作品タイトル不明
第185話 世界樹と女神の領域
スカーレットの身の上話を聞き、真紅帝国に来る前、来た後に感じた疑問、違和感の多くが解消された事を理解する。
特に、スカーレットに協力するか否かを決める重要な要素である、『エステア王国の侵略』と『金狐夫婦の殺害』について、納得できる話を聞けたのは大きい(金狐の殺害を許す、許さないは別の話とする)。
しかし、それはそれとして……。
「とりあえず、アンタの行動、裏目に出すぎじゃないか?」
<封印>の件然り、妻の件然り、子供の件然り、金孤の件然り。
「ははっ、全くだな! ……まあ、大半は自業自得だから文句も言えねぇよ。特に、妻とガキ共に関しては、俺の努力が足りていなかったのも大きな要因の1つだ。金孤に関しては、言い訳のしようもねぇよ」
悔やむように言うスカーレット。
確かに、スカーレットの対応によっては、悲劇の多くは回避できたのだろう。
その悲劇を事前に予測できたかと言えば、また別の話になるが……。
ただ、1つだけ気になる事もある。
スカーレットの話は、当然ながらスカーレットの主観によるものだ。
しかも、話を短くするために細かい部分は大分端折られているだろう。
スカーレットは子供達に対して、関心もないし関わる事もほとんどなかったと言っていたが、これは正確ではないと思っている。
関心が無かったと言う割には、スカーレットは子供達の様子や性格などを把握しているし、後継者と言う観点で話をすることも出来ていた。
関わる事が無かったと言う割には、カーマインは本気でスカーレットを慕っていたし、俺の知る限り子供達はスカーレットを悪く言う事は無かった。
……まあ、スカーレットが話さなかったのに、態々後から聞くような事でもないだろう。
「俺としては、気になっていた事は大体聞けたと思うから満足だな」
「それで、協力はしてもらえるか?」
すかさず尋ねてくるスカーレット。
「正直、今の話だけで決めるのは少し難しい。具体的に、どのような協力が必要なのか?その辺の話が出て来なかったからな」
何をして欲しい、と言うのが分からないのに、協力を確約する事は出来ない。
身の上話とは直接関係ないから、質問はしなかったが……。
「ああ、そこは意図的に省いた部分だ。リリィの婆さんに話を聞くとき、一緒に聞いた方が手間が省けるからな。と言う訳で、現時点で確約はしなくて良いから、検討の状況くらいは教えてくれないか?」
「かなり前向きな回答が出来そうだ。後は、協力の内容が著しい不利益を要求する物でなければ、OKと答えられると思う」
「よっし!今はそれだけ聞ければ十分だ!」
小さくガッツポーズをするスカーレット。
それ程までに俺の協力が欲しいのだろう。
「それじゃあ、次はリリィの婆さんの『語り』だな。俺としては、『女神の領域』への行き方が一番知りたい内容だが、ジンは何から聞きたい?」
「そうだな……。リリィさん、アンタは一体何者なんだ?」
今、一番始めに聞きたいのはリリィの正体だ。
『姫巫女』の称号があるから、災竜に関わる存在なのは間違いないだろうが、それ以外の情報が無いので、具体的にどういった存在なのかが分かり難い。
「今度はワシの身の上話と言う事じゃな。あえて、一言で言うのなら、『原初の姫巫女の1人』が一番正しいじゃろうな」
大体察した。
「この世界には災りゅ……」
「あ、その辺の話は知っている。災竜を封じる『姫巫女』、その最初の1人って事か?災竜は4匹いるけど、どの災竜の『姫巫女』だったんだ?」
語り部の『語り』を遮る。
「み、水じゃ……」
心持ちションボリしたリリィが答えてくれる。
「ジン、今のはあんまりじゃねぇか?」
「知っている話は端折った方がスムーズだろ?」
「そりゃあ、そうなんだが……」
だって、『語り部』だよ?
絶対、1つ1つの話が長くなるのが目に見えているんだよ?
