軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

七百五十四話 久しぶりのヴィクトーさん

ノモスとドリーと話し合い、妖精の花畑を確保する広さと場所を決定し、さっそく開拓を開始する。シルフィが戻ってくると妖精界への出入口と出入り方法を風の精霊王様から入手、下準備を終わらせて明々後日以降に妖精とコンタクトを取るために本格的に動き出すことになった。

「うわー、なんかよく分からない発展の仕方をしているね」

ベル達やジーナ達の協力もあり、無事に花畑スペースの穴掘りと岩を敷き詰めるところまでの作業が終わった。

そしてその翌日にはヴィクトーさんに会いに出発した。

午後を少し過ぎたタイミングでヴィクトーさんの拠点に到着したのだが、本当に妙な形に発展していて思わず声を漏らしてしまう。

発掘した石造りの建物を拠点にしているのは変わらないのだが、発掘した建物から陸地に繋がる吊り橋がいくつも増え、上から見ると現代アートのようなよく分からないながらも不思議な魅力を感じさせる建物になっている。

あと、よく分からない柱が何本も建てられており、余計に現代アート感が増している。

ただ、その周辺はそれなりに普通に手入れを進めたらしく、空き地スペースが広がり、いくつかの家や倉庫、畑等も増えている。

さすがに穴の中の住居は不便なのか、少しずつ陸地に拠点を広げていっているようだ。

こうやって徐々に生活しやすいように環境を整えていき、更に人が集まって環境を整備しての繰り返しで、ただの無人の土地から開拓村に変わり、開拓村から村へ、村から町へ、町から都市へと変貌を遂げていくのかもしれない。

他の場所も遺跡の発掘と開発を進めれば活用できる人里になるし、そんな中で気に入った場所をヴィクトーさんが本拠地とすれば、貴族として復活できる環境が整えられるかもしれないな。

まあ、森の中で田舎というのもおこがましい大自然の中の領地になってしまうが、逆に言えばそういう僻地だから領有しやすいともいえる。

まあ、俺がそう思っただけでヴィクトーさんがどんな判断をするかは分からないが、それでも発掘場所がある限りはそれなりに発展させていくのだろう。

「ヴィクトーは居ないようね。あっちに発掘現場があるから、そちらに向かう?」

なかなか下に降りないからどうしたのかと思ったが、ヴィクトーさんが居なかったからか。

お昼をちょっと過ぎた時間だから、まだまだ働いている時間帯だな。ここで待たせてもらっても構わないが、戻ってくるまでそれなりに時間がかかりそうだから現場に直接向かうか。

サラがせっかくお洒落をしているんだ、ヴィクトーさんに一番に見てもらいたいもんな。

「ゆーた!」

「ん? ベル、ソワソワしてどうしたの?」

「キノコー」

小さな手を天に突き上げて意味不明な宣言をするベル。

……ああ、この森はキノコ類が豊富で、しかも美味しいんだったな。探しに行きたい訳か。

「いいよ、みんなで探しに行っておいで。迷子にならないようにね」

「わかったー」

バビュンと飛んでいくベル達。あの様子だと、あとでかなり歩き回ってキノコを回収することになりそうだが、美味しいキノコが沢山手に入るのならそのくらい問題ないか。

でもキノコ狩りの前に、サラをヴィクトーさんに会わせないとな。

***

久しぶりの来訪だが、前回発掘していた発掘場所と違っており、ヴィクトーさん達の仕事は順調なようだ。

精霊やチートな開拓ツールが無い上に基本的に人力とはいえ、この世界の人達、特に戦闘職の人達はパワーが凄まじいし、魔術も使えるから地球と比べると段違いに早い。

発掘現場に到着し、今回はすぐに高度が下がっていく。ヴィクトーさん達には飛べることも暴露してあるからこういう時は楽だ。

「あ、裕太殿、お久しぶりですな」

「裕太殿、お久しぶりです」

突然の登場にヴィクトーさんとベッカーさんが少し驚いた後、笑顔で出迎えてくれた。

それにしても、会う度にガテン系レベルが上昇していくな。まあ毎日の仕事がガテン系の仕事と似ているからしょうがないことだが、貴族然としたヴィクトーさんを知っているだけに少しこれでいいのかと思わなくもない。

まあ、ヴィクトーさんもベッカーさんもアヒムさんも、発掘と宝探しが性に合っているのか明るい表情なのが救いだ。

「お兄様、お久しぶりです」

「おお、サラ、久しぶりだな。大きく……ん? 今日のサラは可憐さが増しているように……おお、服がいつもと違うのだな。とても良く似合っているぞ」

ガテン系のイケメンに変身したヴィクトーさんだが、こういうところは貴族教育のお陰か元々の性格なのか、さらりと服装を褒める。

こういうところは俺も見習いたいところだ。

「ありがとうございますお兄様」

褒められたサラもその言葉を素直に受け取り、穏やかに微笑む。なんとなく雰囲気が上品だ。

「ヴィクトーさん突然来て申し訳ありませんが、サラの相手をお任せしても構いませんか? 明日には移動しないといけないんです」

確実に仕事中だから常識がないと思われそうだが、残念なことにこの世界にはスマホのように便利な連絡手段がないから出たとこ勝負か、時間に余裕をもって先ぶれを出しておくしかない。

