軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

七百五十五話 タマモ、頑張る

妖精を招く予定の花畑スペースの下準備を終え、土の回収の為とサラをヴィクトーさんに会わせるためにローゾフィア王国に出向いた。現場で働くヴィクトーさん達は更にガテン風味が増していたが、いくつも遺跡を発掘し仕事自体は順調な様子。米栽培の実験も決まり、ヴィクトーさんの拠点も更に賑やかになりそうだ。

シルフィと一緒にのんびり森の中を歩く。

楽園にも森を造っているが、やはり長い時を重ねた森は雰囲気が違う。聖域だともっとすごいのだろうか?

滅多に足を踏み入れられなさそうな場所なので、考えるだけで少しワクワクしてしまう。

このまま散歩していたい気分だが、目的は土の確保なのでもう少し歩いたらトゥルとタマモとドリーを召喚して土を回収する場所を決めよう。

どうせ後でベル達が発見したキノコを回収するために歩き回ることになるからな。

「そういう訳で、大きめの遺跡があって土を回収しても問題が無い場所の選定をトゥルとタマモとドリーにお願いしたいんだ」

予定通りトゥル、タマモ、ドリーを召喚してお願いをする。

「がんばる!」

「くぅー!」

トゥルとタマモはキノコ探索中だったから少し申し訳ないが、気合十分な様子で返事をくれたから大丈夫だろう。

ドリーは微笑んで頷いただけだが、ドリーならトゥルとタマモを見守りながら、駄目な場合はコッソリ軌道修正してくれるだろうから安心しかない。

「ここ、おおきなたてものがうまっているし、つちもいい。それに、おたからもある」

しばらく飛び回りながら移動したトゥルがピタリと止まり、土の状態と建物、そしてお宝についてまで判別してくれた。

まあ、ヴィクトーさん達には土の回収の時に良さげな遺跡を発見したとだけ伝えておこう。既に脳が焼かれているから、お宝があるかないか分からない方が楽しめるだろう。

トゥルが指定した地点を、今度はタマモが飛び回って確認する。

おそらくその地点の森の木を移動させていいか、移動させるのであればどこに移動させるかを考えながら観察しているのだろう。

偶にドリーにアドバイスをもらいにいくタマモが素直でとても可愛らしい。ドリーもそんなタマモを愛でつつ、しっかりとアドバイスをしている。

「では、裕太さん、移動させますね。タマモ、無理に急がず木々と地面を痛めないように頑張るんですよ」

「うん、お願い」

「くぅっ!!」

タマモ、物凄くやる気満々だな。授業参観に来た親に頑張っている姿を見せたい小学生低学年のような張り切り具合で微笑ましい。

「くぅぅぅぅ!」

空中に浮かんでいるが、タマモが四つ足で踏ん張るような体勢を取り、可愛らしくも凛々しい声を上げる。

少し経つと、土を回収する地域の木々がひとりでに動き出す。

凄い光景ではあるが、やはり下級精霊と大精霊の力の差は歴然としているのか、動き出した植物の数と速度が違う。

それでも木々がゆっくりと邪魔にならない場所に移動していく。とはいえ、元々木々の密度が高い古い森なので、それほど移動に適した場所は多くないようで、スライドパズルのように複雑に移動させている。

タマモがドリーに沢山相談していたのは、この複雑さにどう対処するか悩んでいたからだろう。

頑張るタマモをドリーとトゥルが優しい瞳で見守る。

ちなみにシルフィは一緒に居て、普段は俺達と一緒に下級精霊達に優しい目を向けることも多いのだが、今回はずっと考え事している。

だが、誰も心配はしていない。

なぜなら全員理解しているからだ。妖精の花蜜酒をどのように仕入れるか、そしてどのように醸造するのかを夢中で考えているのだと……。

「くぅ!」

「ありがとうタマモ。これでしっかりと土の回収ができるよ」

頑張ったとシッポぶんぶんのタマモを褒めて、俺とドリーとトゥルで撫でくり回す。

「さて、あとは土の回収だね。トゥル、遺跡周りの土をお願いできる?」

「わかった」

「くぅ!」

自分は何をするの? と言いたげなタマモ。

「タマモのお仕事は終わったから、キノコ探しに戻ってもいいんだよ?」

「くくぅ」

珍しくタマモがイヤイヤと首を左右に振る。何かやりたいことがあるようだが、残念ながら俺にはタマモが何を望んでいるのかが分からない。

ご飯時とかなら結構推測ができるのだが、こういうヒントが少ない時はさすがに無理だ。

「裕太さん、タマモは先程の実践で自分の未熟さを理解し、もう少しこの森でお勉強したいようですね」

困っているとドリーがタマモの気持ちを教えてくれる。タマモもコクコクと頷いているので正解のようだ。

先程の実践、俺達全員で褒めまくるくらいな成果を出してくれたんだが、タマモにとっては不満があったようだ。タマモは凄く可愛らしい見た目なのだが、意識高い系の精神を持っているようだ。

とはいえ、お勉強と言われても……。

「ああ、じゃあ、ヴィクトーさんのところの拠点とこの遺跡、その間の木々を少し移動させて通りやすいようにできるかな? ただ、露骨に道を作ったら駄目だよ。あくまでも少し通りやすいかな? 程度でおさめること。できるかな?」