飛ばせるところは、飛ばそうよ。
「ところで、いくつか質問したい事があるんだが、構わないか?」
スカーレットが微妙な表情をしているのを無視して、質問を続ける。
「……うむ、構わん」
「それじゃあ、1つ目。リリィさんに親はいるのか?」
『原初』とか言われると、その系譜が気になってしまいます。
「おらん。災竜の封じられた地に、今のこの姿で現れたのじゃ。ワシの語る知識も同様に初めから持っておった。ただし、それらが何者に与えられた物なのかは分からん」
親もおらず、産まれた時から姿が変わらず、最初から知識も持っている。
うーん……。
「知識の内容から、女神によって創られたと考えたこともある。しかし、ワシの持つ知識の中には、女神にとって不都合となる物もあるのじゃ。女神が態々不利になるような存在を創るとは思えんから、『女神に匹敵する何か』と言うのが、今現在の有力な候補じゃ」
「スキルにまで態々デメリット付ける様な陰湿な奴が、そんな事をするとは思えねぇよな」
「そりゃそうだ」
『女神は陰湿で性悪』と言うのが、既に共通認識になっている。
そんな奴が、自分を不利にする要素を創るとは思えない。
「2つ目の質問だ。他の3人の『原初の姫巫女』はどうなったんだ?」
「当の昔に自殺しておるよ。不老であろうと、永遠の孤独には耐えられんようじゃ。ワシは語り部として生きることを決め、この地にある世界樹によって精神を安定させておる」
スカーレットの言う『安定した生存』と言うのは、主に精神面の話だったようだ。
「正確に言えば、ジャンケンで負け、ワシが語り部として生きることになったのじゃ」
「押し付け合ったのかよ……」
初耳だったらしいスカーレットが呟く。
『原初の姫巫女』達は、孤独に耐え切れず、いずれ自ら死を選ぶと理解していた。
同じ立場の存在が4人居るのに孤独を感じるのには理由があり、『原初の姫巫女』は知識と記憶を共有する存在だったそうだ。
4人それぞれに性格等の個体差はあるようだが、他人と言う認識は薄く、孤独が紛れる事は無かったという。
そして、色々あって世界樹の元に辿り着いたリリィ達は、語り部として1人を残して命を絶ったとの事だ。
「今の話とも関わりがあるんだが、そもそも世界樹って何だ?」
「世界樹や迷宮は女神の意思と無関係に自然発生した存在じゃ。他と違うのは、女神の干渉を受け付けんと言う性質を持つ事じゃ」
「ルージュを迷宮に送った理由だな」
スカーレットはリリィからこの話を聞き、ルージュを迷宮に送ることを決めたようだ。
「迷宮の事は知っておるか?」
「ああ、かなり詳しいはずだ」
一応、 迷宮支配者(ダンジョンマスター) ですから。
「それならば、迷宮との違いで説明をした方が早そうじゃな。どちらも特定の領域を管理下に置くが、その条件が大きく異なるのじゃ。迷宮の方は自由度が高く、地下に空間を作る事も出来れば、地上に結界を張る事で領域を指定することも出来る」
リリィは言わなかったが、迷宮は海底に結界を張って作る事も出来る。
確かに自由度は高い。
「対する世界樹の領域は、『世界樹を中心とした森の中』に限られておるのじゃ」
「それだけ聞くと、迷宮の方が優れている様に思えるな。世界樹の利点は無ぇのか?」
スカーレットの質問に、リリィは頷いて答える。
「当然、あるのじゃ。そもそも、迷宮と世界樹は根幹となる役割が違う」
「そりゃあ、役割が同じなら、態々2つ存在する意味が無ぇよな」
「そうじゃ。迷宮と世界樹は似た能力を持つが、その役割は正反対なのじゃ。その役割、ジン殿には心当たりがあるかのう?」
リリィが俺に問うてくる。
残念ながら、元々心当たりがあった。
そして、今のリリィの発言で確信を得た。
