軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

八十七話 過保護

極厚のドラゴンステーキをたらふく食って、お腹がはち切れそうになっているサラ達がようやく回復した。

「お師匠様。申し訳ありませんでした」「師匠。ごめんなさい」「……ごめんなさい」

弟子たちが 揃(そろ) って頭を下げる。食べ過ぎで動けなくなった事を謝っているらしい。

「お腹いっぱい食べるように言ったのは俺なんだ、気にしなくて良いよ」

サラ達にも何も考えずに極厚ステーキを出しちゃったからな。キッカも美味しかったのか極厚ステーキを半分ほど食べてたし、マルコにいたってはキッカが残した残り半分もしっかり完食していた。動けなくなるのは当たり前だ。

ベル達はしっかり全部食べ切った上に、普通に遊びまわっているけど精霊は別口なんだろう。極厚のドラゴンステーキを幼女と小さなフクちゃんがしっかりと完食した時は、精霊だと分かっていても驚いた。フクちゃんなんて自分よりも大きなステーキを完食だからな。ファンタジーこの上ない。

「さて、そろそろ行かないと寝るのが遅くなるから、レベル上げに行くよ。シルフィ、アンデッドが多い所に運んでくれる?」

「巣じゃないのよね?」

「うん。巣はもう少しレベルが上がってからにするから、今は外でアンデッドがうろついている場所にお願い」

いきなりアンデッドの巣に放り込んでスパルタ教育ってのも有りかもしれないけど、心に傷を残しそうだから止めておこう。

「分かったわ。さっそく行きましょうか」

シルフィが返事と同時に俺達を風の 繭(まゆ) で包み空に飛び立った。しかし、精霊樹の存在感がハンパないな。結構泉の家から離れているのに、いまだにハッキリと精霊樹の姿が分かる。暗闇でもあの存在感は誰かが気まぐれを起こして、死の大地の奥深くに入って来たら、一発で見つかるな。

まあ、よっぽどの気まぐれが起こらないと、死の大地には入らないらしいから見つかる事も無いだろう。

「ここら辺が良いわね。裕太。おりるわよ?」

「了解。頼むね」

地面に降り立つと目の前にゾンビが四体。いきなり戦闘ってシルフィさんスパルタですね。

「サラ。マルコ。いける?」

「「はい」」

元気に返事をして、サラとマルコがフクちゃんとウリに指示を出す。もう慣れてしまったのかアッサリとゾンビを倒してしまう。

なんかもう、俺が付いて来る必要すら無い気がするな。数日でもう教える事が無いとか切ない。どうしたものか。

「裕太。どうかしたの?」

俺が悩んでいるのが分かったのか、シルフィが声をかけてくる。

「サラとマルコはもう問題無いよね。もう少し慣れてからとも思ったけど、手が空いたからキッカのレベル上げをするべきかと思ってね。シルフィはどう思う?」

俺と手を繋いで待機しているキッカがビクッってした。聞いて無いよって事だよね。だって俺も今、思いついたんだから。

「いずれはレベルを上げるんだから、キッカがやる気なら無理しない程度に頑張ってみればいいんじゃない?」

確かにキッカの意志は大切だよね。無理やりレベルを上げさせるのも違うだろうし。

「キッカ。俺達がしっかりと守るから、レベル上げをやってみない?」

俺が聞くと、キッカが 俯(うつむ) いてしまった。さすがに無理があるか?

「キッカもれべるがあがったら、けいやくできる?」

不意にキッカが顔を上げると、真剣な顔で聞いてきた。

「うん。魔力の上がり方次第だけど、精霊と契約出来るようになると思うよ」

「じゃあ、キッカもれべるあげする。たたかえるようになって、おにいちゃんとおねえちゃんをたすけるの」

ホロリときた。良い子がいる。とっても良い子がいるよ。そして俺も助けるメンバーの中に加えて欲しい。

「そうか。うん。がんばろうね」

俺も幼い頃はこれだけ純粋だったんだろうか? 昔を思い出す……と……止めておこう。思い出は美しいままに、思い出さなくたって昔は俺も純粋だったはずだ。

「よし。じゃあ、スケルトンの時はキッカが倒す事にしようね」

ゾンビをキッカに倒させるのは色々辛いだろう。サラとマルコも集めてどう行動するのか打ち合わせをする。シルフィはアンデッドまでの案内。ゾンビはサラとマルコがスケルトンはキッカが倒す。ドリーがスケルトンの動きを完全に封じ込めて、ベル達は周囲の警戒に決まった。

因(ちな) みにディーネは泉の家でお留守番だ。正直過剰戦力過ぎてやってもらう事が無い。ドリーは今日契約したので特別参加だ。

話し合って今度からはシルフィとベル達が基本的に付き添ってくれて、必要な時にディーネ達を召喚する事になっている。ディーネがちょっと 拗(す) ねたけど 概(おおむ) ね問題無く決定した。

ディーネが拗ねた理由はシルフィがいれば大抵何とかなるから、お姉ちゃんの出番が少ないと言っていた。確かにそうなんだろうけど、相手がスケルトンとゾンビなんだから元々出番がない事を伝えると、渋々納得してくれた。

「師匠。キッカが戦うのか? 本当に大丈夫なのか?」

滅茶苦茶不安そうだな。妹がアンデッドと戦うのは当然不安になるよね。

「ドリーが完全にスケルトンの動きを抑えてくれるって言ってるから問題無いよ。それにレベルを上げてキッカが精霊と契約すれば、安全度は格段に上がるんだからやっておいた方が良い」