ヴィクトーさん達は借りを返すタイプの人達だから、俺達が露骨に協力するとヴィクトーさん達の負担になってしまう。

土の回収ついでに良さそうな遺跡を発見した、くらいの協力がたぶん丁度いいのだと思う。

「くぅ!」

興奮した様子でコクコクと頷くタマモ。どうやら単純なミッションではなく、微妙な加減が必要なミッションを任されて嬉しいらしい。

かなり興奮している様子なのが心配だが、ドリーが一緒に行ってくれるようなので大丈夫だろう。

「分かった。じゃあタマモ、お願いね」

「くくっくー!」

久しぶりのタマモの敬礼、可愛らしいけど、下級精霊達はいつになったら敬礼を忘れるのかな? 俺はとっくの昔に忘れていたのだが……。

あとトゥル、タマモについていきたそうにしているけど、今回はこちらでのお仕事をお願いね。

時間があまりないし、沢山の土が必要なんだ。

***

トゥルに協力してもらいしっかり土を回収し、タマモもドリーに導かれながらしっかりと仕事を果たしてくれた。

これで後は開拓中の花畑スペースに土を入れれば今回の開拓は完了だ。

で、しっかり土を回収した後は予定通りベル達が発見したり集めておいてくれたりしたキノコの回収タイム。

ベル達はキノコ料理も大好きだから、しっかりたっぷり探し出してくれた。

妖精の花蜜酒が完成したら精霊王様方を招待しての宴会もあるから、定番のキノコ料理メニューに加えて新しいキノコ料理メニューを思いだして作成することにしよう。

「ん? フレアどうかしたの?」

下級精霊達がキノコのところに案内してくれているなか、フレアが何かもの言いたげに俺を見ている。

今日は珍しいことが多いな。普段の下級精霊達はいつも楽しそうに飛び回っていて、やりたいことを発見するともの言いたげな様子を見せる前に突撃してくる。

「んー、きょうはまるやきするんだぜ?」

「丸焼き? ああ、前回やったラフバードの丸焼きのこと?」

ベッカーさんがお米に興味を持つきっかけになった丸焼きのことだな。なるほど、前回もこの森で丸焼きを作ったから、キノコ探索中にそのことを思いだしたのだろう。

前回は酷かったからな。

巨大な丸焼きを作るためにかなりの時間が必要になり、香ばしい丸焼きの匂いをまき散らしながら、肉体労働で限界まで腹を減らした男達に見守られ調理を続けた。

あれは間違いなく調理テロと呼ばれる最悪の行為で、俺も大いに反省したできことだった。

でも、そのことを聞くってことは、フレアは丸焼きが作りたいのだろう。

あの時のフレアは巨大なラフバードの丸焼きの焼き加減をしっかり見極めて最高の丸焼きを作ってくれたからな。でも……。

「もう夕暮れだから、今からラフバードの丸焼きを作ると夜中になっちゃうから無理かな」

「そうなんだぜ……」

フレアが凄くションボリしている。なんとかしなければ。

「フレア、今度精霊王様方を招いて宴会をするつもりなんだ。その時にフレア特製のラフバードの丸焼きを用意してくれるかな? 絶対に精霊王様方も喜んでくれると思うんだ」

「まかせるんだぜ!」

ふっ、俺くらいになると、契約精霊の望みを叶えるなんて簡単だぜ。

ただ、妖精の花蜜酒が完成しなくても、精霊王様を宴会に招待するのは決定だな。あと、長時間の丸焼き。

フレアを喜ばせベル達を褒めまくりながらキノコの回収を終えてヴィクトーさん達の拠点に戻る。

「ししょう、おかえり」

「おししょうさま、おかえりなさい」

「師匠、お帰り」

拠点に戻るとマルコとキッカ、そしてジーナがウリ達と一緒に出迎えてくれた。

サラが一緒に居ないということはまだヴィクトーさんとの久しぶりの再会を楽しんでいるのだろう。

「ただいま。お手伝いの方は問題なかった?」

「うん、ベッカーさんもたくさんほめてくれた!」

「キッカもがんばった!」

二人ともかなり満足した様子だし、ジーナも頷いているので大丈夫だろう。

「さて、沢山お手伝いをしてお腹が空いただろうし、夕食にしようか」

マルコとキッカを撫でながら夕食の用意を告げる。久しぶりの訪問だし、お酒と料理を差し入れしてみんなで騒ぐことにしよう。

「ししょう、ベッカーさんたちがえんかいのよういをしてくれるって」

「あ、そうなの?」

いきなり来たのに宴会まで用意させるのは申し訳ないが、お心遣いはありがたく受け取るべきだろう。

でも、甘えてばかりだと申し訳ないから、お酒と料理の提供くらいしないとな。

さすがに妖精の花蜜酒やお城から手に入れた高級酒は提供できないが、それなりの高級酒を提供することにしよう。

ちなみに、なぜお城で手に入れた高級酒を提供できないかというと、まだシルフィ達がそのお酒に手を出していないからだ。

さすがにシルフィ達を差し置いて、お城のお酒を提供する訳にはいかない。

おっと、もう宴会の準備を始めているようだから、急いで提供品を渡してしまおう。