「向かう先、じゃないか?迷宮は基本的に地下、つまり下に向かう。世界樹は成長により上に向かう。リリィさんの言うように、方向が真逆だ」
「……正解なのじゃ」
リリィが再びションボリする。
まさか、当てられるとは思っていなかったのだろう。
もしかしたら、ドヤ顔で 説明し(かたり) たかったのかもしれない。
「迷宮の本来の目的は『女神から距離を置く』、世界樹は『女神の元へ向かう』なのじゃ」
「ああ、それで『女神の領域』に行くには世界樹の力が必要って言っていたのか」
スカーレットが納得したように言う。
「うむ、その通りじゃ。実は『女神の領域』は月にあるのじゃ。故に世界樹は月、つまり上を目指して成長しておる」
おっと、また新しい重要情報が出てきたぞ。
そして気になる事が1つ。
「月まで行く手段があれば、世界樹は不要なのか?」
「いや、そのまま月に向かったところで、『女神の領域』には辿り着けん。月自体はこの世界の存在じゃからな。言うてしまえば、月にあるのは入り口じゃ。そして、世界樹にはこの世界と『女神の領域』を繋ぐ力……入り口を開ける力がある」
月に行くだけなら、それほど難しい事ではないのだが、そう上手くはいかないか。
「つまり、『女神の領域』に行く方法とは、世界樹を成長させ、月まで届かせる事なのじゃ」
ようやく、語り部らしく衝撃の真実を伝えてくれた。
「なるほど、そう言う事だったのか。……それで、世界樹を成長させるには、何が必要なんだ?9年前に辛うじて聞けたのは、女神の意図から外れた存在が鍵になるって話だが?」
「うむ、世界樹の成長に必要な物は大きく分けて2つ。栄養となる『リソース』と女神の意図から外れた存在、『 異常個体(イレギュラー) 』じゃ」
異常個体(イレギュラー) の響きが好きです。
「そして、この 異常個体(イレギュラー) が、この世界と『女神の領域』を繋ぐ力の元となるのじゃ」
「1つ教えてくれ。その 異常個体(イレギュラー) は何をすればいいんだ?」
手を挙げ、リリィに質問をする。
異常個体(イレギュラー) に心当たりは多数あるが、その扱いが問題である。
「樹の養分として埋める、とか言われたら、流石に拒絶せざるを得ないぞ?」
「世界樹を何じゃと思っておる……」
『愉快なオブジェ』かな。
「世界樹の本体に手を触れるだけで良い。要は 異常個体(イレギュラー) の因子を世界樹が取り込むのが目的じゃ。 異常個体(イレギュラー) に不利益はない」
「それだけなら問題はなさそうだな」
世界樹が食虫植物の様に、触れたものをパクっと食べない事を願おう。
そして、スカーレットも俺と同じように手を挙げる。
「俺からも質問だ。 異常個体(イレギュラー) はどれだけ集めればいい?どんな奴らを集めればいい?」
「集める 異常個体(イレギュラー) にはいくつか条件があるのじゃ。……と言うか、 異常個体(イレギュラー) の話も重要なのじゃが、直近の問題はリソースの方なのじゃ」
とてもバツの悪そうな顔をするリリィ。
「 異常個体(イレギュラー) の方に意識が行って聞きそびれたが、そのリソースって何だ?」
スカーレットはリソースの事を知らなかったようで、リリィに尋ねた。
「リソースとは、迷宮や世界樹を維持、成長させるために必要な栄養の様な存在じゃ。その領域内に人が存在すると、その者の強さに応じた量のリソースが得られるのじゃ」
「その言い方だと、リソースってのは使えば減るんだよな?」
「うむ、問題はそこじゃ。……ゴーシュの阿呆が先程、ジン殿達を排除するために大量のリソースを使いおった。そのせいで、世界樹は維持するだけで精一杯で、とてもじゃないが成長する余裕などない」
ゴーシュが世界樹の守護者を呼び出して、俺達を排除しようとしたのが響いている。
