軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

外伝 第二十三話 恋人同士

王都で冒険者になり、一年の月日があっという間に流れた。

鉄等級だったあたしたちも、魔物討伐実績を積み重ねたおかげで銀等級まで駆けあがり、生活はかなり安定している。

貯まったお金から、リスバーン村の孤児院への仕送りもできており、二度ほど院長先生たちの顔を見に帰ることもできた。

今日はちょうどいい依頼がなかったので、休みにして同じく休みだったソフィーの宿に一人で顔を出している。

ソフィーは美味しいお菓子を作るのが趣味のようで、宿の部屋を訪れるたびにもてなしてくれた。

そんなお菓子に舌鼓を打ちながらソフィーの話を聞いている。

「アルフィーネ、最近『疾風のアルフィーネ』って、冒険者たちから呼ばれてるの知ってる?」

「なんの話?」

「二つの名の話。アルフィーネが駆け抜けると、魔物が死んでるからって話でみんなそう呼んでるらしいわよ」

「駆け抜けてるわけじゃないよ。ちゃんと斬ってる。ニコライが多少マシな剣を打ってくれたからね」

お金が貯まったことでニコライにも新しい剣を打ってもらえた。

切れ味は最初のやつより多少マシ。

また、酒飲んで打ってやらかしたけど、使い勝手は馴染んだ剣とおなじだったので、我慢して使っていた。

最初の剣は大事な記念の剣だから、実戦では使わなくなったけど、練習用の剣としてあたしもフィーンも大事に手入れを続けている。

「そう見えるって話よ。それに、また近衛騎士の人とか、金等級以上の冒険者と試合してぶっ倒したでしょ」

「うん、でも弱かった。あんな実力で騎士とか金等級とかになれるなら、あたしはすぐにでもなれる。フィーンより断然歯ごたえがないもん」

「それをみんなが居る前で普通に言っちゃうのが、トラブルの原因になってる自覚はあるかしら?」

「なんで? 本当のこと言ってるだけじゃん」

試合に負けて恥をかいた騎士や冒険者が、仲間を引き連れて仕返しにきたのを、全員叩き伏せただけなのに。

そのたび私闘の疑いをかけられたので、フィーンを通じて冒険者ギルドに事情を説明してもらっている。

全て相手側が仕掛けたことが立証され、自衛行動が認められ、おとがめはなしの裁定を受けた。

恥かいたからって、徒党を組んであたしに仕返ししようとするやつらが悪い。

「出会った時の無口なアルフィーネはどこ行っちゃったのかしらねー。最近は、言いたい放題だし。まぁ、でも私はそんなアルフィーネも嫌いじゃないけどね」

「前も言ったけど、あたしはあたしであることをやめられないよ」

一年間生活した王都でできた友達は、ニコライとソフィーだけなので、嫌われたくはないけど、かといって自分を曲げることはできない性分。

直せるものなら直したいけど、これまでこれでずっと生きてきたから、無理な気もしてる。

「分かってる。私はそんなアルフィーネが大好きなの。今日のお菓子のできはどう?」

「うん、美味しい。あとでレシピ教えて。フィーンに作ってあげたい」

「いいけど、なんでアルフィーネが私のレシピ見て作ると、ああなるのかしらね……。フィーンが黒焦げの物体を食べてたのを見て不思議なんだけども」

「うっ……」

ちゃんともらったレシピ通りに作ってるはずなんだけど、あたしが作ると、ソフィーの作ったような美味しさにならない。

なにが違うんだろうか……。

でも、フィーンは美味しいって食べてくれるからいいよね。

とりあえず、同じ食材使ってるから、そこまで味は悪くない……はず。

「なんでも器用にこなすアルフィーネでも、お菓子作りは苦手なのね。ところで、今日はフィーンはどうしたの?」

「お買い物行ってる。新しい野営道具が欲しいからって言ってたから」

「そうなのね。フィーンの噂は知ってる?」

「なんの話? っていうか、あたしが噂のたぐいをほとんど聞かないって知ってるでしょ」

人の噂なんて興味がないので、そういった噂の類はソフィーが話してくれるまで知らないことが多い。

「知ってる。だから、話すんだけど。フィーンがわりと女性冒険者や王都の若い子に人気者だって話。見た目はボサッとしてるけど、ほら、気遣いできるし、優しいし、身体つきもわりとしっかりしてるし、剣の腕も立つでしょ。だから、実はいい男なんじゃないかって噂が出てるの」

そんな話は当たり前。

フィーンは最高にかっこいいし、優しいし、色々としてくれるし、剣の腕も立つ。

他の女の子とあまり喋らせないのは、あたしが強制してる容姿だけじゃあ、フィーンの良さが隠し切れないって思ってるからだし。

「フィーンは、あたしの相棒だよ。他の誰とも組まないから!」

「それはみんな知ってるけど……。ほら、相棒ってだけで、別に夫婦でも恋人でもないってわけだし」

「幼馴染だから!」

「そんなに怒らないでもいいじゃん。私はアルフィーネがフィーンにぞっこんなのは知ってるから。でも、周りの子たちはそれが見えない子もいるってわけだし」

フィーンは誰にもあげないし、ずっと自分のそばにいてくれるはず。

他の誰かについて行くなんてことは絶対にしないんだから!

フィーンがモテそうだって噂を聞いて、苛立ちから爪を噛む自分がいた。

「うー、だめ。フィーンは誰にもあげない。ずっとあたしと一緒にいるんだから」

「はいはい、分かってるから。夫婦になるにはまだちょっと若いけど、恋人同士なら周りも諦めるんじゃないの? ほら、一緒の宿の同室で寝起きしてるわけだし、もう男と女の関係ですって空気出して」

男と女の関係ってなに?

どういう関係?

そうすれば、誰もフィーンに近づかなくなるの?

と、とりあえず、よく分からないけど、あたしとフィーンは恋人同士だって言えばいいんだよね。

フィーンはあたしのやることに絶対に拒否をしないから、恋人同士だって言っても大丈夫なはず。

「分かった! 今日からあたしとフィーンは恋人同士だからっ! ソフィーもそういうことでよろしく!」

「え、あ、うん。フィーンにはちゃんと理由を言わないとダメだからね」

「分かってる。言っとく。あたしとフィーンは離れられない存在同士だから、他の誰かになんて無理!」

ソフィーはあたしの言葉を聞くと肩を竦めて笑みを浮かべた。

ソフィーから噂を聞いてなかったら、フィーンに近づこうとする女の子が増えるところだった。

人の多い王都に来て、生活を安定させるため油断してたけど、フィーンが自分のもとから去らないようしっかりと見ておかないといけなかった。

剣の腕を上げ、お金貯まったら、フィーンと結婚して、リスバーン村で院長先生たちの手伝いして暮らすのもいいかも。

そのためにも、フィーンに近づく女の子は、なんとしても排除しなきゃ。

「ソフィーごめん、フィーンのことが心配だから、今日は帰るね! お菓子ありがとう! また来るね!」

「え、うん。アルフィーネ、くれぐれも慎重に話してね。フィーンもちゃんと考えてくれてるだろうけど。あと、これは今日のお菓子のレシピね」

「分かってるー!」

ソフィーからお菓子のレシピを受け取ると、フィーンが向かったと思われる雑貨商の店に向かって駆け出した。