私たちはコノエで登録しちゃったから時間が空いているけど、新人君たちは最速のランクアップとかできたんじゃない?」

「半日でランクアップは驚異的な速度ですわよ」

そんな話をしながらランクアップの処理を待っていると、近くの職員さんが話しかけてきた。

「はは、残念だったね。最近他の街で1時間でランクアップした実例があるみたいだから、最速じゃあないよ。別の国の出来事だし、この国では最速かもしれないけどね…」

「無念…」

ミオががっくりと肩を落とした。1時間て…、いや、俺も能力をフル活用すればそのくらいできるけど、普通の人にそんなことできるのか?まさか勇者じゃないだろうな…。そう考えるとなんか悔しいな。次に奴隷を育てる場合は30分で終わらせるように手を回すか…。

そんなことを話している内にギルドカードの更新が終わった。これでFランクの依頼を受けられるな。当然だがFランクはGランクよりも強い魔物の討伐依頼があるからな。明日はそれを中心に受けていこう。

ついでなので武器屋に行って、全員分は用意できなかった防具を購入することにした。基本的には軽装だ。

「じゃあ、明日からは近接武器だけという縛りを解除して、遠距離武器や魔法も視野に入れた戦術を組もうと思う」

「ご、ご主人様は魔法も使えるのですか…」

夕食(今回は日本米が食べられた。超美味い)後、部屋に全員集めて明日の予定について話す。

今までの戦闘では魔法は使っていない。さくらも<棒術>スキルで戦わせたし、ドーラの<竜魔法>も禁止してある。回復はポーションで済ませているので、俺たちが魔法を使えることを知らない。まあ、わざとなんですけど…。

「と言うか、お前たちにも魔法を使わせることができる」

「ご主人様は何者なんですか?」

「それはまだ教えられない。聞くことも『禁止』する」

「…はい」

「いずれ、お前たちが十分に俺たちの役に立った時にでも教えてやる」

「わかりました。ご主人様の信が得られるように努力いたします」

クロードが頷く。他の奴隷たちもそれに続く。

「さて、話がそれたがお前たちは魔法を使いたいか?」

「僕は使いたいです。魔法剣士は諦めた夢の最上位です」

クロードが期待を込めた目で見てくる。意外と欲張りな夢を持ってたんだな。マリア程じゃないが万能型が似合うので、そういうビルドでも問題ないかな。基本的には俺の下位ご…、俺と似たような戦闘スタイルになるわけだ。

「俺は鍛冶をやるので、火の魔法が使えたら便利だと思います。ちょっと邪道かもですけど…」

「私は風魔法ね。マリア先輩みたいに素早く動きたいわ」

ノットとココも目的が明確なようだ。…そうだ。

「悪いが、ユリアにはこちらで決めた魔法を使ってもらうぞ」

珍しく俺が個人の選択に口を出したので、驚いた顔をする新人たち。

「珍しいですね。ご主人様が戦闘スタイルで指示をするのは」

「ああ、ちょっと訳があってな。…ユリアには<精霊魔法>と<精霊術>を使ってもらう」

縦ロールから奪ったこの2つの魔法だが、今まで誰も使用してこなかった。それには少し理由がある。

<精霊魔法>

大気中の精霊にMPを支払って魔法を行使してもらう。

利点としては詠唱を本人以外が行うので、本人の行動を妨げないこと。複数の属性の魔法を1つのスキルで行使できること。

欠点は精霊がマージンを取るのでMP消費量が大きいこと。周囲に精霊がいなければ魔法を使えないこと。

<精霊術>

精霊と直接契約をして使役する。召喚により精霊を顕現できる。顕現中は常にMPを消費する。

Q:精霊って何?

A:この世界にいる属性を司るエネルギー生命体です。大気中に漂う魔力(MP)が具現化した者でもあります。司る属性に関係する場所では活発になります。エネルギー量が大きくなると、明確な自我を持ちます。

簡単に言うと、レベル1で使いたいようなスキルではなかったのだ。便利な部分もあるが、縦ロールから奪った時点で全属性が使えた俺達からしてみれば、MP消費が高くて、環境に左右されるようなスキルに需要がなかったのだ。名前だけ見てミオが使いたそうにしていたのは封殺した。

「わかりました。ご主人様がそう言うのでしたら、何か理由があるのでしょう」

「魔法は今から渡す。他の奴は希望があればそれを言ってみろ。全部を叶えるとは限らないけどな」

そのまま全ての奴隷に魔法スキルを2種類ずつ、1ポイント与えて覚えさせることにした。ユリアにはこちらの都合で2つ決めてしまったので、サービスでもう1つ覚えさせることにした。覚えたての魔法をどうしても使いたいというので、『ルーム』に放り込んで、満足するまで使わせてやったら、普段全く使わないMPを限界まで使ったものだから、全員が気絶していた。慣れればギリギリまで使っても平気なんだけどね。

次の日、昨日と同じように討伐系の依頼を受けられるだけ受けた俺たちは、魔法の使用も含めた練習がてら、1日中依頼を受けることにした。ステータスを多少上げ、魔法も使えるようになった新人奴隷たちは、危なげなくFランク依頼の魔物を討伐していった。

それによって冒険者ランクを上げ、本日中にEランクとなることができた。冒険者ランクにはいくつもの壁があり、まず最初に訪れるのが中級冒険者の壁、Dランクとのこと。その次が上級冒険者のBランク、後はもう壁だらけで尋常じゃなく大変らしい。簡単に言えば、次のDランクが俺たちに対する唯一の壁ということだ。