世界樹の守護者を呼び出す事は、イコールで大量のリソースを消費するという事だ。
それも、正規の手順ではない方法で呼び出したため、消費量は更に増えている。
「マジかよ……」
「マジじゃ……。コツコツ貯めたリソースの貯蓄を一瞬で使い切りおった」
迷宮にも言える事だが、結界を作り、その中の住人だけでリソースを確保する仕組みの場合、貯蓄まで手が回らないどころか、維持で精一杯と言う事になり易い。
『 竜人種(ドラゴニュート) の秘境』がその良い例だろう。リソースが足らず、結界に綻びが出来てしまい、そこからドラゴンが入り込んでいた。
エステアの迷宮の様に、人を呼び込むシステムを作り、リソースの確保を安定して行えるようにすることが、迷宮の正しい姿なのだろう。
なお、『人魚の国』は結界のサイズが小さい上に、いくつかの節約を行っている為、住民だけで結界の維持を賄えるようになっている。
「さっきの話だと、リソースは強い奴が中に居れば貯まるんだよな?俺じゃ駄目か?」
「レット坊換算だと、レット坊が1000年間里に留まれば貯まるじゃろう」
「マジかよ……。これでも、結構強さには自信があったんだが……」
「いや、これでも破格なんじゃぞ。たった1000年で今までの貯蓄に匹敵するというのは」
問題はスカーレットが1000年生きない事ですね。
「それじゃあ、ジン達はどうなんだ?多分、俺よりも貯まる量は多いだろ?」
「それが、ジン殿達からは何故かリソースが得られんのじゃ」
不思議そうに首をかしげるリリィ。
そこまで細かい迷宮の知識は無いという事か。
「ジン、何をやったんだ?」
「リソースの行き先を変えた。俺達のリソースは全て他の迷宮に行っている」
リリィが頭を抱える。
「当たり前のようにとんでもないことを言うのう。……悪いが、ジン殿達のリソースを世界樹に分けてくれぬか?」
「協力が確定したら分けても良いぞ」
「……また、ジンの協力が不可欠なモノになった」
スカーレットも頭を抱える。
こればかりは、スカーレットにもどうしようもない事だからな。
「聞いた話の通りなら、協力するのも吝かではないな。リソースの問題が解決する前提で、何が必要かを教えてくれ」
「うむ、分かったのじゃ。必要なのは 異常個体(イレギュラー) の種類と人数じゃ。種類は最低でも10種類。人数は最低でも100は欲しいところじゃな。また、<勇者>スキルの持ち主に関しては5人分の因子が必要じゃ」
「聞いているだけで無茶苦茶なのが分かるな……。やり甲斐がありそうだぜ」
スカーレットが苦笑しているが、それ程条件が厳しいとは思えない。
「 異常個体(イレギュラー) には大きく3つの種類がある。1つ目はスキルの持ち主。2つ目は種族。3つ目は来歴じゃ。それぞれ、説明していこう」
リリィはそう言うと、立ち上がって部屋の隅から黒板を取り出してきた。
語り部、用意が良い。
「まず、1つ目のスキルじゃ。ここには、<勇者>やレット坊の<英雄の証>が含まれる。基本的に生来のスキルじゃな。他にも、<聖魔鍛冶>や< 系統樹の分枝(セフィラ・ブランチ) >があるが、簡単に見つかるモノでもないので、詳しい説明は省くのじゃ」
もう、見つかっているんだよなぁ……。
「2つ目の種族。これは、先程述べた< 系統樹の分枝(セフィラ・ブランチ) >により発生した新たな種族のことを指す。 竜人種(ドラゴニュート) や人魚……うん?ワシの知らぬ間に新たに天使と言う種族が生まれた様じゃな。まだ、見つけやすい部類じゃろう」
もう、見つかっているんだよなぁ……。
それより、つい先日生まれた 天使(アンジュ) の事を何故知っているのか。
もしかして、リリィの知識って自動アップデート機能があるのか?