普段なら余裕をもって訪問するのだが、シルフィや大精霊達がやる気満々なので今回は明日には出発しなければならない。

その辺りはサラにも説明して納得してもらっている。

「そういうことでしたら儂が指揮を執りましょう」

話を聞いていたベッカーさんが指揮役を名乗り出てくれた。

「ん? そうか? ふむ、今日は目新しい仕事もないし、ベッカーの言葉に甘えさせてもらうか。サラ、拠点でサラの話を聞かせてくれるか?」

チラリとサラが俺を見たので頷いておく。

「はい、お兄様、沢山話したいことがあるので是非聞いてください」

「ああ、楽しみだ」

軽く話した後、ヴィクトーさんがサラを連れて拠点に戻っていく姿を見送る。

「ししょう、オレもはっくつのてつだいにいっていいか?」

こちらの話が終わるのを待っていたマルコが、ワクワクした様子でお願いしてきた。

そういえば前回の時もマルコは発掘の手伝いをして喜んでいたな。

「……ベッカーさん、構いませんか?」

「もちろん構いませんぞ、前回のマルコ殿の活躍は大評判でしたからな」

前回のマルコとウリのお手伝いをベッカーさんも覚えていてくれたのか、食い気味にOKしてくれた。

「マルコ、良いそうなのでベッカーさんの指示に従って真面目に頑張るんだぞ」

「だいじょうぶ、ちゃんとやる!」

そう言ったマルコが俺に近づいてきて、詠唱もちゃんとするから心配しなくていいと告げる。

あとでコッソリ注意しようと思っていたが、マルコも前回注意したことをちゃんと覚えていたんだな。

「キッカはどうする?」

ぐりぐりとマルコの頭を撫でて、キッカに話しかける。

「おにいちゃんのおてつだいをする」

むん、気合を入れた様子のキッカ。キッカは人見知り気味なのだが、このむさくるしい男達はそれほど怖くないようで普通に話している。

俺はサラの師匠であり、ジーナ達はサラの姉弟弟子だから、現在ガテン系の元騎士さん達も身内扱いしてくれているので、キッカも懐いたのかもしれない。

「師匠、師匠はあたしの手伝いが必要か?」

ジーナが話に入ってきた。

「うーん、土を貰うだけだから、ジーナの手伝いは特に必要ないかな?」

一緒に居てくれるのならそれはそれで嬉しいが、ジーナは必要ないならマルコ達の様子を見てくれるつもりだろう。

「じゃああたしはマルコ達の様子を見ておくよ」

やはりそうか。

「うん、よろしくね」

ベッカーさんの指示に従い現場に走っていったマルコとキッカを追いかけていったジーナを見送り、ベッカーさんと少し話す。

「なるほど、当たり外れが大きいのですか」

「はい、大きな建物に狙いを付けたとしても、やはり全ての大きな建物に価値があるとは限らないのが難しく、そして面白いところですな」

ベッカーさんが山師のようなことを言っている。

何度か成功と失敗を繰り返し、完全に脳が焼かれているようだ。

「そういえば裕太殿、掘り返した遺跡でボロボロに崩れて利用することもできぬ場所があり溜池にしたのですが、活用すれば米が作れませんかな?」

米?

……ああ、そういえばラフバードの丸焼きを作った時にお腹の中にお米を入れて、それをベッカーさんというか若い騎士達が気に入って育てられないか相談を受けたな。

その時は大量の水が必要だから難しいと言ったはずだが、いまだに解決策を模索していたらしい。

……いや、ボロボロで使用に耐えないとはいえ、遺跡を完全に破壊して水没させるのはどうなんだ?

ん? 溜池にした? 既に水没させられているじゃん。

んー、遺跡を保護して活用するのは近代になってからだっけ?

文化遺産として後の世で貴重な資料になるからと保護を訴えるべきなのかもしれないが、この世界は魔物が存在するから、遺跡の保護よりも安全や利益が優先されるのも仕方がないのだが……。

まあ、使える遺跡は活用しているようだし、ボロボロの遺跡の活用方法まで口を出すのは余計なお世話か。

「溜池だけでは難しいかもしれませんが、次の機会に生育方法と種籾を持ってきますので、挑戦してみますか?」

俺のところの米作りは大精霊に頼りまくりだが、ドリーなら生育方法も把握しているはずだから、きちんと細部まで書き記して選別した種籾を提供すれば、ここがお米の一大生産地になるかもしれない。

楽園のお米も最高に美味しいが、別の産地のお米が楽しめるようになったら、選択する楽しみ増える。

「おお、ありがとうございます。ぜひ挑戦させてください」

「最初は実験になりますから、小規模な感じでお願いしますね」

ベッカーさんのやる気を思うに、最初に注意しておかないと大規模生産を始めかねない。

「そうですな、最初は慎重に行動しませんとな」

納得したように頷くベッカーさんだが、微妙に信用できない。

出会った頃のヴィクトーさんを補佐していた時なら頼りがいがあったのだが、ちょっと脳が焼かれているから勢いで博打を打ちそうで少し怖い。

若干の不安を残しつつ、軽い打ち合わせをしてベッカーさんと別れる。

次は森の土の確保だな。

どうせなら次にヴィクトーさん達が発掘しそうな場所から土を貰うか?

トゥルなら大きめの遺跡が埋まっている場所くらい直ぐに見分けてくれるだろう。