「まさか、奴隷である僕たちが2日でEランク冒険者になれるなんて…」

「本当にご主人様の秘密の力ってすごいのね」

「多少の魔物なら恐がらなくて済むっていうのも大きいですよね」

「ああ、まだまだ勝てない魔物も多いけど、ゴブリンとかなら負けないよな」

新人奴隷たちの戦闘にも大分余裕が出てきた。魔法が使えるようになったというのも大きいだろう。MPの運用には気を付けなければいけないが、1度思いきり使ってぶっ倒れさせたので、そろそろヤバいというのが感覚で分かるようになったようだ。

俺は< 千里眼(システムウィンドウ) >のステータスでその辺の調整をしながら魔法を運用していることを考えれば、結構スパルタと言ってもいいんじゃないのかね。努力量だけ見れば、新人の方が多いだろうからな。

元のメンバーも新人たちも、あと数日もすればDランクにすらなれるだろう。そんなことを考えながら次の日も冒険者ギルドに向かう。やけに冒険者ギルドに人がいるな。何かあったのだろうか。

「スタンピードだ!スタンピード!」

「ティラの森から魔物が大量に出てきているらしいぞ!」

「ティラの森だと!あそこはBランク以上推奨の亜人系魔物の巣だぞ!」

「進行方向には村が1つだ。その後はこの街に来そうだ!」

ガヤガヤとうるさい中で、重要そうな情報を拾えた。 魔物の暴走(スタンピード) が発生し、遠からずこの街にも来るそうだ。俺としては< 生殺与奪(ギブアンドテイク) >でスキルとステータスを奪うチャンスだ。新人たちにはキツイかもしれないから留守番かサポートに徹してもらうことにする。

Q: 魔物の暴走(スタンピード) って何?

A:魔物が一斉に移動してくることです。原因はいくつかあり、多くは『脅威から逃げる』というものです。

「静かにしろ!ギルド長が方針を伝えるぞ!」

1人が大きな声を出してそういうと、徐々に周囲のガヤガヤは小さくなっていった。

ギルド長と思しき人物が前に出てくる。ジョセフと同じくらいの強さだな。調べてみるとAランク冒険者であることがわかった。やっぱり、Sランクっていうのは頭1つ抜けているみたいだな。コノエの街では結局Sランク冒険者に出会えなかったけど…。

「アタリメの街の冒険者諸君!知っての通り今現在この街に魔物の群れが向ってきている!我々の方針としては3つ考えられる。1つはもうしばらくで群れに衝突する村に向かい、それよりも先で防衛戦をすること。もう1つはその村とこの街の間に陣取り、そこで防衛戦をするというもの。最後にこの街の門を閉め、この街の防衛をするというものだ」

簡単に言えば、もうすぐ襲われる村を見捨てるか見捨てないかというものだ。街で防衛した場合、その村の住人はほぼ全滅だろう。

「一応、村の住人にはこちらに向かうように伝えてあるが、全員が間に合うかと言われると微妙なところだろう。馬などもなく、徒歩で向かうことになるからだ」

女、子供、年寄りのいる村人が魔物の進行速度よりも早く動けるかと聞かれれば、当然のように否と答えが返るだろう。

「村とこの街の間で防衛線をする場合は多少の準備ができるが、村の被害を抑えようとすると準備などできず、このまま向かわなければ間に合わない。そこで、ギルドの方針としてはこの街である程度の準備をしてから村に向かい防衛ラインを作る。そして保護できる人間だけを保護していこうと思う」

つまり、防衛ラインに届かなかった人間は見捨てるということだ。

「賛否はあると思う。だが、全てを守れるほどの戦力はこの街にはない。下手に準備不足で前に出て全滅などしたら、この街すら守れなくなってしまう。妥協点として皆には理解を求める」

間違ったことは言っていないな。被害と義理を天秤にかけたらその辺りが落としどころとなるだろう。

「申し訳ないが、防衛戦は強制依頼となる。今から30分でできる限りの準備を整えてくれ!後、馬車を持っている冒険者がいたら、村から逃げている人々の救助をお願いする!」

あ、馬車持ってますね、俺たち。つまりはできるだけ村人を拾う係ということですね。

これはチャンスかもしれない。馬車で救助者を拾うということは、それだけ早くスタンピードに近づけるというわけだ。それだけ多くの魔物を相手にできるというわけだ。これは行かない理由がないな。

村自体には大したものがなくても、出来るだけ被害が少ない方がいいに決まっているし…。

A:………。

え、何だって?もう一回言ってくれ…。

A:………。

…。

「マリア、セラ、急いで馬車の準備をしてくれ。馬車を空けるために他のメンバーはこの街で防衛に参加だ。後、ギルドの方に馬車で救助すると申請をしておいてくれ!」

「はい!行きますよ、セラちゃん!」

「え、ええ」

マリアはこういう時に迷わずに指示に従ってくれる。

「ご主人様!どういうこと!?」

「仁君、どうかしたんですか!?」

時間がない。出来るだけ早く村まで行かなくてはならないのだから。

「説明は後だ。とりあえず俺たちは出発するから、言ったことを頼む」

そう言って俺は元からのメンバーを連れて馬車へと向かう。タモさんとミドリもこのまま連れて行こう。

速攻で準備を終えた俺たちはマップでスタンピードに襲われそうな村へと向かう。

《ちょっとご主人様!いい加減に説明してよ》

《おいてかれたー》

《すまん。今からちゃんと説明するから》

《仁君が急に行動するということは、何かを見つけたんですよね》

おお、さくらは付き合いが長いだけあって、その辺のことをわかってくれたようだ。

《ああ、今にも襲われそうな村はな…》

俺が村を守りたい理由。

《日本米の産地なんだ!》

A:特産品は一昨日の夕食に出た、日本と同じ種類の米です。