「3つ目の来歴は、レット坊のような異世界転生者や、 祝福(ギフト) を持たぬ異世界転移者、迷宮を管理する者等が挙げられるのじゃ」
あ、10種類揃った。
人数は 竜人種(ドラゴニュート) が大勢いるから何とかなる。
後は<勇者>スキルの持ち主だけだな。
獣人(マリア) 、 人間(シンシア) 、 ホビット(リコ) 、そして、エルフの里にいるエルフの勇者で4人だ。
必要条件の5人まで後1人足りない。
「さて、どこから手を付けるべきか……。とりあえず、<勇者>、<英雄の証>、 竜人種(ドラゴニュート) 、転生者、は現時点でこの里にいるから、種類は残りは6つだな」
そこで、スカーレットは首を横に振った。
「違ぇな。ジンは 祝福(ギフト) を持たねぇ転移者のはずだ。これで、残り5種類だ。人数の方はどうすりゃ良い?」
「うむ、人数の方は『 竜人種(ドラゴニュート) の秘境』に行ければ、すぐに揃うじゃろう」
「さっき言っていた場所だな。それも、ジン頼みになっちまうか……。問題は<勇者>を5人揃えることだな。多分、これが一番大変じゃねぇか?後3人は集めなきゃならねぇ」
スカーレットとリリィが話を進めていく。
「……いや、後は<勇者>1人で良い」
「何?<勇者>2人の居場所を知ってるのか?流石だな……。となると、残るは<勇者>1人と5種類、100人の 異常個体(イレギュラー) か。ジンが手伝ってくれるなら、役割分担も決めねぇといけないな」
あ、勘違いされていますね。
「悪いが、ワシはここを離れられんのじゃ。手伝う事は出来ん」
「分かってる。婆さんにそこまで頼むつもりはねぇよ」
「いや、だから、後は<勇者>1人で良いって……」
「「?」」
2人の頭にハテナマークが浮かぶ。
「5種類、100人の方は俺ならすぐに集められる。<勇者>も3人集められるから、この里の1人を入れて4人、後1人で揃うはずだ」
「「……………………」」
呆然とする2人。
「具体的に言うと、さっきリリィさんが言っていた 異常個体(イレギュラー) の具体例を全部集められる。人数に関しては、これもリリィさんが言った通り、 竜人種(ドラゴニュート) を100人以上呼べる。勇者は獣人、人間、ホビットの3人がいる」
「マジかよ……」
「今日は驚かされてばかりじゃな……。忘れられん一日になりそうじゃよ……」
語り部にそう言ってもらえるのは光栄ですね。
俺の事もいつか語ってくれるのかな?
「そうじゃ。後で聞くと言っていた『 竜人種(ドラゴニュート) の秘境』について、聞いても構わんか?100人集められるという事は、大半が秘境の外に出ておるのか?」
「ああ、俺も聞きてぇな。クロアの故郷はどうなっているんだ?」
「故郷と言っても、覚えていないのですけどね……」
クロアさん、久しぶりの発言。
「答えるのは構わないが、その前にリリィさんと『 竜人種(ドラゴニュート) の秘境』の関係を教えてもらえないか?」
実は結構気になっていた。
『 竜人種(ドラゴニュート) の秘境』では、エルフの里の話題は一切出なかったのに、エルフの里では『 竜人種(ドラゴニュート) の秘境』の話題が出る。どういう関係?
