軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第4話:パーティーを組む

「こんなところに女の子が? ランクBの転送先だぞ? 地元民が迷い込んできたなんてことがあるわけないし、どういうことだ?」

寝ているフーカを発見した青年は訝しく思った。

軽装ではあるものの防御は比較的しっかりしている。

格好からすると冒険者のようだが、ダガーしか持たない少女だ。

何らかの事情でメイン武器を失ったのか?

「君、起きなさい。こんなところで寝ていては危ないよ」

「ううーん。あ、寝ちゃってた」

「大丈夫かい? ケガとかしていない?」

「お兄さんが守ってくれてたの? ありがとう!」

フーカの屈託のない笑顔に、青年はドキッとした。

実にちょろい。

「君は?」

「冒険者のフーカだよ。お兄さんは?」

「やはり冒険者だったか。僕はアーノルド。魔法剣士だよ」

「前衛だ! お兄さん私とパーティーを組んでくれないかな?」

「えっ、いきなり?」

アーノルド青年もまた訳ありでパーティーを組めていなかった。

ランクBエリアでソロはリスクだけ大きくて効率が悪いと感じていたので、この申し出は嬉しかった。

ただいかにも怪しいフーカの風体を見て、即座に承諾するほど青年も迂闊ではなかった。

「待って。フーカはどこ所属の冒険者なんだい?」

「王都の冒険者ギルド所属だよ」

「僕と同じか。君みたいな子がいるとは知らなかったけど」

「あたしは三日前に加入したばっかりだからじゃないかな」

「えっ、三日前? ええと、ここはランクBの転送先エリアだということはわかってるよね?」

アーノルドはわけがわからなかった。

三日前に登録してもうランクBエリアにいるってどういうこと?

「わかってるよ。ギルドカード見てくれる」

「……本当だ。ランクB冒険者だね。えっ、一三歳?」

「このエリアだと一人じゃ結構厳しいの。お兄さんがいてくれると助かるんだけど」

上目遣いのフーカは可愛いなあとアーノルドは思った。

しかし一三歳?

ダガーは剥ぎ取り用だろうし、どうやって魔物を倒しているんだ?