「……わかった」

頭では分っているんだけど、不安だって表情だな。言葉で何を言っても不安を 払拭(ふっしょく) する事は出来ないだろうから、実際に大丈夫だと見せないと。

「シルフィ。スケルトンの所に案内をお願い」

「分かったわ。こっちよ」

シルフィに案内してもらい少し歩くと、直ぐに五体のスケルトンが見つかった。

「ドリー。動きを封じてくれ」

「はい」

ドリーがヒョイっと手を向けると、死の大地に生えるはずのない植物がスルスルと生えて来て、スケルトンをあっという間に包み込む。流石大精霊。こんな場所でも自由自在に植物を生やせるんだ。土が悪いと効率は悪いらしいが、それでもこのぐらいは問題無いらしい。

ドリー優秀過ぎる。キッカを怖がらせない為だろう、魔石が見える部分以外を完全に植物で包んでいる。完全にお膳立てされたレベル上げだ。子供のレベル上げならこのぐらい安全を確保しておいた方が良いのかもな。過保護って言われそうだけど。

「キッカ。こっちにおいで」

おずおずと近づいて来たキッカに抱っこするよと断り、ヒョイっと抱え上げる。とても軽いな。もっと食べさせなければ。

「じゃあ、このナイフを渡すから怪我しないように注意して、あの魔石を壊すんだ。できるよね?」

恐る恐るナイフを 握(にぎ) ったキッカはコクリと決意を持って 頷(うなず) いた。怖がってはいるみたいだが、やるべきことは分かっているのかしっかりと魔石を見つめている。

俺はキッカを抱きかかえたまま魔石の前に立ち、キッカがナイフを刺し込みやすいように体勢を整えて攻撃を 促(うなが) す。

「やぁ!」

声をあげながらキッカがナイフを魔石に付き込む。一撃では魔石を 貫(つらぬ) けなかったので、もう一度攻撃を加えると魔石が砕けた。

魔石が砕けるのと同時に、植物で包まれた中からガラガラと崩れる音がした。スケルトンがバラバラになったんだな。

「キッカ大丈夫? 次に行っても良い?」

「だいじょうぶ」

キッカが力強く頷いたので次のスケルトンの植物包みに向かう。特に問題も起こらずサクサクと魔石を壊す。

危険がほぼ無い方法だったので、マルコもサラも安心したようだ。そこからは予定通りゾンビをサラとマルコが倒し、スケルトンをキッカが倒した。これなら直ぐにキッカも精霊と契約出来るようになるだろう。

キッカが精霊と契約出来れば、何回か実践させて小さな巣を攻略に行くのも良いかな。浮遊精霊が三人いて普通に魔法を使えば倒すのは問題無いだろう。二時間程死の大地をシルフィの案内で歩き回り、泉の家に帰還する。

「サラ。マルコ。キッカ。今日もよく頑張ったね。疲れただろうから体を洗浄した後に、早めに休むようにね」

三人の頭をぐしゃぐしゃと撫でて褒める。ケモミミがナイスな感触です。お休みなさいと寝室に戻っていくサラ達を見て思う。まだ数日だけどだいぶ仲良くなれた気がするな。

実戦に出てから強くなれるのが分かったあたりから、マルコはだいぶ積極的になってきたし、順調だと言っても良いだろう。

「裕太。宴会じゃな」

いきなりノモスが現れた。この際だし、もしかしてそうなのかなって思っていた事を聞いてみよう。

「……ノモス。約束だからお酒は出すけど、子供が苦手なのか? サラ達が居る時は近くに寄って来ないよな」

「うむ。苦手じゃ」

キッパリと言い切ったな。 僅(わず) かな 躊躇(ためら) いすら無かったよ。本気で苦手なんだな。最近ノモスを近くで見る事が少なかったのは子供達を避けていたのか。

「子供達はノモスの気配ぐらいしか分からないんだぞ。あんまり気にしなくても良いと思うんだが。それにベルやトゥルは平気なんだろ?」

「うむ。ベルやトゥルは問題ない。精霊じゃしな。じゃが人間の子供はどうも苦手じゃ。理由は分からん。それよりも早く飲むぞ」

理屈じゃ無いのか。それなら様子を見るしかないだろう。

「分かったよ。直ぐに準備する。ベル達は自由にしててね、今日はありがとう」

「ゆーた。べるものむー」

「飲むってお酒が飲みたいの?」

「うん。しるふぃも、でぃーねも、のもすも、どりーもおいしいっていってたー」

ベルの後ろで、レイン。トゥル。タマモも飲みたいとアピールしている。この場合はどうなんだ? 見た目は幼女なんだけど、俺よりも年上なんだよな? 判断が難し過ぎる。

「ノモス。ベル達はお酒を飲んでも大丈夫なのか?」

「ふむ。精霊じゃからな。体には害がないが……力を暴走させてしまう可能性もある。止めておいた方が無難じゃな」

たしか魔法は一流の魔術師クラスって言ってたし、そんなベル達が暴走とか洒落にならない。

「みんな。お酒はもう少し大きくなってからね」

「えー」っとむくれるベル達を何とか 宥(なだ) めて送り出す。ベル。レイン。トゥル。タマモのおねだりが可愛すぎてちょっと危なかった。

頭にベルがエールを一気飲みして「ぷはー」って言っている映像が浮かばなかったら危なかったな。さて今からは大人の時間だ。俺も参加して久しぶりにしっかりとお酒を味わおう。