「ワシには『 竜人種(ドラゴニュート) の秘境』を作り上げた 竜人種(ドラゴニュート) の始祖と交流があったのじゃ。 竜人種(ドラゴニュート) の始祖は、< 系統樹の分枝(セフィラ・ブランチ) >により発生した 竜人種(ドラゴニュート) の第一号じゃ」
ドーラ達の先祖と交流があったのか。
昔の事過ぎて、リリィの情報は残っていなかったのかもしれない。
竜人種(ドラゴニュート) 、情報の重要性を理解していない種族っぽかったし……。
「大昔にその者がこの地を訪れ、ワシと交流を持った。新種族としての苦労を色々と聞かせてもらったのう……。ワシの知識を随分と与えたものじゃ。そして、その者は後に迷宮、『 竜人種(ドラゴニュート) の秘境』を作り上げたのじゃ」
「おい!『 竜人種(ドラゴニュート) の秘境』って奴は迷宮なのか!?」
スカーレットが声を上げる。
竜人種(ドラゴニュート) の情報はある程度広げているが、『 竜人種(ドラゴニュート) の秘境』に関する情報は完全に秘匿してあるので、スカーレットが知っている訳はない。
「うむ、迷宮じゃよ。 異常個体(イレギュラー) である 竜人種(ドラゴニュート) を守るため、女神の意図から外れた迷宮を使う。中々に皮肉じゃろう?」
そして、それはエステア迷宮や『人魚の国』でも同じことが言える。
「ジンが呼べなかった場合、迷宮関係の 異常個体(イレギュラー) はそこで探せたな。エステア迷宮を踏破するよりは楽だったろう……」
「そうでもないのじゃ。結界があり、 竜人種(ドラゴニュート) が居なければ入る事すら出来ぬし、ジン殿が言うには、今は 竜人種(ドラゴニュート) であっても入れぬそうじゃぞ」
「で、何が起こってるんだ?」
そこで、俺の方に話が来た。
「簡単に言えば、『 竜人種(ドラゴニュート) の秘境』から離反した 竜人種(ドラゴニュート) が現れた。既存の方法で勝手に出入りされると困るから、誰も出入りできない様にした」
「それはやむを得ないじゃろうな……」
「となると、クロアは故郷に戻れな……待て、それじゃあ、ジンの言う100人近い 竜人種(ドラゴニュート) は今の話のどれに該当するんだ?」
俺の話の違和感に気付いたスカーレットが聞いてくる。
「それは、今も『 竜人種(ドラゴニュート) の秘境』に残る100人以上の 竜人種(ドラゴニュート) に決まっているだろ?俺が支配した迷宮だ。そこから連れてくるくらい訳はない」
エステア迷宮を支配している事はまだ内緒ね。
とりあえず、『 竜人種(ドラゴニュート) の秘境』の 迷宮支配者(ダンジョンマスター) である事は明かしてしまおうと思います。
「マジかよ……」
「なるほど、いくつかの疑問が解消したのじゃ。道理で守護者が動き出した訳じゃよ」
あ、ごめん。それ、 迷宮支配者(ダンジョンマスター) だけの話じゃないよ。
他にも大量に引っかかる条件満たしているんだ……。
「つまり、ジンならクロアを故郷に戻す事が出来るんだよな?」
「出来るか出来ないかで言えば出来るが、俺にテイムされていない者を行き来させるつもりは無いぞ」
『竜の門』は機能を停止しているので、行き来するには『ポータル』か『 召喚(サモン) 』を使うのが基本となっている。
それは、異能の領分なので、いくらスカーレットと言えど、教えるつもりは無い。
「はぁ……。とりあえず、クロアの故郷の情報が分かっただけでも良しとするか」
説得は無意味だと判断したスカーレットが、溜息をつきながら言う。
「私はそれほど気にしていないのですけどね……」
クロア自身はそこまで執着していないようだ。
「記憶が戻ったら言えよ。ジンに頼み込んででも戻してやるからな」
「はい、その時はお願いします」
片道だけなら、『竜の門』を開いてあげてもいいよ。
ただし、『行き来』はさせられないけどね。
「秘境の無事も分かった事じゃし、とりあえず一安心じゃな」
リリィの勘違いを正そう。
「ちなみに、クロアが『竜の門』から外に出ることになったのは、結界の綻びから侵入したドラゴンとの戦いで傷ついた結果だな。どさくさに紛れて転移することになったんだろう」
「あの時の傷はそれか……。記憶もそん時の影響だな」
「あまり、無事では無かったのじゃな……」
「俺が迷宮を支配しなければ、遠からず滅んでいたと思うぞ?」
冗談でも大袈裟でもなく、侵入したドラゴンに滅ぼされていただろう。
侵入のペースが上がっているって話だったからな。
「今は平気なんじゃよな?」
「当然だ。中の 竜人種(ドラゴニュート) 達を鍛えて、リソースを安定供給できるようにしたから、そう簡単には滅びないだろうよ」
「……里のエルフも、もっと鍛えた方が良いかのう」
それはエルフの里で決めてください。
さて、これで言っておくべきことは大体言い終わったかな?