「フーカは後衛なのかい?」

「あたしは風の神の加護持ちなんだ。ほら、ギルドカードのここ」

「……本当だ。風の神ゼフノボレロスの加護か。普段ギルドカードの端っこなんか見ないから見落としていたよ」

「あはは」

「神の加護持ちに会うのなんて初めてだよ。フーカは具体的にどういう攻撃ができるのかな?」

「持ち魔力量に関係なく、風魔法相当の攻撃を撃ち放題だと思ってもらえば、大体間違いはないよ」

「すごい」

アーノルドは感嘆する。

伝説に聞く風の神の加護持ちなら当然そうか。

なるほど、風魔法相当の攻撃を制限なく撃ち放題なら、ガンガン魔物を倒せるだろうな。

軽装なのもランクBエリアにいるのも説明がつく。

「危険な場所で寝てたのはどうして?」

「キノコの魔物がいたから、風下から気付かれないように不意打ちしようと思ったの。そうしたら急に眠くなっちゃって」

「ああ、ヒュプノマッシュか。やつは眠くなる胞子を撒いてくるんだ。風下から攻撃しようと思わないほうがいいよ」

「そうだったか。じゃあキノコが現れた時は風を逆にしなきゃいけないな。お兄さん、ありがとう!」

「ああ、フーカは向きを自由にコントロールすることができるのか。ヒュプノマッシュの危険度がうんと減るな。試しに僕とパーティーを組んでみるかい?」

「うん!」

フーカは自分の攻撃力には自信があった。

不安なのは防御力と知識だったので、魔法剣士のアーノルドとパーティーを組めることはかなりのプラス要因だと思った。

アーノルドはフーカの風の加護の威力が実際どういうものか、大いに興味があった。

また一三歳の少女を放っておけないなあとも。

フーカの笑顔はアーノルドの警戒心を溶かしていた。

「じゃあ行ってみようか」

「お兄さん、あっちに魔物がいる」

「へえ、風でそんなことまでわかるのかい?」

「感知できるんだよ。結構な大きさの魔物だけど、多分地面を這ってると思う。一匹だけ」

「単体で這ってるなら、ポイズンワースリザードの可能性が高いな。毒持ちで見かけより素早いから注意ね」

「わかった。お兄さんありがとう!」

――――――――――

アーノルドとフーカのコンビは相性が良かった。

フーカが魔物を感知し先制で風攻撃、撃ち漏らした魔物をアーノルドが仕留めるというパターンが確立した。

前衛にアーノルドがいるためにフーカの安全度が格段に増した。

またアーノルドの知識はフーカを感心させた。

面白いようにレベルが上がり、二人の冒険者ランクはAとなった。

「お兄さんは頼りになるなあ」

「いやいや。経験のある前衛冒険者なら誰でも、僕程度のことはできるんだよ」

「そうかなあ?」

剣に魔力をまとわせるアーノルドのエンチャントマジックは、驚くくらいの切れ味を実現していた。

そのためアーノルドによる斬撃ダメージは非常に大きかった。

フィニッシャーの役割はアーノルドに任せておけば安心だなあと、フーカは思っていたのだ。

「フーカの感知や風攻撃こそすごいよ。ほとんど先制で攻撃を仕掛けることができるじゃないか」

「えへへー」

探索で最も怖いのは魔物に不意打ちを食らうことだ。

しかしフーカの風による感知があれば、不意打ちされることなんてあり得ない。

それどころか範囲風攻撃でほぼ先手を取れる。

アーノルドにしてみればこんなに楽なことはなかった。

アーノルドは思う。

風の神ゼフノボレロスの加護はもっと可能性があるはずだ。

何故なら過去の風の神の加護の持ち主の記録に、もっと様々な技を使用していた記録があるから。

Aランク冒険者なのだから、そうレベルが足りていないとは思えない。

フーカが技を知らないだけなのだ。

アーノルドは提案してみた。

「ところでゼフノボレロスの加護をもっと有効活用する気はないかい?」

「いろんな技を覚えるってこと? うーん、そのためにあたしは王都に来たんだけどさ。どういうわけかギルドで他の冒険者に避けられてるんだよね。田舎者だから?」

「いや、多分僕と同じ理由だ。貴族だと思われてるんだと思う」

「……お兄さんが貴族ってのはわかるけど、あたしはどう見ても貴族じゃなくない?」

フーカは首をかしげる。

アーノルドは着ているものが上等だし、所作も奇麗だ。

お坊ちゃんなのかなあとチラッと思っていたが、自身はどこからどう見ても庶民だから。

「状況がね。普通一三歳の女の子がソロで冒険者ランクBになったなんてあり得ないから。金でランクを買ったか、あるいは名誉ランクと皆は考えているんじゃないかな」

「実力で魔物を倒してるんじゃないと思われてるってこと? でもあたしは加護持ちだから……」

「ギルドに神の加護持ちが加入したということは、僕も知らなかったくらいだ。ほとんど知られてないんじゃない?」

「ええ?」

「冒険者はあんまり自分の手の内をひけらかすものじゃないからね。少なくともギルドの職員は誰にも言ってないと思う」

「そうだったのか」

確かに風の神の加護持ちであることを知らなければ、フーカの急激なランクアップはおかしい。

しかしロセナの冒険者ギルドでは、フーカが加護持ちであることを知った上、皆が後押ししてくれたのだ。

田舎と都会は違うなあ、とフーカは思った。

「僕の知り合いに神の加護の研究者がいるんだ。ゼフノボレロスの加護持ちに心当たりがあるって話をしたら、尋常でないくらい食いつかれてね。会ってみないか? 必ずフーカのためになると思う」

「会ってみたい!」

「じゃあ明日僕の家に招待するよ」

「お兄さん、ありがとう!」