「 竜人種(ドラゴニュート) 関連で聞きたい事はまだあるか?」
「いや、無いのじゃ」
「俺も無ぇよ」
俺が尋ねると、2人とも首を横に振った。
「ジン、そろそろ、協力の可否を教えてくれねぇか?多分、リリィの婆さんから聞くべき情報もほぼ出揃ったと思うぞ」
「そうじゃな。ジン殿の協力が不可欠と分かった以上、早く決めてくれると助かるのじゃ」
確かに、これ以上情報は増えないだろう。
そして、ここまで聞いた内容なら、協力しても問題は無さそうだ。
「分かった。『女神の領域』に行くための協力、させてもらおう」
「よっし!」
スカーレット、渾身のガッツポーズ。
「これで、ようやく女神を殴るのに一歩近づいたな」
「世界樹の成長はワシにとっても好ましい事じゃ。リソースの不足が解消するのも有難い」
スカーレットも喜んでいるが、それ以上にリリィが安堵している。
世界樹のリソース不足問題は相当にヤバかったらしい。
「それじゃあ、残る勇者捜索の話をしようか」
協力すると決めた以上、全力を尽くします。
「ジン殿は獣人、人間、ホビットの勇者を集められるのじゃよな?」
「ああ、そうだ。確か、この里にも勇者が1人居るんだよな?」
「うむ、エルフの勇者が居るのじゃ。故に、探す勇者の種族はそれ以外となる。種族として人口が多いのは、ドワーフや鬼人辺りじゃろうな」
やはり、ドワーフや鬼人など、他の人類種(ヒトと分類される種)にも<勇者>持ちは存在するようだ。
「問題は、<勇者>スキルを持つ者がいるとは限らないという点じゃな。下手をすると、今の世には、他の<勇者>が居らん可能性もある」
<勇者>スキルは寄生……継承されていくが、スキルが存在しない期間もあるそうだ。
その期間に法則性は無く、1つの時代で5人揃わない可能性も低くないらしい。
シンシアはヴァーミリオンの死後に生まれ、<勇者>スキルを持っていた。
この時は<勇者>スキルの存在しない期間が非常に短かったが、これは非常にレアなケースだったとの事。
「ある程度、腰を据えて取り組まないと駄目だろうな」
「そうじゃな。流石に産まれておらんモノはどうしようもないじゃろう」
「いや、その心配は無いと思うぞ」
「「?」」
2人は、俺が『協力する』と言った事をもう忘れたのだろうか?
「俺が協力するのに、後1人が揃わないなんて、ある訳ないだろ?」
全くの偶然で、『女神の領域』に行く条件を、後1つと言うところまで揃えたのだ。
最後の1つが、『絶対に満たせない状態』で終わる訳が無いだろう。
「何か、凄ぇこと言ってんな……」
「うむ、普通、そんな事を自信満々に言えないのじゃ」
運には自身のある男、進堂仁です。
「一カ月くれ。その間に探してみせる」
俺が探す以上、存在しないとは思えない(ここが一番重要)。
それなら、かなり高い確率(笑)で探し出すことが出来るはずだ。
最悪の場合、配下を総動員してローラー作戦で探すことも視野に入れておく。